コロナ危機から何を学ぶのか~2022年を迎えて

約2年にわたるコロナとの戦いの中で、2022年の新しい年を迎えました。明けましておめでとうございます。昨年末には変異株のコロナ危機から何を学ぶのか~2022年を迎えてが日本にも上陸しコロナ禍が再び年をまたいでしいました。これに対しコロナとのバトルも進展しています。ワクチン接種が進み、厚生労働省が米国製薬大手の飲み薬「モヌルピラビル」を承認しています。2022年は「ウイズコロナ」の時代の幕開けになるはずです。

新型コロナウイルスは、ミラノ株、アルファ株、デルタ株などからオミクロン株へと変異を繰り返してきました。感染者は世界で2億7800万人、日本では173万人にのぼっています。オミクロン株の感染拡大がなお懸念されますが、日本は欧米などに比べて感染が抑制されているのも事実です。国民のほとんどがマスクを付け、ワクチン接種も進んでいます。加えて厳しい水際対策をとっています。国民の忍耐の賜物でしょう。

感染症は長年、人類と共存してきました。歴史の中で撲滅できた感染症は天然痘だけです。人類はコロナウイルスとも「共存」していかなければならないのでしょう。問題は共存の仕方です。

コロナウイルスの感染の拡大によって、国際的に人の移動が制約されました。いまなお空の便が大幅に減便されています。島国の日本は、水際対策によって観光はもとより、留学生や技能実習生などの入国も制限してきました。G7の先進国で唯一、留学生の受け入れを規制しているのは日本だけです。

留学生が入国できないため、日本語学校や専門学校、大学などは四苦八苦しています。日本留学を夢見た待機留学生が日本に見切りをつけ、韓国や中国に留学先を変えるケースが相次いでいます。規制が長期化し、留学生政策はすでに大きな「ひずみ」が生じています。技能実習生の入国が止まり、中小企業など生産活動への影響も深刻です。

そうしたコロナ禍の中で、新たな動きや取り組みが生まれています。国境を越えたオンライン学習もその1つです。日本語学校などが窮余の策として日本語教育をオンラインで行っています。とはいえ、これは日本語教育の「実績」として今後、専門的な立場から効果を検証すべきでしょう。足並みがそろわなかった日本語学校の6つの業界団体が1つにまとまり、政府や政治家に留学生の早期受け入れの陳情活動を展開しています。日本語学校の業界も変わり始めているようです。

日本語学校の有志と留学エージェントが「コロナ禍の日本留学の扉を開く会」を発足させ、ネットで海外の待機留学生の声を発信してきました。このため、コロナ禍で希望を閉ざされた待機留学生の訴えをテレビや新聞が大きく報じました。日本留学を夢見る外国の若者の姿が「見える化」されたことの意味は非常に大きいと思います。

その流れで留学生だけでなく技能実習生、高度人材の外国人、さらには外国人配偶者の受け入れ・支援者がパネル会議をネットで開催し、その声を岸田文雄首相らに送付しました。私たち「にほんごぷらっと」も、微力ながらその活動を応援してきました。

こうした動きに促されるように、末松信介文部科学大臣が昨年12月8日、文科相の動画チャンネルで「日本留学を心待ちにしている留学生の皆さんへ」と題したメッセージを発信しました。また、文化庁は12月の臨時国会で可決された補正予算に日本語学校のオンライン授業を支援するための補助事業費41億円を盛り込みました。文科大臣のメッセージと文化庁の補助事業は、ともに日本語学校・留学生に配慮した画期的な取り組みです。

これらの「ウイズコロナ」の新たな活動が2022年にどのように引き継がれ、発展していくのか。ウイズコロナ時代には感染を新薬などで軽微に抑えつつ、経済、社会、教育など活動を復活、発展させていかなければなりません。そのためにはコロナ危機から学んだことを改めて考えてみる必要があると考えます。

日本語教育関係者はコロナに苦しめられながらも、最前線でそれと闘ってきました。それぞれの立場からコロナ禍における取り組みを改めて振り返ることで、ウイズコロナの時代の歩むべき道筋が見えてくるかもしれません。2022年はまさに正念場ですが、新たな展望を切り開く年でもあるはずです。

2022年元旦

「にほんごぷらっと」編集長 石原 進

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