日本語議連の第12回総会 コロナ禍の中で日本語学校の在り方を模索

日本語教育推進議員連盟(河村建夫会長)の第12回総会が6月30日午後、衆院第二議員会館で開かれた。日本語議連の議員提案によって制定された日本語教育推進法に基づく「基本方針」がこのほど閣議決定され、今後は同法の附則を受けて基本方針にも盛り込まれた日本語学校の在り方の法制化などが大きな課題となる。

この日の総会の議題は、①日本語教育推進の基本方針②日本語教師の資格の在り方③日本語学校のコロナ対策の現状――3点。基本方針では、向う5年間に政府が取り組むべきプログラムや方向性が示された。日本語教師の資格については、文化審議会国語分科会が先に「公認日本語教師の資格」の創設を打ち出している。一方、コロナウイルスの感染拡大で留学生の入国や「留学」の在留資格の付与などが滞っている。

この日は基本方針と日本語教師の資格について、文化庁国語課などが説明。コロナ対策の現状に関しては、日本語学校の業界団体からその窮状について説明があった。いずれも日本語学校の将来を左右する重要な課題だ。

留学生の急増とともに、新設される日本語学校も増えているが、課題となっているのは教育の質の向上や日本語教師の育成、確保だ。「公認日本語教師の資格」の創設は、教師の待遇改善なども視野に入れており、今後はその法制化が課題となる。また、日本語学校の監督官庁をどうするかも、今後の需要な課題だ。入管庁は留学の在留資格の交付などを担務とするが、日本語教育には関与する権限はない。こうした制度的な不備もあって、就労目的の留学生を受け入れ、メディアの批判を浴びるケースが一部日本語学校だけでなく専門学校、大学にもある。こうしたころから、日本語学校の在り方の法制化も検討されることになる。

総会では出席議員から各種課題に関する質問が相次いだ。公認日本語教師の資格要件に関して「学資以上の学位」が盛り込まれていること対して「厳しすぎるのではないか」との指摘があった。日本語学校の監督官庁については、在留資格の付与に関しては入管庁が責任を持っているが、日本語教育の分野については、はっきりしていないため「役所がたらい回しにしている」との声もあった。

日本語教師または日本語学校の在り方を今後検討していくうえで、大前提となるのは留学生のための日本語教育の質をどう高めていくのか、ということだろう。それぞれの課題は密接不可分であり、相互に精緻な議論の積み重ねが必要になりそうだ。また、日本語学校の業界団体は日本語議連が発足した2016年秋には4団体だったが、その後は6団体に増えている。法人格を持つ専門学校に併設された日本語学校や各種学校、株式会社立や個人立など設置形態も様々だ。業界内で一定のコンセンサス作りも大きな課題の1つだ。日本語教育推進法の制定や基本方針の閣議決定などで議論の土俵はできたが、これから新たな制度や枠組みを作るには、政治、行政、業界が一体になった取り組みが求められる。

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