ろう教育と「やさしい日本語」――学会の研究テーマにも
- 2018/8/22
- 時代のことば
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ろう教育と「やさしい日本語」――学会の研究テーマにも
外国人のための「日本語教育」と、ろう者のための「ろう教育」。あまり関係ないように見えるが、実は極めて深い関連がある。キーワードは「第2言語習得」である。これは外国人への日本語教育と極めて関連している研究領域であり、母語・継承語・バイリンガル教育学会(MHB学会)が8月8、9の両日に開催した大会テーマ「新時代のマルチリンガル教育を考える〜バイモーダルろう教育からの示唆〜」でも初めて取り上げられた。
ろう者の母語は「手話」であり、手話は日本語とは別な、完全な体系をもった言語である。ろうの子供は手話で思考力を獲得し、その後第二言語として「日本語」を学ぶ。いわば「手話」と「日本語」のバイリンガル教育がろう教育の重要なテーマとなっている。
ろう者と外国人は、日本語を学ぶ上で、間違うポイントがとても似ている。第2言語なのでしかたがないことである。しかし聞こえる日本人はろう者の日本語の間違いをバカにしたり、すぐに直したりして、ろう者を不愉快にさせることがよくある。実際は日本人が英語を間違うのと同じようなことであるにも関わらず。
日本で手話を法律上「言語」だと認めたのは、2011年8月5日に交付された改正障害者基本法が最初とされる。ほとんどの聞こえる日本人は、ろう者にとっての手話や日本語について知らず、ろう者の日本語の間違いに寛容な気持ちがない。
ここに問題を提起しているのが「やさしい日本語」関係者である。2018年3月17-18日に行われたやさしい日本語シンポジウムでは、一橋大学庵功雄教授ほか研究者が、日本語を母語としないものへの配慮としての「やさしい日本語」について指摘している。
筆者も、「やさしい日本語」の活動を通じて、ろう教育に深く関心をもち、MHB学会でも発表をし、関連するFacebookページも立ち上げた。その中で、「聞こえる日本人へのメッセージ」と「日本語習得に悩むろう者へのメッセージ」をプレゼンスライド形式で公開している。この2つは、同じテーマの表裏の関係になっている。ぜひご覧いただきたい。
1)聞こえる日本人向けのメッセージ
2)ろう者向けメッセージ
吉開 章