ガイタネットが出入国在留管理庁と意見交換 「外国人住民への子育て白書」を発表

ガイタネットが出入国在留管理庁と意見交換 「外国人住民への子育て白書」を発表

愛知、三重、岐阜の東海3県の外国人支援団体でつくる外国人支援・多文化共生ネット(略称・がいたネット、坂本久海子代表=NPO法人愛伝舎代表理事)が12月16日、東京・四谷の外国人在留支援センターで出入国在留管理庁幹部と意見交換会を開いた。この席でがいたネットは調査・研究の成果をまとめた「外国人住民への子育て白書」を発表した。来春、発足する「こども家庭庁」の取り組みにも貴重な参考資料となりそうだ。

がいたネットは2019年7月、名古屋出入国在留管理局の藤原浩昭局長(当時)の呼びかけで発足。前年の入管法改正で外国人支援を含む「在留管理」が新たな業務として加わり、政府は「外国人支援団体のネットワーク化」を「総合的対応策」に盛り込んだ。名古屋入管局は全国の入管局に先駆けてこの事業に取り組んだわけだ。

こうした経緯からがいたネットは名古屋入管局との意見交換会をすでに開いているが、東京の出入国在留管理庁での交流は初めて。この日の意見交換会には同庁から外国人在留支援センター長を兼務する渡邊浩司・在留支援課長ら、名古屋入管局からは植田敏博首席審査官らが出席した。ガイタネットからは11団体の代表ら約20人は参加した。

がいたネットはトヨタ財団の助成を受けて名古屋市の2区と愛知県豊橋市、三重県鈴鹿市、岐阜県可児市など13市14地域の自治体へのアンケートや外国人住民への聞き取り調査の結果などを「外国人住民への子育て支援白書」としてまとめた。

外国人の受入れ拡大に伴い、日本で生まれる外国人の子供が増えている。このためがいたネットは外国人の妊娠から就学前の子育て環境に焦点を当て、「白書」では自治体の支援が外国人保護者などにどのように活用されているかを重点的に調査・分析した。調査はがいたネットの参加団体がそれぞれ活動地域で行い、東洋大学の内田千春教授が研究者の立場からデータの分析や白書のとりまとめを指導した。

意見交換会では内田教授が「白書」の内容を説明した。その中で自治体の対応は地域によって様々だったことがわかった。具体的には母子手帳の交付率では「日本人と同程度」が9地域を占めたが、妊婦検診の受診率では「日本人と同程度」が5地域、「日本人よりも少ない」が2地域、「日本人よりずっと少ない」が1地域、「わからない」が4地域だった。「母親学級両親学級等への参加率」では「日本人よりずっと少ない」が8地域、「日本人と同程度」はゼロだった。

また、聞き取り調査に協力してくれた外国人住民はで、14地域の計69人で、国籍別ではブラジル27人、フィリピン15人、ペルー7人、中国5人、ネパール4人、ベトナム3人など。聞き取りの結果から、子育て広場などの支援施設の利用に関しての自治体からの情報活用は少なく、「白書」は言葉や文化の違いは子育ての大変さを増幅させているようだと分析している。

所要のためオンラインで参加した坂本代表は、「この規模の調査、分析は初めてのことだと思います。外国人労働者獲得の国際競争が激化する中、家族帯同して来日する外国人労働者にとって、子育てやキャリアパスは重要なインセンティブになっていくでしょう。また、子どもたちは将来多文化共生社会の重要な担い手、日本の社会の構成員にもなります。こども家庭庁ができたら私たちの白書をもとにさらに詳しい調査をしていただき、国の責任で子育て支援の施策を充実させてほしいです。」と話している。

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12:00 AM 留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
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日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
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本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
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凡人社日本語サロン研修会 『でき... @ 大阪会場TKP 大阪本町カンファレンスセンター
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令和6年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
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