日本語議連が外国人集住自治体からヒアリング――「日本語教育を国策に」

◎日本語議連が外国人集住自治体からヒアリング――「日本語教育を国策に」
次回は日本語学校のヒアリングを

日本語教育推進議員連盟(略称・日本語議連)は10日の第4回総会で静岡県と横浜、豊橋両市からヒアリングを行ったが、それぞれ外国人とのコミュニケーション手段として「やさしい日本語」を重視し、趣向を凝らした教育の実践例を報告した。先進的な取り組みの数々が披露されたが、各県市はさらに施策を充実させるため「国策としての日本語教育が必要だ」と訴えるなど、政府の日本語教育に対する体制整備を求めた。

静岡県は、多文化共生推進基本条例を制定するなど定住外国人支援に力を入れている。浜松市など南米出身の日系人が多く住む自治体を抱えているためで、同条例に基づき多文化共生推進計画を策定し、①外国人県民のコミュニケーション支援②外国人の子供の教育環境の整備③外国人の雇用・就労環境の整備――などに取り組んでいる。
横浜市は、港町の中華街に中国人が集住するなど古くから外国人が多く受け入れた国際都市として発展してきた。その中で地域の日本語教室の支援や小中学校の外国籍の児童生徒への日本語学習支援も進めている。また、多言語による広報を行う一方、外国人にもわかる「やさしい日本語」を行政用語への活用も進めている。
豊橋市は、25の市や町で構成する外国人集住都市会議の今年の座長都市。同会議では、外国人を多く抱える都市が情報を交換し、課題の解決や政府への提言を行うイベントを開いており、1月31日には自治体やNPO関係者など400人を集めて「外国人集住都市とよはし」を開催した。同会議は、外国人に関する施策を一元的に扱う「外国人庁」の設置を政府に求めている。
佐原光一豊橋市長は先の集住都市会議の議論を振り返り、「国策としての日本語教育が必要ということは、各首長さんから出た言葉」と述べたうえで、「日本語教育は自治体の問題ではなく、国の問題としてとらえていただきたい」と訴えた。

日本語議連の中川正春会長代行は「集住都市会議ができたのは16年前。その時には国は何をしてくれたんだ、国内の体制をつくらないまま、単純労働の出稼ぎ(外国人)を入れたと。それを四苦八苦しながら地方自治体に受け入れてもらって、工夫をしてやってきたという経緯があった。きょう話を聞いて、皆さんに頑張ってもらったなという思いがした」と感想を述べた。

日本語議連は、次回の総会では日本語学校の関係者のヒアリングを行う方針を明らかにした。また馳浩事務局長は、基本法のたたき台を作成するための衆院法制局と協議を行うとともに、議論を深めるため作業チームを設置する考えを示した。

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6月
12
12:00 AM 留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
6月 12 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
6月
29
12:00 AM 留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
6月 29 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
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1:30 PM 凡人社日本語サロン研修会 『でき... @ 大阪会場TKP 大阪本町カンファレンスセンター
凡人社日本語サロン研修会 『でき... @ 大阪会場TKP 大阪本町カンファレンスセンター
7月 27 @ 1:30 PM – 4:00 PM
凡人社日本語サロン研修会 『できる日本語』ブラッシュアップ講座 ~課題に向き合い、仲間とともに,より良い実践をめざしませんか~   [日時・会場・定員] 全日:13:30~16:00(受付開始 13:00) ※各会場先着順、定員になり次第締め切ります     【日付】2024/7/27 (土) 【会場】大阪会場TKP 大阪本町カンファレンスセンター(大阪市中央区久太郎町3-5-19) 【定員】80名   【日付】2024/9/1 (日) 【会場】福岡会場博多バスターミナル(福岡市博多区博多中央街2) 【定員】60名   [対 象] 主に日本語学校の教師・関係者、日本語教育ボランティア、日本語教育に関心のある方   [参加費] 無料 ※要予約   [講 師] 嶋田 和子 先生(『できる日本語』監修) 他『できる日本語』著者の先生方   [内 容] 『できる日本語』の輪が広がり続け、「実践について学べる場がほしい」という声がたくさん寄せられています。 そこで、現在『できる日本語』を使っていらっしゃる方々に向けて、「ブラッシュアップ講座」を開くこととしました。 当日は、具体例を挙げながらより良い実践について考えていきます。 事前にお寄せいただいた質問の中から共通の課題を取り上げ、ご一緒に解決に向けて考えていきます。 また、すでにあちらこちらで【できる日本語ネットワーク】が生まれていますが、今回の対面講座で、さらに新たな輪が生まれることをめざします。   [お問い合わせ・お申込み] 主催:アルク・凡人社 お問い合わせ・申し込み先(担当:凡人社/坂井)   E-mail:ksakai@bonjinsha.co.jp   ※下記お申込みフォームかQRコードかメールにてお申し込みください。 メールでお申し込みの際はタイトルに「日本語サロン研修会(●/●)@●●」と入れて、本文にご氏名・ご所属・ご連絡先をご記入ください。 ※●/●部分は開催日時と場所をご記入ください。   お申込みフォーム→https://x.gd/3kYVu
8月
5
10:00 AM 令和6年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
令和6年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
8月 5 @ 10:00 AM – 8月 6 @ 4:30 PM
一般財団法人日本語教育振興協会では、日本語教育機関に勤務する教職員等のための「日本語学校教育研究大会」を実施しております。 今年度は2024年8月5日(月)・6日(火)に、5年ぶりの対面開催で行います。 大会では、各日本語教育機関における実践・事例の報告の機会として、発表の場を設けています。 意見・アイディア交換の場としてぜひご活用ください。 皆様からのご応募お待ちしております。 発表応募締切:2024年5月15日(水) 発表応募要項・申込方法: https://www.nisshinkyo.org/news/detail.php?id=3076&f=news ※プログラム内容・参加お申込み方法など、大会の詳細については、 随時 https://www.nisshinkyo.org にてご案内してまいりますので、ぜひご覧下さい。

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