毎日新聞が「日本語教育」の社説 大手4紙が足並み 基本法制定の追い風に

毎日新聞が「日本語教育」の社説 大手4紙が足並み 基本法制定の追い風に

毎日新聞が6月4日朝刊で「外国人への日本語教育 国が率先して制度作りを」と題する社説を掲載した。日本語教育に関する社説は、日本経済、朝日、読売の3紙がすでに掲載、毎日が掲げたことで大手4紙が足並みをそろえた。超党派の日本語教育推進議員連盟(日本語議連)が先に日本語教育推進基本法(仮称)の原案をまとめているが、世論に大きな影響力を与える主要紙が日本語教育の充実や推進を求めたことは、基本法制定の追い風になりそうだ。

人口減少に伴い、在留外国人が急増している。彼らが日本人とコミュニケーションをとるためには日本語教育が不可欠だ。しかし、日本語教育の法整備が十分でなく、2016年11月に発足した日本語議連が日本語教育推進基本法(仮称)の制定に向けて議論を重ねてきた。5月29日の第10回総会では基本法の原案となる政策要綱が了承された。要綱は日本語教育の推進を国と地方自治体の「責務」とし、「希望するすべての人」に日本語教育の機会を確保することなどを基本理念に盛り込んでいる。

現実に学校現場では、外国籍の児童生徒らの日本語教育が大きな課題となっている。また、外国人留学生の教育の在り方や技能実習生の日本語教育の必要性をめぐっても様々な議論が出ている。さらに、不足する日本語教師を育成策や日系企業への就職する若者たち向けの海外での日本語教育の必要性も指摘されている。

毎日の社説は、基本法の原案が明らかにされて初めて掲載されたもの。同紙の社説では、日本語を学ぶ外国人は2016年の調査で約22万人のぼり、5年間で9万人近く増えたが、日本語教師約3万8000人のうち6割はボランティアだという。そうした現状を踏まえ、「国が率先して制度作りを」と訴えた。その主張は、おおむね基本法が目指す方向と重なっている。

社説はまた、「国は財政措置や人材確保を可能にする制度創設に取り組むべきだ」と主張し、「日本への留学や就労を目的とした外国人を対象にした、海外での日本語教育の充実も欠かせない」とも述べた。国内だけでなく、一歩踏み込んで留学生が数多く来日しているアジア各国での日本語教育にも言及している。

大手紙で最初に社説で日本語教育を取り上げたのは日本経済新聞だ。同紙は昨年12月10日に「外国人の日本語学習下支えを」と主張した。続いて朝日新聞が1月20日に「外国人住民 日本語教育の支援を」と訴えた。読売新聞は5月27日付で「外国人児童生徒 日本語教育の質を高めたい」。毎日新聞も含め、外国人のための日本語教育を充実させることが必要だとの認識のもと、その推進を求めている。新聞の社説は、様々な事象に対して新聞社として独自の見解を明らかにする欄だ。安倍政権の政権運営をめぐっては論調にばらつきのある各紙だが、日本語教育に関しては「推進」の方向で一致している。

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6月
12
12:00 AM 留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
6月 12 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
6月
29
12:00 AM 留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
6月 29 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
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終日 2024年度 日本語教育学会_秋季大会 @ 姫路市市民会館(兵庫県)
2024年度 日本語教育学会_秋季大会 @ 姫路市市民会館(兵庫県)
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日本語教育学会 2024年度秋季大会 開催日 2024年11月16日(土)、17日(日) 会場 姫路市市民会館(兵庫県)
11月
22
7:00 PM 教室内談話: 学習者間相互交流とL... @ オンライン(ZOOM)
教室内談話: 学習者間相互交流とL... @ オンライン(ZOOM)
11月 22 @ 7:00 PM – 12月 13 @ 8:30 PM
※この講座の内容は2022年実施分に準じます。 教室内談話: 学習者間相互交流とL2学習を考える 学習者同士が互いに話し合う活動は、近年の外国語(L2) 教室には不可欠です。また、学習者同士 が学習言語で対話する活動の意義やL2 習得における効果は、外国語教育において興味深いトピッ クの1 つです。本講義では第二言語習得理論を適宜参照しながら、外国語教室で行われる学習者同 士の対話の意義や先行研究で明らかになっている効能、より効果的な実践法や課題と展望について 考察を深めます。 【全4回】 日程: 第1回:2024年11月22日(金)19:00-20:30 第2回:2024年11月29日(金)19:00-20:30 第3回:2024年12月6日(金)19:00-20:30 第4回:2024年12月13日(金)19:00-20:30 内容: 第1回:「学習者同士のL2 対話」と第二言語習得理論 第2回:「学習者同士のL2 対話」と第二言語学習 第3回:「学習者同士のL2 対話」と教師 第4回:「学習者同士のL2 対話」とこれからのL2 指導 【受講料】9,000円(税込)※1講座のみお申込み:2,500 円(税込)

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