EPA受け入れの介護福祉士試験にベトナム人89人が合格、合格率93.7%

EPA受け入れの介護福祉士試験にベトナム人89人が合格、合格率93.7%

経済連携(EPA)に基づく外国人介護福祉士候補者の受け入れ事業で、厚生労働省はこのほど、2017年度の介護福祉士国家試験の結果を発表した。今回初めて受験したベトナム人介護候補者は95人のうち89人が合格した。合格率は93.7%だった。合格率40%弱のインドネシア、フィリピンの候補者と比べて極めて優秀な成績だった。

受験したのは、ベトナム人をはじめ、インドネシア人とフィリピン人の3カ国の候補者。インドネシア人は161人(前年度109人)が受験し、62人(同68人)が合格、合格率は38.5%。フィリピン人は164人(同100人)が受験し、62人(同36人)が合格、合格率は37.8%だった。ベトナム人が初めての国家試験でインドネシア、フィリピン両国より大幅に合格率が高かったのは、来日前に十分な時間をとって日本語教育を行い、日本語能力試験の合格基準が高く設定されているためだとみられる。

EPAによる介護福祉士の受け入れは、建前上は経済活動に関する二国間の連携強化が目的とされ、政府としては介護人材の不足をカバーするための制度ではないとしている。2008年度からインドネシアとフィリピンから候補者の受け入れが始まり、その数は2017年度までに累計で3492人にのぼる。ベトナムは2014年度から候補者の受け入れが始まり、今回初めて国家試験に臨んだ。

インドネシアとフィリピンの介護福祉士候補者は、①それぞれ自国での候補者要件をクリア②訪日前日本語研修6カ月③日本語能力試験N4程度以上の取得④訪日後日本語等研修6カ月――などの条件が課せられる。

一方、ベトナム人介護福祉士候補者は、①自国での候補者要件をクリア②訪日前日本語研修12カ月③日本語能力試験N3以上の取得④訪日後日本語研修等2.5か月――などの条件が課せられる。

この2つのルートを比べてみると、訪日前日本語研修の期間はベトナムがインドネシア・フィリピンの2倍、日本語能力試験に関してもベトナムの方がインドネシア・フィリピンより高いレベルが必要とされている。こうした条件の差が国家試験の合格率にも表れていると見ることができる。

国家試験に関しては、EPAの候補者に対して特例措置が設けられている。筆記試験の時間(220分)が1.5倍に延長され、また、問題用紙の漢字にふりがなが付記されるようになった。いずれも外国人の日本語能力に配慮した措置だ。

介護福祉士への外国人の活用では、EPAに加えて外国人技能実習生と在留資格「介護」による受け入れという新たな制度が設けられた。団塊の世代が75歳以上になる2025年には、介護業界では37万7000人の介護人材が不足するといわれている。優秀な外国人材の確保が今後、さらに大きな課題となりそうだ。

にほんごぷらっと編集部にほんごぷらっと編集部

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の編集部チームが更新しています。

この著者の最新の記事

関連記事

コメントは利用できません。

イベントカレンダー

5月
31
1:30 PM 廣池学園創立90周年記念シンポジウ... @ 麗澤大学さつき校舎 大講義室/ラーニングホール
廣池学園創立90周年記念シンポジウ... @ 麗澤大学さつき校舎 大講義室/ラーニングホール
5月 31 @ 1:30 PM – 5:30 PM
廣池学園創立90周年記念シンポジウム 日本語の明日を考える 2025.5.31(土)13時30分~17時30分 麗澤大学さつき校舎 大講義室/ラーニングホール YouTubeライブ中継は こちら 13時20分開始予定 会場参加のお申し込みは こちら 12時30分開場予定
6月
28
終日 第34回小出記念 日本語教育学会 年... @ オンライン
第34回小出記念 日本語教育学会 年... @ オンライン
6月 28 終日
開催日:2025年6月28日(土) ・場所:オンライン(Zoom) ・予定(日本時間): 9:40-10:10 会員総会 10:20-10:30 開会・プログラム説明 10:30-12:20 講演   「対話を通した学習者オートノミーおよびウェルビーイングの促進」 講師:加藤聡子氏(神田外語大学 学習者オートノミー教育研究所 特任准教授) 13:20-16:50 口頭発表 16:55-17:10 総括 ・参加費:会員無料・非会員2000円(発表者以外の参加申し込み方法は5月下旬にお知らせします)
7月
5
終日 日本語ジェンダー学会 第25回年次... @ 実践女子大学(渋谷キャンパス)
日本語ジェンダー学会 第25回年次... @ 実践女子大学(渋谷キャンパス)
7月 5 終日
第25回年次大会 研究発表募集要項 2025年7月5日(土)に実践女子大学(渋谷キャンパス)にて開催される、第25回年次大会での研究発表を募集します。以下の要領でお申込みください。  発表資格: 研究代表者=当日の発表者は、応募および発表時点で当学会の会員である必要があります。会員登録は、当学会事務局で随時受け付けておりますので、応募時までに会員登録をお済ませください。 会員登録はこちら新しいウィンドウで開きますからお願いします。 なお、研究代表者以外の連名者は、会員・非会員は問いませんが、採択された場合、後日の参加申込みは連名者も含み全員にしていただきます。 発表内容: 言語(特に日本語)・言語による作品・言説・発話・言語使用状況・言語使用環境等をジェンダーの観点から論じた内容を含む未発表のもの(発表内容は、大会テーマに関わるもの or 関わらないもの、どちらでもよい) → 大会テーマ「メディア・ことば・ジェンダー」 発表言語と時間: 日本語で30分(口頭発表20分+質疑応答10分)以内  申し込み期間: 2025年3月3日(月)–  5月7日(水)24:00 (JST) 申し込み方法: 当学会のウェブサイト上の「研究発表申込み書新しいウィンドウで開きます」をダウンロードして、研究者名、発表タイトル、発表概要(1000-1500文字)などを記入してアップロードする。 → 3月3日(月)以後に、こちら新しいウィンドウで開きますにアップロードしてください。 可否通知: 審査後5月16日(金)までに研究発表担当の実行委員からご本人に結果を通知します。場合によっては、一定の条件や修正への要求が提示される場合があります。 予稿集原稿: 採択された方は、6月6日(金)24:00までに予稿集に掲載する発表要旨を日本語で執筆してください。場合によっては、修正や加筆をお願いする場合があります。執筆要項は可否通知の際にお知らせします。 ★二重投稿や剽窃などの不適切な原稿に関しては厳しく対処致しますので、研究者としての良識をもってご執筆ください。 以上.

注目の記事

  1. 日本語議連が総選挙後初の総会 政府の日本語教育の取り組みを議論 日本語教育推進議員連盟(柴山昌…
  2. ロサンゼルスの英字紙編集長から「LA大火から1か月」のレポート 岩手県大船渡市の山林火災で大き…
  3. 日本の移民問題を外国人ジャーナリストが語る国際ウエビナー オンラインで30日に開催 日本の外国…

Facebook

ページ上部へ戻る
多言語 Translate