規制改革推進会議が意見書に「就労のための日本語能力の強化」盛り込む

規制改革推進会議が意見書に「就労のための日本語能力の強化」盛り込む

政府の規制改革推進会議はこのほど、「日本で学ぶ留学生の就職率向上に向けて」と題した意見書をまとめた。その中で就職率向上の方策の一つとして「日本語力の強化」が盛り込まれた。意見書の中身は来年度予算案の編成に向けた「骨太の方針」に盛り込まれる可能性があり、日本語教育推進議員連盟による日本語教育推進基本法(仮称)制定の動きと併せ、政府の日本語教育推進の取り組みが加速されそうだ。

人口減少に伴う労働力の不足が深刻化する中で、政府は留学生の活用に力を入れている。しかし、留学生のうち6割が卒業後に日本での就職を希望しているにもかかわらず、実際に就職するのは3割に過ぎない。規制改革推進会議は専門家の意見を聞きながら、こうした現状を打開し、就職率を5割に引き上げるための方策を検討してきた。

その結果をまとめた意見書には、①在留資格の「留学」から「技能・人文知識・国際業務」への変更手続きの透明化、簡素化②就職のインセンティブと定着率向上のための高度人材のポイント制の活用③留学生の起業を促すための起業要件の見直し④28時間を超える有給のインターンシップの在り方の周知⑤地方における就職支援の強化――とともに「就労のための日本語能力の強化」が盛り込まれた。

「就労のための日本語能力」とは、いわゆるビジネス日本語だ。その教育環境を充実するために3つの講ずべき措置を挙げている。一つは日本語教師の養成・研修の仕組みの改善と日本語教育のスキルを証明するための資格の整備だ。日本語教師は様々な分野で活動しており、資格をどのように規定するか難しい面もあるが、教師の質とステータスの向上のためには突っ込んだ議論が求められる。

また、複数の大学が取り組んでいる「留学生就職促進プログラム」の成果(ビジネス日本語、キャリア教育、就職活動に必要なノウハウ)の公表と他の大学への横展開をあげる。さらに留学生がスムーズに職場に定着できるよう、新規の就職者にビジネス日本語の研修などの機会を提供することも指摘している。

規制改革推進会議は、安倍晋三首相の諮問を受けて経済に関する重要政策を審議する政府の機関で、議長は政策研究大学院大学教授の大田弘子氏。その意見書は政府の政策決定に強い影響力を持つ。

内閣府規制改革推進会議の意見書は以下の通り。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/committee/20180420/180420honkaigi02.pdf

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