日本語議連に期待する(インタビューシリーズ1)

日本語議連に期待する(インタビューシリーズ1)
◎谷口吉弘・立命館大名誉教授(文部科学省の留学生関連の有識者会議の座長を数多く務める政府の留学生政策のキーマン)=聞き手・石原進

――日本語教育推進議員連盟の旗揚げをどう受け止めていますか。
谷口氏 人口減少社会、生産年齢人口も減っている中でグローバル化が進み、日本に在留する外国人が増加している。そこでコミュニケーション能力を高めるための日本語教育が極めて重要な課題になっている。これは国として、オールジャパンで取り組むべき課題である。その意味では日本語教育推進議員連盟ができたことは大きな意義がある。政治のリーダーシップを期待できるからだ。

――日本語教育の現状をどう見ますか。
谷口氏 国は大学の国際化としてどちらかと言えば、英語を重視している。留学生が英語で直接大学に入れる施策を打ち出している。日本語学習を必要としないことで、日本語学習や経済的な負担を軽減し、留学しやすいようにしている。そういうトレンドがあるが、圧倒的多数の留学生は日本語で授業を受け、勉強している。その中で日本語教育をどうしていくのか。国としては日本語学校の教育内容にまで目を向けていない。十分な取り組みができていない。日本語学校の教育の在り方、どういう留学生を受け入れるのか、ということが問われている。つまり日本語学校の質的な担保が大きな課題になっている。留学生を有能な高度人材に育成するためには、日本語学校という「入り口」が非常に重要だ。

――日本語学校へのアドバイスはありますか。
谷口氏 留学生が日本のビジネス社会で生きていくためのビジネス日本語の教育も大きな課題となっていている。それは大学が担うのか、というと必ずしもそうでなくて、やはり日本語学校に担ってもらわなければならない。日本語学校は日本留学の入り口だけでなく(就職という)出口でも重要な役割を担う。高度人材をできるだけ多く定着させることが、一億総活躍社会を作るうえでも重要になっている。そして、外国人が就職して定着するとその子供の日本語教育をどうしていくのかという事も課題になる。地方自治体か、NPOなのか、ボランティアなのか、そこもまだ整理されていない。
ダイバーシティ、多様な社会を作るために多様な人材を受け入れていかないと、将来、日本は成り立たなくなると認識しなければならない。その基本が日本語教育だろうと思う。

――日本語教育は海外でも重要ですね。
谷口氏 海外に日本語を発信していくことも当然必要だ。国際交流基金をはじめ多くの日本語学校が海外で日本語教育に携わっているが、それだけでは十分でない。アニメとか漫画に引き付けられて日本に来る留学生が少なくないが、日本語を文化の発信の重要なツールだと考えると、海外に目を向け、広く日本語教育を見直していくことは大事だと思う。

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6月
12
12:00 AM 留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
6月 12 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
6月
29
12:00 AM 留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
6月 29 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
7月
27
1:30 PM 凡人社日本語サロン研修会 『でき... @ 大阪会場TKP 大阪本町カンファレンスセンター
凡人社日本語サロン研修会 『でき... @ 大阪会場TKP 大阪本町カンファレンスセンター
7月 27 @ 1:30 PM – 4:00 PM
凡人社日本語サロン研修会 『できる日本語』ブラッシュアップ講座 ~課題に向き合い、仲間とともに,より良い実践をめざしませんか~   [日時・会場・定員] 全日:13:30~16:00(受付開始 13:00) ※各会場先着順、定員になり次第締め切ります     【日付】2024/7/27 (土) 【会場】大阪会場TKP 大阪本町カンファレンスセンター(大阪市中央区久太郎町3-5-19) 【定員】80名   【日付】2024/9/1 (日) 【会場】福岡会場博多バスターミナル(福岡市博多区博多中央街2) 【定員】60名   [対 象] 主に日本語学校の教師・関係者、日本語教育ボランティア、日本語教育に関心のある方   [参加費] 無料 ※要予約   [講 師] 嶋田 和子 先生(『できる日本語』監修) 他『できる日本語』著者の先生方   [内 容] 『できる日本語』の輪が広がり続け、「実践について学べる場がほしい」という声がたくさん寄せられています。 そこで、現在『できる日本語』を使っていらっしゃる方々に向けて、「ブラッシュアップ講座」を開くこととしました。 当日は、具体例を挙げながらより良い実践について考えていきます。 事前にお寄せいただいた質問の中から共通の課題を取り上げ、ご一緒に解決に向けて考えていきます。 また、すでにあちらこちらで【できる日本語ネットワーク】が生まれていますが、今回の対面講座で、さらに新たな輪が生まれることをめざします。   [お問い合わせ・お申込み] 主催:アルク・凡人社 お問い合わせ・申し込み先(担当:凡人社/坂井)   E-mail:ksakai@bonjinsha.co.jp   ※下記お申込みフォームかQRコードかメールにてお申し込みください。 メールでお申し込みの際はタイトルに「日本語サロン研修会(●/●)@●●」と入れて、本文にご氏名・ご所属・ご連絡先をご記入ください。 ※●/●部分は開催日時と場所をご記入ください。   お申込みフォーム→https://x.gd/3kYVu
8月
5
10:00 AM 令和6年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
令和6年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
8月 5 @ 10:00 AM – 8月 6 @ 4:30 PM
一般財団法人日本語教育振興協会では、日本語教育機関に勤務する教職員等のための「日本語学校教育研究大会」を実施しております。 今年度は2024年8月5日(月)・6日(火)に、5年ぶりの対面開催で行います。 大会では、各日本語教育機関における実践・事例の報告の機会として、発表の場を設けています。 意見・アイディア交換の場としてぜひご活用ください。 皆様からのご応募お待ちしております。 発表応募締切:2024年5月15日(水) 発表応募要項・申込方法: https://www.nisshinkyo.org/news/detail.php?id=3076&f=news ※プログラム内容・参加お申込み方法など、大会の詳細については、 随時 https://www.nisshinkyo.org にてご案内してまいりますので、ぜひご覧下さい。

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