朝日新聞の「多民社会」のキャンペーンと国際紅白歌合戦

朝日新聞の「多民社会」のキャンペーンと国際紅白歌合戦

朝日新聞が10月21日の朝刊で「多民社会」というタイトルの記事で外国人受け入れのキャンペーンをスタートさせた。日本は多民族、多文化の人々が集う「多民社会」に足を踏み入れたという。政府が来年4月から外国人労働者の受入れを拡大するのを見すえた連載なのだろう。2016年から翌年にかけて西日本新聞が「新 移民時代」という大型企画を連載し、大きな反響を呼んだ。外国人の受け入れに関しては「異論」を唱え、「懸念」を示す人が少なからずいるのは否定できない。しかし、人口減少時代には外国人との「共生」を抜きには未来を語れないのも事実だ。マスメディアが相次ぎ本格的なキャンペーンに乗り出すことで、国民世論や政治の流れに変化が加速することを期待したい。

新聞の大型連載は、初回の記事を読めばその問題意識がだいたい予想がつく。1面トップの記事では「日本に移り暮らす」の大見出しに「労働者・生活者として溶け込む外国人」の見出しが続く。記事では、中国内モンゴル出身の女性が福岡市の日本語学校、佐賀大学で留学生生活を送った後、JR九州に就職。博多駅のホームで外国人観光客を迎える最前線で活躍する姿を伝える。また、イスラム教徒のインドネシア人の主婦が東京・八王子市の幼稚園で日本人の「ママ友」から助けられる話や、モスクでの金曜礼拝のため授業を休むことに理解を示す中学校の考えも紹介する。

記事は2面に続き、ITのベンチャー企業を立ち上げた「高度人材」の中国人若手社長の「ジャパニーズ・ドリーム」、過疎が進む鹿児島県・奄美大島の飲食店を支える日本語学校の留学生、さらには日系ブラジル人が多く住む愛知県豊田市の保見団地の日系人と日本人の暮らしぶりの一端を伝える。それぞれの事例が「ニュース」というわけではないが、すでに日本には隣人としての外国人が数多く暮らし、共生社会が出来つつあるのだ。

タイトルの「多民社会」という言葉は、一部の人たちの「移民」へのアレルギーから考えた造語のようだが、言いたいのは、様々な国籍、文化を持つ人たちとわだかまりなく暮らせる寛容な社会を作ろう、ということだろう。仄聞するところでは、朝日新聞はこの日の記事をスタート台にして様々な角度から外国人と日本社会との関りを取り上げ、キャンペーン展開するという。一の雑誌やテレビでは「ヘイト」な記事や番組が散見されるが、大手メディアとしての見識を示してもらいたい。

ただ、気になる点もある。朝日新聞だけでなく、毎日新聞や日本経済新聞などで「単純労働」という言葉を使っていることだ。かつて政府は雇用対策基本計画の中で「いわゆる単純労働」の外国人の受け入れを事実上行わない旨をうたい、「専門的・技術的分野」にだけ「高度人材」を受け入れるとしてきた。私は労働を「単純労働」と「高度人材」にあからさまに区別することに違和感を覚え、公的なシンポジウムなどで異論を唱えてきた。政府は、単純労働者は受け入れないということで技能実習生を受け入れてきた。裏を返せば技能実習生を受け入れている農業や製造業などの分野で働いているのは「単純労働者」ということなる。AIやITの時代である。単純作業はあっても単純労働だけで成り立つ職業分野などあるわけはない。

自民党で外国人労働者受け入れをけん引する木村義雄参院議員は「政府の役人に単純労働とは何か言ってみろとただしたが、答えられなかった」と話し、政府や自民党はすでに単純労働という言葉を使わなくなったという。

朝日新聞の「多民社会」が掲載される前日の20日、東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターの大ホールで「第8回国際紅白歌合戦」が開かれた。東日本大震災が起きた2011年に留学生ら外国人と日本人が歌を通じて交流し、日本を元気にしようと始まったイベントだ。原則、日本人は外国の歌、外国人は日本の歌を披露することで多文化交流を図ろうというわけだ。

企画や運営を一手に取り仕切るのは、「グローバルコミュニティ―」というミニコミ誌を発行する宮崎計実さん。宮崎さんの活躍で大阪観光局の誘致で大阪でも紅白を開いたことがあるほか、フィリピンのセブ島やインドネシアのバリ島でも「国際紅白歌合戦」が開催されている。

第8回歌合戦のこの日はセブやバリからも「歌手」が招かれたほか、コンゴ人の父と日本人の母を持つ太宰鶴恵さんやインドネシア人看護師のフェルナンデスさんら〝常連〟も自慢の歌声を響かせた。太宰さんは聞く人の心を揺さぶるような声量の持ち主だ。紅白に分かれての歌合戦だが、ゲストのパフォーマンスも多彩そのもの。日本ケニア親善大使のアニャンゴさん(日本人女性)と長野の子供たちがケニアのリズミカルなダンスミュージックと踊りを演じ喝采を浴びた。

私はこの歌合戦に第1回から審査委員として関わっている。ロシア人のジェーニャさんも第1回から欠かさず紅組の司会を務めている。NHKのロシア語教室の講師も務めるジェーニャさんは、電話でしゃべればロシア人女性だとわからないくらい日本語が流暢だ。声量豊かな歌い手でもある。彼女には日本人の夫のとの間に2歳半の娘がいる。インドネシア人のフェルナンデスさんも日本人女性と国際結婚で、妻子が応援に駆け付けた。日本社会に溶け込む外国人はすでにあちこちにいる。

日本ではすでに、グルーバル化が進展し、多文化、多民族のとの共生が急速に進んでいる。国際結婚は珍しいことではなくなった。それに伴い子供に二重国籍を認めてほしいという声も高まっている。ジェーニャさんもそう語っていた。そのスピードについていけなかったのが、政治とメディアではなかったか。安倍政権は外国人労働者受け入れに伴う「共生」のための総合的対応策も明らかにするという。安倍政権ならでは「政治主導の施策」に注目したい。

石原 進

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イベントカレンダー

6月
13
1:00 PM 第61回 外国人による日本語弁論大会 @ ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ(広島県福山市)
第61回 外国人による日本語弁論大会 @ ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ(広島県福山市)
6月 13 @ 1:00 PM
  第61回 外国人による日本語弁論大会 The 61st International Speech Contest in Japanese 世界の人々に日本語で意見を発表する場を提供することにより、日本や国際社会のあり方をお互いに考え合うことを目的としています。1960年より毎年開催されております。第61回大会は、広島県福山市で以下の要領で開催されます。 日時 2020年6月13日(土)午後1時開始 会場: ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ(広島県福山市) 応募受付期間: 2020年2月17日(月)から4月23日(木) 主催: 国際教育振興会、国際交流基金、福山市 後援: 外務省/文化庁/広島県/広島県教育委員会/福山市教育委員会/公益財団法人ひろしま国際センター/ふくやま国際交流協会/公益社団法人福山観光コンベンション協会/福山商工会議所/エフエムふくやま/ NHK / NHKエデュケーショナル/日本語教育学会 協賛: キッコーマン株式会社/専門学校新聞社/にほんこの凡人社/リコージャパン株式会社/株式会社スリーエーネットワーク/鞆鉄道株式会社/福山ニューキャッスルホテル/ツネイシホールディングス株式会社/株式会社エフピコ/アイデアル株式会社/学校法人 穴吹学園/外国人留学生を支援する会/一般財団法人義倉/学校法人教文学園 広島アカデミー/国際ソロプチミストローズ福山/有限会社ぬまくま夢工房/専門学校 福山国際外語学院/福山市日本中国友好協会/福山大学/福山元町通商店街振興組合/株式会社ブランパートナーズ/まごころ料理 ふな家 第61回実施要領、申込書などはこちら → ポスター → 実施要領 → 申込書(Word) → 申込書(PDF)
6月
27
12:30 PM 第29回 小出記念日本語教育研究会 @ 国際基督教大学
第29回 小出記念日本語教育研究会 @ 国際基督教大学
6月 27 @ 12:30 PM – 5:30 PM
第29回小出記念日本語教育研究会 ――開催のお知らせと発表の募集―― 小出記念日本語教育研究会を下記の通り開催いたします。今回も、口頭発表とポスター発表を募集いたします。募集要項をご覧の上、ふるってご応募ください。 さて、社会の変化に伴い、学習は教えられた知識をただ覚えることから、知識を社会と結びつけること、社会において実践すること、複雑化する社会の問いに対して、自分と他者との意見をまとめてよりよい答えを提案することへと変化しようとしています。また、このように急速に社会が変化する中で、グローバル化は進み、日本語教育も大きな変化の時期を迎えていると言えるでしょう。今後、日本社会の変化に伴いどのような変化の局面を迎えるかは計り知れません。複雑化する社会の問いに対して、新たな価値を生み出す人材が求められていると言えるのではないでしょうか。 このような変化の流れの中で、言語教育/学習はどう捉えなおされるべきか、学習者の主体的な学びを支えるために教師は何ができるか、また、学習を活性化する活動にはどのようなものがあり、それは言語学習にどう取り入れることができるか、新たな学びを評価するとはどういうことか。このような様々な問いを参加者の皆さんとともに考え、明日の現場につながる何かを持って帰ることができる機会を持つことができないだろうかと考えました。 そこで、今回は、学習科学の分野を牽引していらっしゃる白水始氏(東京大学)をお迎えし、ワークショップを含みご講演いただくこととなりました。学習理論をベースとし、協調活動やテクノロジーを利用し学びの質を上げようとする実践的教育学である学習科学の視点から、複雑な社会に立ち向かっていく学習者とその学びを支える教師に有益な示唆をいただけると期待しています。 多くの方々のご参加をお待ちしております。 2020年1月19日 第29回小出記念日本語教育研究会研究委員 世良時子・山岸宏明・高橋亘・中岡樹里 記 日時:2020年6月27日(土)12時30分より(会員総会は11時30分より) 場所:国際基督教大学(〒181-8585東京都三鷹市大沢3-10-2) 予定:11:30-11:45 会員総会 12:30-12:45 開会・プログラム説明 12:45-14:50  講演・ワークショップ「学習科学の視点から見た21世紀型スキルと言語学習-変化の時代における新しい学びと評価を支える」 講師:白水始氏(東京大学 高大接続研究開発センター 教授) 15:00-16:40 研究発表(口頭発表とポスター発表) 16:45-17:30  閉会・お茶の会 発表テーマ:日本語教育にかかわる研究(日本語学、異文化理解教育なども含む) ※オリジナリティのある未発表のものに限ります。 ※理論的な研究も実践報告もどちらも歓迎いたします。特に、日本語教育の現場における実践に基づいた研究の成果、および、現場と理論がどうつながるのかを問う内容を歓迎します。 発表形態:①口頭発表(発表20分、質疑応答10分) ②ポスター発表(A0判 84㎝×119㎝1枚以内の掲示および参加者との意見交換) 応募の資格: 応募の時点での会員資格は問いません。ただし、発表の採択決定後、発表年度(2020年度)の会費納入手続きが始まり次第、速やかに発表年度の会費を納入してください(会費納入状況によっては、発表取り下げとなる場合があります)。また、共同発表者の入会手続きは、筆頭発表者が責任をもって期日までに完了させてください。 ※年会費は支払いのあった年度のみ有効です。2020年3月末より前に納入された会費は2019年度分になりますので、ご注意ください。 応募方法:申込締切日までに研究発表申込フォームよりご提出ください。 https://bit.ly/2E5jNZt 何等かの理由により、オンラインフォームによる発表申し込みができない場合、下のURLからMicrosoft Word形式の「発表申し込みフォーム」をダウンロードし、必要事項をご記入の上、メールに添付し、下記の連絡先までお送りください。 https://bit.ly/36ojDsb 申込期間:2020年1月27日(月)~2020年2月23日(日) 締め切り日の2月23日(日)は、日本時間17時 必着 採否の通知:4月上旬までに審査の結果をメールでお知らせいたします。 連絡先: koide.happyo@gmail.com ※ご質問やお問い合わせもこちらへどうぞ。 注意:・応募の時点で未発表のものに限ります。他の学会・研究会の発表に応募している人が、同様の内容で本研究会の発表に応募すること(二重投稿)はできません。 ・いかなる理由があっても発表題目と内容の変更、発表者の増減は認められません。 その他:・採択の際に、研究委員より発表内容等に助言を与えることがあります。 ・採択の場合は、5月中旬までに予稿集の原稿をお送りいただくことになります。 ・研究会後、10月下旬までに論文集(2021年3月発行予定)掲載用要旨をご提出いただきます。 ・ご応募いただいたデータは、採否にかかわらず、1年間の保存期間のあとで責任をもって削除いたします。
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