法務省のパブコメに「やさしいにほんご」の施策を提案

法務省は2018年12月28日、改正入管法に関連しパブリックコメントの募集を始めました。募集しているパブコメの内容は、以下の法務省のホームページです。ご覧ください。締切りは1月26日。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300130143&Mode=0&fbclid=IwAR3eCgwW_C3mCLKuLJ1OatDJyCJEjSAyZBjfMvirQiXu2ShgZJ5pHERMkz0

やさしい日本語ツーリズム研究会事務局長で「にほんごぷらっと」世話人の吉開章氏が、このパブコメに「やさしい日本語」を国政に反映させるよう提案した。改正入管法をはじめとした外国人受け入れ施策の検討において、受け入れ側の心構え、特に外国人とのコミュニケーションについて特化した項目がないため、その必要性を訴えた。

 

パブコメに応募した吉開氏の意見は以下の通り。

—————————–

「3 一号特定技能外国人支援計画の内容が満たすべき基準」(1)のアの(エ)から(キ)(P10)の省令項に関連し、3つ意見を申し述べる。

(意見者のプロフィールは割愛)
省令の各項目を要約すると、外国人のために以下のような施策を規定していると理解した。

(エ)生活一般や、関連する行政サービス・法令の情報提供
(オ)生活に必要な日本語学習機会提供
(カ)仕事や生活における相談・苦情への適切な対応
(キ)日本人の交流促進

言うまでもないが外国人はただの「労働力」ではなく「人」である。人権が守られ、充実した生活を送れるようにするために、以下意見を記す。

意見1:日本語教育推進法の早期成立

(オ)は、働きながら生活する外国人だけでなく、受け入れる地域や企業にとっても根幹の施策であり、速やかに関連法が整備されるべきである。日本語教育推進議員連盟がまとめた日本語教育推進法の速やかな成立が望まれる。

意見2:「一次的多言語対応」と「やさしい日本語」活用促進

(エ)(カ)においては、できるだけ多くの言語で対応するのが望ましいが、人材・費用面などで限界がある。

ここで注目されるのが「やさしい日本語」である。相手の母語で対応できない場合、(オ)で提供される日本語のレベルに日本人側が合わせれば、要点を伝えることができる。また「やさしい日本語」に書き換えた文は、翻訳アプリケーションを活用しても高精度の翻訳結果が得られることが多い。

情報を「やさしい日本語」にする際は、難解用語を言い換えるだけでなく、情報の取捨選択が必要となる。現在多くの自治体が「やさしい日本語」に取り組んでいるが、現場からは情報を減らして記載することに不安があるという意見を聞く。

このような不安を解消するために、「一次的多言語対応」という考え方を提案したい。

・元の情報とは別に、外国人が最初に理解すべき重要情報だけ整理して提供することを、一次的多言語対応として公的に認める。
・「やさしい日本語」で記述したものを一次的多言語対応のための有効な文書と認め、この内容で翻訳したものを基本的多言語対応として位置付ける。
・口頭でのやりとりは、職員が相手の外国語を流暢に話せない限り、「やさしい日本語」での対応を基本と位置付ける。
・より詳しい情報提供が必要な場合は、電話通訳などで個別対応する。

具体的な「やさしい日本語」の定義については、(オ)の施策と関連して定めることになろう。このようにすることで、多言語対応拡大とそれにかかるコストの削減を実現すると思料する。

意見3:国による「やさしい日本語」の社会啓発

「やさしい日本語」は、小学校3年生ぐらいまでの語彙を使い、1文を短くし、外国人にとって最も難しいと言われる敬語を使わず「です・ます」で結ぶだけにするなど、一般の社会規範とは違っている。特に敬語を減らす言い方は、第三者が見聞きした場合クレームとして上がってくる恐れもある。意見者の講演先でタクシー乗務員が「敬語を使わないとトラブルになるので、日本人・外国人区別なく日本語は敬語を使うようにと会社から指導されている」と言っていた。

また今後外国人がやってくる職場においても、難しい言い回しや命令・指導が行われれば、労働災害の恐れだけでなく、新たな「日本語ハラスメント」というべき問題が起こるだろう。

いくら外国人に日本語学習機会を保障しても、日本人側が難解な言葉や敬語で話せば意味がない。日本人側が言葉を調整する「やさしい日本語」が多言語対応の1手段として、社会的に広く認知・許容されなければならない。

「やさしい日本語」は大学・NPO・熱心な自治体が中心となって社会啓発活動を行なっており、昨今ではメディアにも取り上げられるようになった。しかし、これらの大学・団体は外国人への向き合いで精一杯であり、広く市民への周知活動まで手が回らないのが実情である。

以上から、国が自治体や企業に対して多言語対応に関する責務を求めるのであれば、国は「やさしい日本語」の周知活動について責務を負うべきである。これは結果的に(キ)の施策も後押しするものと思料する。

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