「プーチンの戦争」の罪と在日ウクライナ人、ロシア人ユーチューバーの想い

「プーチンの戦争」の罪と在日ウクライナ人、ロシア人ユーチューバーの想い

「プーチンの戦争」が始まってまもなく3カ月になる。ロシア軍の爆撃や戦闘でウクライナの都市の建物は残骸と化し、多くの命が奪われている。戦闘は長期化すると見られる。欧米の映像があらわにするロシア軍の蛮行をプーチン政権は「フェイクだ」と言い、正義も大義もない武力攻撃を正当化する。そうした中で在日のウクライナ人やロシア人のユーチューバーが複雑な想いを流ちょうな日本語で発信する。日本社会ではウクライナ人支援の動きが活発化しているが、在日ロシア人の声にも耳を傾けてほしい。

恫喝と脅迫。言うことを聞かないと腕力に訴える。ロシアのプーチン政権がやっていることは、とても大国のふるまいとは思えない。街のゴロツキ、チンピラのような下劣な手口だ。特に核攻撃をチラつかせ、威嚇するのは被爆国として看過できない。加えてロシアは表現、言論の自由を暴力で封殺している。ロシアで反戦デモは犯罪行為とみなされる。

ロシアは、NATOの拡大は約束違反だと言うが、隣国への武力侵攻は国際社会の批判を受けるのは当然だ。今回、独裁国家と民主主義国家との違いも鮮明になった。北朝鮮の金正恩、中国の習近平はプーチンの兄弟分だ。日本の隣には、とりわけ付き合いが難しい「3兄弟」がいるわけだ。

とはいえ、国家と国民を同一視すべきではないとも思う。2月24日のロシアのウクライナ侵攻以来、様々な動画が「You Tube」にあふれているが、プーチンを日本語で批判するロシア人のYou Tubeもいくつかある。在日ロシア人は、祖国の戦争に腹を立て、東京の目抜き通りで反戦デモを展開しているのだ。このようなロシア人とは連携、協力ができる。

クライナ侵攻関連の外国人のYou Tubeの中で、ひときわ目を引いたのは侵略戦争に巻き込まれたウクライナ人ユーチューバーのハンナさんの「Hanna in Japan」だ。彼女のYou Tubeから祖国の悲惨な状況に心を痛めているのがよくわかる。上手な日本語による訴えは日本を引き付けるのだろう。アクセスが30万を超える人気動画となっている。

ウクライナは2014年にロシアに武力で侵略され、当時19歳だったハンナさんは一時大学に行けなくなった。その後、家族を残して日本に移住したが、今回、再び侵略戦争に巻き込まれ、家族は離れ離れになった。ハンナさんは日本で英語教師になったが、ウクライナの避難民が日本に来るようになって、避難民をサポートする日本人にボランティアでウクライナ語を教えたいと考えている。「日本の皆様に心からのお願いがあります」と題した動画では、ウクライナ語教室の施設の提供などの支援を呼び掛けた。

Hanna in Japan

https://www.youtube.com/watch?v=tDaVJDRFAi8

祖国のウクライナ侵攻を真っ向から批判するのはロシア人のラナさんだ。ロシアの両親はプーチンの戦争を支持しており、親子の意見は対立している。親とは断絶状態だという。在日ロシア人はウクライナ侵攻に抗議するデモを行うなど活発な活動も展開している。ラナさんは日本語で自身の複雑な心情を語るのだ。

Lanaの晩酌【無職のロシア人】

https://www.youtube.com/watch?v=E93BrF9KT3s&t=0s

ロシア出身で昨年、日本に帰化したリサさん。リサさんは動画で帰化した理由を5つ挙げた。「日本に興味と愛があった」「日本は自然を大切にし、サービス精神もあって住みやすい」「日本人の価値観が自分に近い」「おばあさんとお母さんから海外に行くように勧められた」「日本国籍がないとビザの更新が必要で期限が近付くとストレスがあった」……。

リサの世界

https://www.youtube.com/watch?v=NYB-vwzzhXI

ロシア国籍のあしやさんとサーシャさんは、ともにタタール人(民族)。ロシアは多民族国家でタタール民族は、ロシア民族に次いで人口が多い。2人は「いまの時代に戦争なんて考えられない。ショックだ」といい、「自分の国は正しくないことをやっている」と反戦デモにも参加。2人は反戦デモに参加して知り合い、交流を始めたという。

あしやさんとサーシャさん タタール人

https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=6fyn6hoGrwA

日本語で多様な考えや視点を提供してくれる外国人ユーチューバー。「プーチンの戦争」をきっかけに動画の世界に政治色をにじませた様々な主張が展開される。そこには、SNSを通じた、もう一つの多文化共生社会がある。

にほんごぷらっと編集長 石原 進

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6月
12
12:00 AM 留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
6月 12 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
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29
12:00 AM 留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
6月 29 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
7月
27
1:30 PM 凡人社日本語サロン研修会 『でき... @ 大阪会場TKP 大阪本町カンファレンスセンター
凡人社日本語サロン研修会 『でき... @ 大阪会場TKP 大阪本町カンファレンスセンター
7月 27 @ 1:30 PM – 4:00 PM
凡人社日本語サロン研修会 『できる日本語』ブラッシュアップ講座 ~課題に向き合い、仲間とともに,より良い実践をめざしませんか~   [日時・会場・定員] 全日:13:30~16:00(受付開始 13:00) ※各会場先着順、定員になり次第締め切ります     【日付】2024/7/27 (土) 【会場】大阪会場TKP 大阪本町カンファレンスセンター(大阪市中央区久太郎町3-5-19) 【定員】80名   【日付】2024/9/1 (日) 【会場】福岡会場博多バスターミナル(福岡市博多区博多中央街2) 【定員】60名   [対 象] 主に日本語学校の教師・関係者、日本語教育ボランティア、日本語教育に関心のある方   [参加費] 無料 ※要予約   [講 師] 嶋田 和子 先生(『できる日本語』監修) 他『できる日本語』著者の先生方   [内 容] 『できる日本語』の輪が広がり続け、「実践について学べる場がほしい」という声がたくさん寄せられています。 そこで、現在『できる日本語』を使っていらっしゃる方々に向けて、「ブラッシュアップ講座」を開くこととしました。 当日は、具体例を挙げながらより良い実践について考えていきます。 事前にお寄せいただいた質問の中から共通の課題を取り上げ、ご一緒に解決に向けて考えていきます。 また、すでにあちらこちらで【できる日本語ネットワーク】が生まれていますが、今回の対面講座で、さらに新たな輪が生まれることをめざします。   [お問い合わせ・お申込み] 主催:アルク・凡人社 お問い合わせ・申し込み先(担当:凡人社/坂井)   E-mail:ksakai@bonjinsha.co.jp   ※下記お申込みフォームかQRコードかメールにてお申し込みください。 メールでお申し込みの際はタイトルに「日本語サロン研修会(●/●)@●●」と入れて、本文にご氏名・ご所属・ご連絡先をご記入ください。 ※●/●部分は開催日時と場所をご記入ください。   お申込みフォーム→https://x.gd/3kYVu
8月
5
10:00 AM 令和6年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
令和6年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
8月 5 @ 10:00 AM – 8月 6 @ 4:30 PM
一般財団法人日本語教育振興協会では、日本語教育機関に勤務する教職員等のための「日本語学校教育研究大会」を実施しております。 今年度は2024年8月5日(月)・6日(火)に、5年ぶりの対面開催で行います。 大会では、各日本語教育機関における実践・事例の報告の機会として、発表の場を設けています。 意見・アイディア交換の場としてぜひご活用ください。 皆様からのご応募お待ちしております。 発表応募締切:2024年5月15日(水) 発表応募要項・申込方法: https://www.nisshinkyo.org/news/detail.php?id=3076&f=news ※プログラム内容・参加お申込み方法など、大会の詳細については、 随時 https://www.nisshinkyo.org にてご案内してまいりますので、ぜひご覧下さい。

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