政府の規制改革会議が「就労のための日本語教育」の意見書——日本学校はふさわしくない?

政府の規制改革会議が「就労のための日本語教育」の意見書——日本学校はふさわしくない?

政府の規制改革会議(議長・大田弘子政策研究大学院大学特別教授)が4月22日、外国人労働者の受け入れ拡大に対応するため、就労のための日本語教育の指針を政府に求める意見書をまとめた。意見書は、外国人が就労・生活する地域における日本語教育の枠組みの整備を求めており、各地の日本語教室などの水準のアップにつながりそうだ。

改正入管法が4月に施行され、新たな在留資格として「特定技能」が設置されたのに伴い、規制改革会議は「外国人労働者が、その能力を最大限に発揮するためには、就労の場で上司や同僚と不自由なくコミュケーションできるレベルの日本語能力が必要である」と考え、意見書を作成した。

意見書では、①就労者のための日本語教育の誤解解消②地方自治体主導による教育環境の整備③教育に関わる人材(担い手)の確保④教育内容の質の確保――の4点について、それぞれ問題点と改革の方向性を示した。

このうち「地方自治体主導による教育環境の整備」に関しては、主要な自治体が設置する「多文化共生総合ワンストップセンター」に日本語教育機能を設けることや、就労外国人への日本語教育を含む手厚い受け入れ支援を行っている企業を評価する仕組みを創設すべきだとしている。

また、「教育に関わる人材の確保」については、標準プログラムの策定や定年退職者などを教育者として育成することを提案。「教育内容の質の確保」については、就労におけるコミュニケーション能力を定義し評価する仕組みの必要性を指摘した。

 

ただ、「就労者のための日本語教育に対する誤解解消」に関する問題点の指摘については内容を疑問視する声が出ている。「現在の日本語学校は、留学生を高等教育機関へ入学させることを主な目的としており、就労目的の日本語教育を担う組織として必ずしも相応しくない」と述べているが、現実は留学生にビジネス日本語を教え、卒業後に日本企業の就職を促す学校も少なくない。日本語学校が就労者のための日本語教育機関として「相応しくない」と言うのであれば、どのような教育機関が教育できるというのか。今後、作成される指針の中にこうした指摘を盛り込めば、日本語学校関係者からは批判の声が上がるとみられる。

にほんごぷらっと編集部

にほんごぷらっと編集部にほんごぷらっと編集部

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の編集部チームが更新しています。

この著者の最新の記事

関連記事

コメントは利用できません。

イベントカレンダー

7月
12
終日 言語科学会 第26回年次国際大会(J... @ 愛媛大学 城北キャンパス
言語科学会 第26回年次国際大会(J... @ 愛媛大学 城北キャンパス
7月 12 – 7月 13 終日
言語科学会第 26 回年次国際大会(JSLS2025)開催・研究発表募集のご案内 言語科学会 (JSLS: The Japanese Society for Language Sciences) では以下の要領で、 第 26回年次国際大会 (JSLS2025) を開催いたします。 大会日程: 2025 年 7 月 12 日(土)~ 13 日(日) 開催場所: 愛媛大学 城北キャンパス(愛媛県松山市文京町 3) 大会ウェブサイト: http://www.jslsconference.jpn.org/jsls2025/ 基調講演: Jae DiBello Takeuchi 氏 (Indiana University Bloomington)
7月
20
10:00 AM 【!!追加募集!!】NPO法人日本... @ オンライン (オンライン上での集合研修 および 動画視聴による個人学習) ・「就労者の異文化適応」「教材研究」は対面(東京・大阪)で実施。 オンラインでの参加も選択可能。
【!!追加募集!!】NPO法人日本... @ オンライン (オンライン上での集合研修 および 動画視聴による個人学習) ・「就労者の異文化適応」「教材研究」は対面(東京・大阪)で実施。 オンラインでの参加も選択可能。
7月 20 2025 @ 10:00 AM – 2月 8 2026 @ 2:45 PM
【!!追加募集!!】NPO法人日本語教育研究所 主催文部科学省委託 令和7年度現職日本語教師研修プログラム普及事業 就労者に対する日本語教師【初任】研修 就労者に対する日本語教師養成 –日本語教育研究所の多様な研修実績及び人材を活かしたビジネス日本語教育/指導- ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ この研修は、これから新たに就労者に日本語を教えたいと考えている方を主な対象としています。スキルアップにぜひお役立てください。 再受講をご検討の方へ 本研修はこれまでに弊所の研修をご受講された方も、再度ご参加いただけます。 実際に現場に出て、もう一度確認したいことなども出てきているのではないでしょうか。 さらに実践的な指導力を高める良い機会となりますので、ぜひご検討ください。 ─────────────────── ■期間 2025年7月20日(日) ~ 2026年2月8日(日) *日程等の詳細は、募集要項のリンク先からご覧ください。 ■対象 日本語教育機関認定法に基づく「登録日本語教員」を対象としますが、本法の経過措置期間内(令和10年度まで)は、令和6年度までに下記を修了した方も対象とします。 1)日本語教師として下記のいずれかの要件を満たす方  ①大学/大学院で日本語教育に関する教育課程を修了し、大学/大学院を卒業/修了した方  ②大学/大学院で日本語教育に関する科目の単位を26単位以上修得し、大学/大学院を卒業/修了した方  ③公益財団法人日本国際教育支援協会「日本語教育能力検定試験」に合格した方  ④学士の学位を有し、日本語教師養成講座 420 単位時間以上を修了した方 2)原則として、就労者への日本語教育歴が0~3年未満の方 ■定員 100名 ■受講料 20,000円(税込) ※教材費込み ■申込方法 以下のリンクからお申し込みください。 https://forms.gle/JWtnJ6WzzCNQvQx88 ■申込締切 2025年6月30日(月)【募集期間延長しました!!】 ■募集要項 https://docs.google.com/document/d/1uHn1k6zdRIgcQ2-lK5Uyr1Qa5vlwzXCFvKEUw3UjJVU/edit?usp=sharing ■お問い合わせ NPO法人 日本語教育研究所(研修事務局) nikken.kenshu@gmail.com
8月
7
10:00 AM 令和7年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
令和7年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
8月 7 @ 10:00 AM – 8月 8 @ 4:30 PM
日本語学校教育研究大会では、各日本語教育機関における実践・事例の報告の機会として、発表の場を設けています。 意見・アイディア交換の場としてぜひご活用ください。 皆様からのご応募お待ちしております。
8月
26
10:06 AM 第11回日本語教育支援システム研究... @ 英キール大学(Keele University)
第11回日本語教育支援システム研究... @ 英キール大学(Keele University)
8月 26 @ 10:06 AM
第11回日本語教育支援システム研究会(CASTEL/J)国際大会 第11回日本語教育支援システム研究会(Computer Assisted Systems for Teaching and Learning Japanese – CASTEL/J)国際大会を英国中部スタッフォードシャー州にあるキール大学(Keele University)にて英国日本語教育学会(BATJ)・キール大学ランゲージ・センターとの共催で開催することとなりました。 日本語教育支援システム研究会国際大会は、日本語教育関係者、日本語教育のリーダーに日本語教育におけるテクノロジー使用の最先端の動き、将来の方向性を共有する機会を作ってきました。2020年のパンデミックにより授業のオンライン化・ハイブリッド化が進み、それに加えて、この数年の人工知能(AI)技術の急速な発展と普及により、日本語教育は元より私たちを取り巻くテクノロジー環境が大きく変化しています。これらの技術的発展を効果的に教育・学習に取り入れ促進していくことは今まで以上に重要となっています。世界中からこの分野の優れた研究者、実践者が集まるこの国際大会に是非ご参加ください。 日時:2025年8月26日(火)〜27日(水) 会場:英スタッフォードシャー州キール大学チャンセラーズ・ビルディング 共催:英国日本語教育学会(BATJ)、キール大学ランゲージ・センター

注目の記事

  1. 労災防止に「やさしい日本語」を 日本語議連の里見事務局長が国会で議論 日本語教育推進議員連盟事…
  2. 移民政策の先駆者・故坂中英徳さんを偲んで 第二話 日本型移民政策の提言(下) 元…
  3. 日本語議連が総選挙後初の総会 政府の日本語教育の取り組みを議論 日本語教育推進議員連盟(柴山昌…

Facebook

ページ上部へ戻る
多言語 Translate