日本語教育は「国の責任で」 推進基本法案の原案を提示 日本語議連の総会で

日本語教育は「国の責任で」 推進基本法案の原案を提示 日本語議連の総会で


[第10回総会であいさつをする河村健夫会長]

超党派の日本語教育推進議員連盟(河村建夫会長、略称・日本語議連)は5月29日午前、参院議員会館で第10回総会を開き、日本語教育推進基本法(仮称)の政策要綱を了承した。日本語議連は各党の了承を得たうえで条文化作業を行い、早ければ秋の臨時国会に提案する意向だ。要綱では、日本語教育を「喫緊の課題」だとし、推進政策の策定、実施を国と地方自治体の「責務」として位置づけている。外国人が急増する中、基本法が成立すれば国と地方自治体の責任において日本語教育の推進事業が行われることなる。

要綱は、「総則」「基本方針等」「基本的施策」「日本語教育推進協議会等」「その他」の5つの章で構成。総則の基本理念では、国籍、年齢を問わず「希望する全てのもの」に日本語教育を受ける機会が確保されなければならないとし、その推進にあたっては、関係省庁が有機的に連携し、総合的に行われなければならないと明示した。

国の責務については、「国は、基本理念にのっとり、日本語教育の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有すること」と記述。また、地方自治体についても、地方の状況に応じた施策を実施するよう「責務」を課した。そのうえで施策を推進するための基本方針を、政府に対しては「定めなければならない」とし、地方自治体には策定の努力を促した。


[日本語教育推進基本法(仮称)政策要綱について説明をする衆議院法制局の津田樹見宗課長]

基本的施策の中には、外国人の児童生徒、留学生、就労者・技能実習生、難民に対する日本語教育について「必要な施策を講ずる」よう国に求め、地域の日本語教室などの支援や共生社会の実現に資するよう日本語教育への国民の理解を深めることも求めた。日本語指導が必要な外国人児童は3万4000人にのぼり、地域によっては学校現場で大きな課題となっており、その対策が急がれる。

一方、海外における日本語教育の普及促進については、現地における日本語教育の体制・地盤の整備の支援、日本語教育人材の育成、教材の開発、提供(インターネットを通じたものを含む)などの「必要な措置を講じるよう努める」-―ことなどを記した。

また、日本語教育の質の保証については、先の文化審議会国語分科会の提言を受けて文化庁が日本語教師の養成・研修の在り方に関する指針を改定したが、要綱では日本語教師の「待遇の改善」や「資格」についても「必要な施策を講ずるものとする」とした。

さらに「国の責務」を遂行するのにあたり、政府内で関係府省の調整を図るため「日本語教育推進協議会」と、協議会に意見具申する、有識者による「日本語教育推進専門家会議」の設置を求めている。これからの機関は施策を具体的に進めるための重要な役割を果たすことになる。

留学生の日本語教育の最前線にある日本語学校の「制度の整備」について、要綱には「検討を加え、教育の水準の向上を図るため、必要な施策を講じるものとする」と検討条項として盛り込んだ。日本語学校は専門学校、各種学校、株式会社など形態が多様であるほか、業界団体が複数あるなど、日本語議連はその在り方を基本法に直接規定するのは難しいと判断したようだ。国は日本語学校に関する制度上の課題などを精査し、学校現場の関係者から事情を聞くなどして対策を検討するものとみられる。

総会では、要綱の内容を支持し、法案の早期成立を求める意見が相次いだ。要綱の今後の扱いは河村会長に一任され、日本語議連としては各党の了解を得たうえで、衆院法制局の協力を得ながら条文化に着手。条文化作業には1か月余りかかるとみられる。このため基本法案は早ければ秋の臨時国会、場合によっては来年の通常国会での成立が見込まれる。

総会の閉会にあたり河村会長は「今回は大方針をたて、日本語教育は国が責任を持つようになる。外国人を受け入れる企業、地方自治体も国の方針に従って教育を進める形をとることが基本になっている。それを中心になって進める省庁がどこであるかも明確にしていかなければならないと思っている。まだまだ詰めなければならない点もあると思う。日本語を教える先生の質とか、いろいろ問われてくる。そうしたことに対しても国が責任を持つということがこの議員立法の趣旨だ」と述べた。

日本語議連の総会で了承された「日本語教育推進基本法案(仮称)政策要綱」の全文は以下の通り。
日本語教育推進基本法案(仮称)政策要綱 [PDF表示]

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12:00 AM 留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
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日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
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12:00 AM 留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
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本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
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凡人社日本語サロン研修会 『でき... @ 大阪会場TKP 大阪本町カンファレンスセンター
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令和6年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
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一般財団法人日本語教育振興協会では、日本語教育機関に勤務する教職員等のための「日本語学校教育研究大会」を実施しております。 今年度は2024年8月5日(月)・6日(火)に、5年ぶりの対面開催で行います。 大会では、各日本語教育機関における実践・事例の報告の機会として、発表の場を設けています。 意見・アイディア交換の場としてぜひご活用ください。 皆様からのご応募お待ちしております。 発表応募締切:2024年5月15日(水) 発表応募要項・申込方法: https://www.nisshinkyo.org/news/detail.php?id=3076&f=news ※プログラム内容・参加お申込み方法など、大会の詳細については、 随時 https://www.nisshinkyo.org にてご案内してまいりますので、ぜひご覧下さい。

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