政府が日本語学校に「マル適マーク」 日本語教師は登録制に 文化庁が有識者会議に検討事項を提示

政府が日本語学校に「マル適マーク」 日本語教師は登録制に 文化庁が有識者会議に検討事項を提示

外国人留学生が通う日本語学校に政府が「マル適マーク」を付与し、併せて日本語教師を登録制にする――文化庁はこんな提案を「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議」(西原鈴子座長)に行った。8月4日にオンラインで開かれた第3回の会議には「検討の方向性に関する事項」を提示した。

日本語教育の質の向上をめざす日本語教育推進法の施行(2019年6月)を受け、文化審議会国語部会が2020年3月に「日本語教師の資格制度の創設」を提言。その後、文化庁の「日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議」で議論を重ね、国家資格の「公認日本語教師」の試験や教育実習など制度の骨格や、「留学」「就労」「生活」の3分野における日本語教育機関の在り方を示した。

こうした取り組みに加え、「さらなる詳細な制度設計が必要だ」として文化庁が今回新たに設置したのが日本語教師の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議だ。5月31日に設置され、これまで2回会議を開いているが、この中で文化庁は日本語学校について、教育水準の維持向上を図るため「必要な適格性を有する一定の基準を満たす機関を国が認定する制度」を提案した。基準をクリアした日本語学校には政府が「マル適マーク」を付与し、それを生徒募集のPRなどにも活用できる新たな仕組みを作ろうというわけだ。

また、国家資格を有した日本語学校の教師については、「登録日本語教員」として登録する。これまで「公認日本語教師」とされていた国家資格の教師を「登録日本語教員」として位置づけることで、よりステータスを高める考えだ。

第3回会議ではこうした考えを核にした「検討の方向性に関する事項」(たたき台案)=以下のURL=が提示された。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/nihongo_kyoin/pdf/93747701_01.pdf

「マル適マーク」の付与に関する日本語学校の認定基準など、なお詰めるべき点は多々ある。登録日本語教員の資格試験などについても論点が残されている。しかし、日本語学校の認定制度や登録日本語教員の資格制度ができれば、これまで日本語教育に知見のない出入国在留管理庁の「管理下」に置かれていた日本語学校に対して、文部科学省の外局の文化庁も指導、監督する立場になる。日本語学校を取り巻く環境は大きく変化するわけだ。

こうした取り組みの目的は、いうまでもなく日本語教育の質の向上だ。また一部から批判のあった留学生の「出稼ぎの在り方」にも是正を迫るものでもある。それは日本語学校にとって、自らの教育への自浄作用を促すことになるはずだ。

文化庁は有識者会議の意見を踏まえ、日本語教育機関の制度改革につながる法案を作成。早ければ秋の臨時国会にも法案を提出したいという。

にほんごぷらっと編集部

にほんごぷらっと編集部にほんごぷらっと編集部

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の編集部チームが更新しています。

この著者の最新の記事

関連記事

コメントは利用できません。

イベントカレンダー

7月
12
終日 言語科学会 第26回年次国際大会(J... @ 愛媛大学 城北キャンパス
言語科学会 第26回年次国際大会(J... @ 愛媛大学 城北キャンパス
7月 12 – 7月 13 終日
言語科学会第 26 回年次国際大会(JSLS2025)開催・研究発表募集のご案内 言語科学会 (JSLS: The Japanese Society for Language Sciences) では以下の要領で、 第 26回年次国際大会 (JSLS2025) を開催いたします。 大会日程: 2025 年 7 月 12 日(土)~ 13 日(日) 開催場所: 愛媛大学 城北キャンパス(愛媛県松山市文京町 3) 大会ウェブサイト: http://www.jslsconference.jpn.org/jsls2025/ 基調講演: Jae DiBello Takeuchi 氏 (Indiana University Bloomington)
7月
20
10:00 AM 【!!追加募集!!】NPO法人日本... @ オンライン (オンライン上での集合研修 および 動画視聴による個人学習) ・「就労者の異文化適応」「教材研究」は対面(東京・大阪)で実施。 オンラインでの参加も選択可能。
【!!追加募集!!】NPO法人日本... @ オンライン (オンライン上での集合研修 および 動画視聴による個人学習) ・「就労者の異文化適応」「教材研究」は対面(東京・大阪)で実施。 オンラインでの参加も選択可能。
7月 20 2025 @ 10:00 AM – 2月 8 2026 @ 2:45 PM
【!!追加募集!!】NPO法人日本語教育研究所 主催文部科学省委託 令和7年度現職日本語教師研修プログラム普及事業 就労者に対する日本語教師【初任】研修 就労者に対する日本語教師養成 –日本語教育研究所の多様な研修実績及び人材を活かしたビジネス日本語教育/指導- ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ この研修は、これから新たに就労者に日本語を教えたいと考えている方を主な対象としています。スキルアップにぜひお役立てください。 再受講をご検討の方へ 本研修はこれまでに弊所の研修をご受講された方も、再度ご参加いただけます。 実際に現場に出て、もう一度確認したいことなども出てきているのではないでしょうか。 さらに実践的な指導力を高める良い機会となりますので、ぜひご検討ください。 ─────────────────── ■期間 2025年7月20日(日) ~ 2026年2月8日(日) *日程等の詳細は、募集要項のリンク先からご覧ください。 ■対象 日本語教育機関認定法に基づく「登録日本語教員」を対象としますが、本法の経過措置期間内(令和10年度まで)は、令和6年度までに下記を修了した方も対象とします。 1)日本語教師として下記のいずれかの要件を満たす方  ①大学/大学院で日本語教育に関する教育課程を修了し、大学/大学院を卒業/修了した方  ②大学/大学院で日本語教育に関する科目の単位を26単位以上修得し、大学/大学院を卒業/修了した方  ③公益財団法人日本国際教育支援協会「日本語教育能力検定試験」に合格した方  ④学士の学位を有し、日本語教師養成講座 420 単位時間以上を修了した方 2)原則として、就労者への日本語教育歴が0~3年未満の方 ■定員 100名 ■受講料 20,000円(税込) ※教材費込み ■申込方法 以下のリンクからお申し込みください。 https://forms.gle/JWtnJ6WzzCNQvQx88 ■申込締切 2025年6月30日(月)【募集期間延長しました!!】 ■募集要項 https://docs.google.com/document/d/1uHn1k6zdRIgcQ2-lK5Uyr1Qa5vlwzXCFvKEUw3UjJVU/edit?usp=sharing ■お問い合わせ NPO法人 日本語教育研究所(研修事務局) nikken.kenshu@gmail.com
8月
7
10:00 AM 令和7年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
令和7年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
8月 7 @ 10:00 AM – 8月 8 @ 4:30 PM
日本語学校教育研究大会では、各日本語教育機関における実践・事例の報告の機会として、発表の場を設けています。 意見・アイディア交換の場としてぜひご活用ください。 皆様からのご応募お待ちしております。
8月
26
10:06 AM 第11回日本語教育支援システム研究... @ 英キール大学(Keele University)
第11回日本語教育支援システム研究... @ 英キール大学(Keele University)
8月 26 @ 10:06 AM
第11回日本語教育支援システム研究会(CASTEL/J)国際大会 第11回日本語教育支援システム研究会(Computer Assisted Systems for Teaching and Learning Japanese – CASTEL/J)国際大会を英国中部スタッフォードシャー州にあるキール大学(Keele University)にて英国日本語教育学会(BATJ)・キール大学ランゲージ・センターとの共催で開催することとなりました。 日本語教育支援システム研究会国際大会は、日本語教育関係者、日本語教育のリーダーに日本語教育におけるテクノロジー使用の最先端の動き、将来の方向性を共有する機会を作ってきました。2020年のパンデミックにより授業のオンライン化・ハイブリッド化が進み、それに加えて、この数年の人工知能(AI)技術の急速な発展と普及により、日本語教育は元より私たちを取り巻くテクノロジー環境が大きく変化しています。これらの技術的発展を効果的に教育・学習に取り入れ促進していくことは今まで以上に重要となっています。世界中からこの分野の優れた研究者、実践者が集まるこの国際大会に是非ご参加ください。 日時:2025年8月26日(火)〜27日(水) 会場:英スタッフォードシャー州キール大学チャンセラーズ・ビルディング 共催:英国日本語教育学会(BATJ)、キール大学ランゲージ・センター

注目の記事

  1. 日本語議連が総選挙後初の総会 政府の日本語教育の取り組みを議論 日本語教育推進議員連盟(柴山昌…
  2. 「多文化ビジネス」に挑戦する株インバウンドジャパン 外国人向けの不動産事業で成功 在留外国人が…
  3. 認定日本語教育の法案を閣議決定、国会に提出 政府は2月21日、「認定日本語教育機関」と「登録日…

Facebook

ページ上部へ戻る
多言語 Translate