平成29年度日本語教育能力検定試験の結果を分析してみた

日本語教育能力検定試験の結果を分析してみた

12月14日、日本語教育能力検定試験(以下「検定」)の合否通知が送付され、結果概要が公表された(1)。筆者は2010年の合格者であり、以来合格最低点の試算など独自の分析を続け、公開してきた(2)。その知見から、今年の検定の結果について分析してみる。

(図1)応募者・受験者・合格者数など

もっとも特筆すべき事項は、受験者数が5767人、前年比17%増(858人増)となったことである。これは新形式になった2011年(平成23年)以降最大の増加率・増加数である。欠席者を含む応募者数を見れば7331人、19%増加となっている。

この応募者・受験者数増は、2016年7月22日発表の日本語教育機関の新告示基準で、大卒ではない日本語教師には事実上検定合格が求められるようになったことが影響していると考えられる。大卒でも、検定合格を非常勤講師の契約継続条件と定めた日本語学校も少なくないようである。今後検定の需要が高まっていくことは間違いない。

(図2)受験者数と合格率の相関

合格率は、前年の25.1%とほぼ同水準の25.4%となった。主催者の公益財団法人日本国際教育支援協会(JEES)は合格率の基準を明らかにしていないが、過去の受験者数と合格率の関係を見ると、緩やかな負の相関がある。今回大幅な受験者数増が予想されていたため、場合によっては20〜22%程度になる可能性もあると見ていたが、実際は昨年同レベルとなった。仮に21%だったとした場合1211人となり、前年の合格者数を割り込む。筆者の私見だが、新告示により検定合格者増が社会的にも求められており、JEESとしても受験者数増に合わせて合格者数を設定したのではないかと考えている。

(図3)受験者数前年比較(現役日本語教師・それ以外別)

(図4)初回受験・再受験別前年からの増減数

現役日本語教師の受験者数が前年比で40.6%(282人)増加し、全体の増加率を押し上げた。また、再受験者数が前年比で220人増加し新形式になって最大の伸びとなった。これも日本語教育の現場で検定取得が重視されてきている傾向を示すものだと考えられる。

新告示後の最初の検定として注目されていたが、全体として日本語教育関係者の間で想定されていた結果になったと言えよう。今後の受験者増を想定して、JEESが国内外での会場増や年複数回実施など、適切な施策を講じることを期待したい。まずは単純計算で1365万円増えた受験料収入から、申込受付や結果通知のネット化に投じ、業務拡大に備えてほしいところである。

(1)公益財団法人日本国際教育支援協会(JEES)
http://www.jees.or.jp/jltct/result.htm

(2)「2017年速報 日本語教育能力検定試験、データあれこれ。」
https://matome.naver.jp/odai/2145104547757874101

吉開 章(よしかい・あきら)寄稿者

投稿者プロフィール

やさしい日本語ツーリズム研究会事務局長、株式会社電通勤務。2010年日本語教育能力検定試験合格。会員3万人以上の日本語学習者支援コミュニティ「The 日本語 Learning Community(Facebook参照)」主宰。ネットを活用した自律学習者に詳しい。2016年「やさしい日本語ツーリズム」企画を故郷の福岡県柳川市で立ち上げ。論文・講演実績などはこちら(WEB参照)。

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オンライン講義:タスクベースの言... @ オンライン
10月 18 @ 2:00 PM – 3:30 PM
オンライン講義:タスクベースの言語指導とは? ―タスク支援型からタスク基盤型へ― ■会場 オンライン(Zoomミーティング) ■日時 2025年10月18日(土)14:00–15:30 ※録画配信等はありません ■参加費 無料 ■講師 小柳かおる 先生(上智大学言語教育研究センター/大学院言語科学研究科教授) 福岡県出身。ジョージタウン大学にて博士号(言語学)取得。(社)国際日本語普及協会(AJALT)を経て渡米、アメリカ国際経営大学院、ジョージタウン大学等の日本語講師。上智大学比較文化学部(現 国際教養学部)助教授などを経て現職。2018年9月から2019年8月まで、フランス国立東洋言語文化大学(INALCO)日本学研究センター特別招聘研究員。 著書に『改訂版 日本語教師のための新しい言語習得概論』(単著、スリーエーネットワーク、2021)、『第二言語習得について日本語教師が知っておくべきこと』(単著、くろしお出版、2020)、『認知的アプローチから見た第二言語習得』(峯布由紀氏との共著、くろしお出版、2016)、『第二言語習得の普遍性と個別性』(向山陽子氏との共著、くろしお出版、2018)など。

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