報告概要案を修正 公認日本語教師養成機関の議論も 第7回日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議

報告概要案を修正 公認日本語教師養成機関の議論も 第7回日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議

文化庁は6月29日、第7回日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議(西原鈴子座長)を開催した。これまでの同会議では、日本語教育機関について「留学」「就労」「生活」の3類型の在り方と公認日本語教師との「関係性」を中心に議論をし、報告概要案も提示された。今回は報告概要案の修正案が示され、「指定日本語教師養成機関」などについての議論も行われた。議論は大詰めを迎え、文化庁は7月中に協力者会議を2度開催し、最終的な報告書案をまとめる方針だ。

この日の第7回会議で示された報告概要案の修正案は、前回の会議で出された様々な意見を踏まえて文化庁が加筆、修正を加えたもの。これまで議論が十分でなかった教育実習や日本語教師の養成機関、類型化の「生活」分野の在り方については個別に意見を聞いた。さらに詰める点はあるものの、最終報告書案の作成に向けて議論が急ピッチで進んでいる。

報告概要案の修正案には、委員側から出された意見や提言を踏まえ赤字で加筆などが施された。表題の修正も行われ、「日本語教育の推進のための仕組みについて~日本語教師の資格及び日本語教育機関評価制度~」とされた。以下はその全文だ。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/nihongo_kyoin/pdf/93186901_05.pdf

報告概要案は、冒頭の「はじめに」で目的などを示し、「日本語教師の資格」と「日本語教育機関の水準の維持向上を図るための仕組み」について記述した。「はじめ」では日本語教育推進の目的に関して「大きな方向性を提示し、その実現を通じて日本語教育の質の更なる向上を目指すものである」と述べる一方で、「今後、この方向性に基づき、制度の詳細を検討するにあたっては、制度に関わる関係者の意見を聞きながら検討して行くことが必要だと考えています」と加筆した。

日本語教育推進法によって法的な枠組みができたが、その重要な施策の一つである日本語教師の国家資格の創設に向けて取り組を始めたところ、様々な課題や問題が表面化した。調査研究協力者会議の議論がそうした状況を如実に物語っている。

大きな理由は、政府がこれまでの教育行政の中で日本語教育を「教育」として認めてこなかったこと起因する、との指摘がある。日本語教育機関を「留学」「就労」「生活」の3分野に便宜的に分類したが、そこには小中高校での「勉学」という類型は存在しない。現状では、法的には日本語教育機関、日本語教育と学校教育とは相いれないわけだ。

「日本語教師の資格」については、「資格取得要件」が新たに加えられた。日本語教師にとっては関心の高い分野だ。そこには「公認日本語教師の資格の全体像は別紙1の通りとする」とある。別紙1は報告概要案に添付されているが、公認日本語教師は、原則的には文部科学省の「指定試験実施機関」による筆記試験に合格し、教育実習を修了することで正式に登録される。ただし、大学や専門学校などの日本語教師養成コースを修了して日本語教師の資格を持つ者(日本語教育機関の法務省告示規準の要件を満たす日本語教師など)に関しては筆記試験の一部と教育実習は免除するとしている。

このため従来の日本語教師を養成する大学や専門学校などは「指定日本語教師養成機関」として公的に認定されることになり、審査項目などの大きく変化することはないと見られる。その案は以下のような内容だ。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/nihongo_kyoin/pdf/93186901_03.pdf

 

「日本語教育機関の水準の維持向上を図るための仕組み」では、類型としての「留学」「就労」「生活」の全体像を示した。日本語教育推進法は国だけでなく地方自治体にも日本語教育の推進を「責務」としており、自治体に関わりのある「生活」の類型について、その評価案などをより細かく紹介した。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/nihongo_kyoin/pdf/93186901_02.pdf

「生活」に類型化される日本語教育機関は、規模や活動内容も地域によって様々だ。都道府県がまとめる基本方針や計画に基づきそれぞれの地域の日本語教室などの日本語教育機関の評価項目も列挙している。今回示された「生活」としての取り組みは、地域の活動の目安になるものとみられる。

さらに文化庁は「地域における日本語教育の現状」と題した資料を提出した。文化庁国語課が所掌する「生活者のための日本語教育」の範囲のデータだ。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/nihongo_kyoin/pdf/93186901_01.pdf

日本語学習者の推移をはじめ日本語教師の状況、愛知県や兵庫県国際交流協会の取り組みなど多岐にわたる情報を集積した。しかし、会議で委員側からの指摘が出たように今後、様々な施策を進めるうえでは「留学」「就労」も含めた日本語教育全体の基礎的なデータが不可欠だ。これは政府全体で取り組む必要がある。政府は「外国人材受入れ・共生のための総合的対応策」で「日本語教育の充実」を強調しているが、実効ある施策を構築し、実施するのはこれからだ。日本語教師の国家資格の創設はその第一歩となる貴重な施策だ。

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第11回日本語教育支援システム研究... @ 英キール大学(Keele University)
8月 26 @ 10:06 AM
第11回日本語教育支援システム研究会(CASTEL/J)国際大会 第11回日本語教育支援システム研究会(Computer Assisted Systems for Teaching and Learning Japanese – CASTEL/J)国際大会を英国中部スタッフォードシャー州にあるキール大学(Keele University)にて英国日本語教育学会(BATJ)・キール大学ランゲージ・センターとの共催で開催することとなりました。 日本語教育支援システム研究会国際大会は、日本語教育関係者、日本語教育のリーダーに日本語教育におけるテクノロジー使用の最先端の動き、将来の方向性を共有する機会を作ってきました。2020年のパンデミックにより授業のオンライン化・ハイブリッド化が進み、それに加えて、この数年の人工知能(AI)技術の急速な発展と普及により、日本語教育は元より私たちを取り巻くテクノロジー環境が大きく変化しています。これらの技術的発展を効果的に教育・学習に取り入れ促進していくことは今まで以上に重要となっています。世界中からこの分野の優れた研究者、実践者が集まるこの国際大会に是非ご参加ください。 日時:2025年8月26日(火)〜27日(水) 会場:英スタッフォードシャー州キール大学チャンセラーズ・ビルディング 共催:英国日本語教育学会(BATJ)、キール大学ランゲージ・センター

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