「日本語教育推進に関する国の基本方針」策定へ 専門家が骨子素案の議論を進める

「日本語教育推進に関する国の基本方針」策定へ 専門家が骨子素案の議論を進める

日本語教育推進法の10条は、政府に日本語教育を推進するための基本方針を定めるよう求めている。これを受けて政府は関係省庁による日本語教育推進会議を設置。推進会議は基本方針をとりまとめ、6月に閣議決定する意向だ。この基本方針の骨子素案をめぐる議論が有識者による「日本語教育推進関係者会議」(座長、西原鈴子・日本語教育研究所理事長)によって進められている。関係者会議は推進会議に対し「意見具申」する機関で、昨年11月22日の第1回会議に続いて1月24日には2回会議が開かれた。

基本方針は向こう5年間の政府の日本語教育推進の道筋を示すもので、地方自治体もこの基本方針に沿って施策を進めることになる。基本方針の策定は、日本語教育推推進法の「基盤」となる重要な取り組みだ。基本方針は閣議決定されることで法的な拘束力を持つことなり、施策の予算化の根拠にもなる。

基本方針を取りまとめるのは、内閣府をはじめ文部科学省・文化庁、外務省、出入国在留管理庁など10の府省庁の局長クラスで構成する日本語教育推進会議だ。基本方針を策定するのにあたり、その骨子の素案づくりに関して専門家の意見を聴くため設置されたのが関係者会議で、日本語教育の専門家をはじめ、外国人の社会学者など19人が委員に委嘱されている。

骨子の素案は推進会議の事務局が作成したもので、①日本語教育の推進の基本的な方向に関する事項」②日本語教育の推進の内容に関する事項③その他日本語教育の推進に関する重要事項」の3点を主な議題としている。特に「内容に関する事項」については、専門家の幅広い意見を求めたいとしており、第1回会議に続き、第2回会議でも活発な議論が行われた。会議のまとめは、その約1週間後には文化庁のホームページに公開されるので、関心のある方はホームページをご覧いただきたい。

関係者会議はさらに1,2回開かれる予定。骨子案がまとまったら日本語教育推進会議がそれに肉付けする事項を盛り込みなど基本方針案の本文の策定作業が行われる。基本方針案は公表され、一般からのパブリックコメントを受け付けたあと、必要に応じて修正されたのち、閣議で決定される。政府は閣議決定した基本方針に則って日本語教育に関する施策を進めるほか、地方自治体もその方針に沿った計画の策定や事業を進めることになる。政府が基本方針を定めることによって、日本語教育推進の公的な道筋が描かれることになる。

以下は、24日の日本語教育推進関係者会議で配布された修正入りの基本方針の骨子素案[資料6]と第1回の関係者会議で出た骨子素案に対する意見のまとめ[資料7]

基本方針の骨子素案[資料6](PDF)

骨子素案に対する意見のまとめ[資料7](PDF)

 

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