「留学」の類型を先行して制度化へ 「日本語学校」の審査項目の議論も 第5回日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議

「留学」の類型を先行して制度化へ 「日本語学校」の審査項目の議論も 第5回日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議

文化庁は4月27日、第5回日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議(西原鈴子座長)を開催した。これまでの会議で日本語教育機関について「留学」「就労」「生活」の3類型の在り方が検討されたが、この日の会議では「留学」の制度化を先行させ、留学生を受け入れている日本語学校の法務省告示基準の審査項目について、新たに内容を検討することなどが提案された。

この日の議事では、先の会議で「留学」「就学」「生活」の3つに類型化された「日本語教育機関」のあり方を具体的に検討。文化庁は3類型の中の「留学」について、「法務省の告示規準の審査項目に参考になる点が多いため、他の類型に比べて検討は容易だ」との認識を示し、「留学」を先行して制度化する意向を示した。

留学生を受け入れている日本語学校は、法務省告示に基づく審査を得て告示校に認定されるが、会議では審査項目の議論が行われた。日本語教育に関わる審査項目としては、科目設定、修業期間・授業時間、点検・評価、教員数、教員要件、定員、校舎・教室の面積などがある。これについ文化庁は、点検・評価に関して「第三者機関による定期的な検査の実施」を、教員要件には「公認日本語教師の配置」を提案した。

また、審査項目の中に「教育成果・情報公表等」を新たに追加することも提案した。新たな審査項目については、今後、具体案を検討するとしているが、「情報公表」「教育成果」「基本組織・目的」を例示している。

さらに文化庁は社会福祉士などの例を挙げ、資格がなくても活動できる「名称独占資格」の制度でも試験が必要だとして、国家資格としての公認日本語教師の資格取得には試験を課す考えを示した。一方、現職の日本語教師に対する教育実習については、「教育内容が担保されている日本語教師には免除するなど何らかの配慮が考えられる」と述べた。実質的に一定の経験を積んだ日本語教師の場合は教育実習を必要としないという。

これまでの調査研究協力者会議では、文化審議会国語分科会の日本語教育小委員会が2020年3月にまとめた報告書に沿って公認日本語教師の在り方を議論してきた。報告書では「学士以上の学位」などの資格取得のための要件が示されたが、調査研究協力者会議では「学士以上」の学歴を要件から外すなど緩和策を提示している。

調査研究協力者会議のこの日までの議論で、①日本語教育機関の「留学」「就労」「生活」の3類型のうち「留学」を先行して制度化する②公認日本語教師の資格の取得には試験を行うが、現職の日本語教師の場合は教育実習を免除する③日本語学校に対しては法務省の告示を受けた後も第三者機関による定期的な審査の実施や公認日本語教師の配置を盛り込む――などの輪郭が明らかになった。

法務省告示の改革や公認日本語教師の創設は、日本語学校の在り方に大きな影響を与えることは必至だ。この日の調査研究協力者会議では日本語学校関係の委員から第三者評価の在り方や告示の審査などに様々な角度から意見や注文が出された。

公認日本語教師の資格試験をどんな機関がどのように行うのか、日本語学校を点検・評価する第三者機関とはどのような機関なのかなど、なお議論を詰めるべき点は少なくないが、文化庁は6月には法案作成の検討作業に入り、来年の通常国会に公認日本語教師の資格創設の法案を提出する予定だ。その後、資格試験の実施機関や日本語学校の評価する第三者機関の設置などを行い、試験の実施は2024年以降になるとみられる。

関係資料は以下の文化庁のホームページで見ることができます。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/nihongo_kyoin/92369001.html

にほんごぷらっと編集部

にほんごぷらっと編集部にほんごぷらっと編集部

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の編集部チームが更新しています。

この著者の最新の記事

関連記事

コメントは利用できません。

イベントカレンダー

7月
20
10:00 AM 【!!追加募集!!】NPO法人日本... @ オンライン (オンライン上での集合研修 および 動画視聴による個人学習) ・「就労者の異文化適応」「教材研究」は対面(東京・大阪)で実施。 オンラインでの参加も選択可能。
【!!追加募集!!】NPO法人日本... @ オンライン (オンライン上での集合研修 および 動画視聴による個人学習) ・「就労者の異文化適応」「教材研究」は対面(東京・大阪)で実施。 オンラインでの参加も選択可能。
7月 20 2025 @ 10:00 AM – 2月 8 2026 @ 2:45 PM
【!!追加募集!!】NPO法人日本語教育研究所 主催文部科学省委託 令和7年度現職日本語教師研修プログラム普及事業 就労者に対する日本語教師【初任】研修 就労者に対する日本語教師養成 –日本語教育研究所の多様な研修実績及び人材を活かしたビジネス日本語教育/指導- ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ この研修は、これから新たに就労者に日本語を教えたいと考えている方を主な対象としています。スキルアップにぜひお役立てください。 再受講をご検討の方へ 本研修はこれまでに弊所の研修をご受講された方も、再度ご参加いただけます。 実際に現場に出て、もう一度確認したいことなども出てきているのではないでしょうか。 さらに実践的な指導力を高める良い機会となりますので、ぜひご検討ください。 ─────────────────── ■期間 2025年7月20日(日) ~ 2026年2月8日(日) *日程等の詳細は、募集要項のリンク先からご覧ください。 ■対象 日本語教育機関認定法に基づく「登録日本語教員」を対象としますが、本法の経過措置期間内(令和10年度まで)は、令和6年度までに下記を修了した方も対象とします。 1)日本語教師として下記のいずれかの要件を満たす方  ①大学/大学院で日本語教育に関する教育課程を修了し、大学/大学院を卒業/修了した方  ②大学/大学院で日本語教育に関する科目の単位を26単位以上修得し、大学/大学院を卒業/修了した方  ③公益財団法人日本国際教育支援協会「日本語教育能力検定試験」に合格した方  ④学士の学位を有し、日本語教師養成講座 420 単位時間以上を修了した方 2)原則として、就労者への日本語教育歴が0~3年未満の方 ■定員 100名 ■受講料 20,000円(税込) ※教材費込み ■申込方法 以下のリンクからお申し込みください。 https://forms.gle/JWtnJ6WzzCNQvQx88 ■申込締切 2025年6月30日(月)【募集期間延長しました!!】 ■募集要項 https://docs.google.com/document/d/1uHn1k6zdRIgcQ2-lK5Uyr1Qa5vlwzXCFvKEUw3UjJVU/edit?usp=sharing ■お問い合わせ NPO法人 日本語教育研究所(研修事務局) nikken.kenshu@gmail.com
8月
1
12:00 AM 「実践のプロセスを協働でふり返る... @ 新潟ユニゾンプラザ
「実践のプロセスを協働でふり返る... @ 新潟ユニゾンプラザ
8月 1 @ 12:00 AM – 10月 4 @ 11:59 PM
介護・医療現場や日本語教育などにおける実践について協働でふり返ります。 省察や学びに興味がある仲間と語り、聴き、関わる中で学び合ってみませんか。 皆さま 平素お世話になっております。 「学びを培う教師コミュニティ研究会」からのお知らせです。 この度、ラウンドテーブル2025秋~新潟~「実践のプロセスを協働でふり返る-語る・聴くから省察へ」を開催することになりました。 https://manabireflection.com/archives/activities-japan/%e6%96%b0%e6%bd%9f%e3%83% a9%e3%82%a6%e3%83%b3%e3%83%89%e3%83%86%e3%83%bc%e3%83%96%e3%83%ab2025%e7%a7%8b%e 3%81%ae%e3%81%94%e6%a1%88%e5%86%85 ◆コーディネーター 池田広子(目白大学) ◆ファシリテーター 秋田久美子(大起日本語学校) 上田和子(武庫川女子大学) 宇津木奈美子(獨協大学) 小西達也(早稲田大学) 佐野香織(武蔵野大学) 冨樫里真(青山国際教育学院) ◆日時:2025年10月4日(土)9:30~16:30 ※昼食休憩があります。 ◆場所:新潟ユニゾンプラザ 4階特別会議室 https://www.unisonplaza.jp/access/ (JR越後線上所駅 徒歩10分) ◆参加費:無料 ◆申し込み締め切り:9月22日(月) ◆申し込みhttps://docs.google.com/forms/d/1PjUaqHxz6vCaRlw86qx5vwubQkmWm6bu4a_S84 MMVIg/viewform?edit_requested=true 皆さまのご参加を心よりお待ちしております。 学びを培う教師コミュニティ研究会事務局
8月
23
10:00 AM シリーズ 就労分野の日本語教育—『... @ オンライン
シリーズ 就労分野の日本語教育—『... @ オンライン
8月 23 @ 10:00 AM – 12:00 PM
社会人一般(初級)への教え方講習会です。 「JBP」シリーズの著者が、忙しい社会人を対象とした教え方の秘訣を実践例とともに紹介します。
8月
26
10:06 AM 第11回日本語教育支援システム研究... @ 英キール大学(Keele University)
第11回日本語教育支援システム研究... @ 英キール大学(Keele University)
8月 26 @ 10:06 AM
第11回日本語教育支援システム研究会(CASTEL/J)国際大会 第11回日本語教育支援システム研究会(Computer Assisted Systems for Teaching and Learning Japanese – CASTEL/J)国際大会を英国中部スタッフォードシャー州にあるキール大学(Keele University)にて英国日本語教育学会(BATJ)・キール大学ランゲージ・センターとの共催で開催することとなりました。 日本語教育支援システム研究会国際大会は、日本語教育関係者、日本語教育のリーダーに日本語教育におけるテクノロジー使用の最先端の動き、将来の方向性を共有する機会を作ってきました。2020年のパンデミックにより授業のオンライン化・ハイブリッド化が進み、それに加えて、この数年の人工知能(AI)技術の急速な発展と普及により、日本語教育は元より私たちを取り巻くテクノロジー環境が大きく変化しています。これらの技術的発展を効果的に教育・学習に取り入れ促進していくことは今まで以上に重要となっています。世界中からこの分野の優れた研究者、実践者が集まるこの国際大会に是非ご参加ください。 日時:2025年8月26日(火)〜27日(水) 会場:英スタッフォードシャー州キール大学チャンセラーズ・ビルディング 共催:英国日本語教育学会(BATJ)、キール大学ランゲージ・センター

注目の記事

  1. 認定日本語教育の法案を閣議決定、国会に提出 政府は2月21日、「認定日本語教育機関」と「登録日…
  2. 「『素顔の国際結婚』の今」を読んで 国籍法と国際家族のあり方を考える まず、家族へのひときわ強…
  3. 主権国家である以上、国境管理をおろそかにすることはできない。その重責を担うのが出入国在留管理…

Facebook

ページ上部へ戻る
多言語 Translate