「全中国選抜日本語スピーチコンテスト本選」が5年ぶりに日本で開かれる——ネイティブ並みの日本語を披露

「全中国選抜日本語スピーチコンテスト本選」が5年ぶりに日本で開かれる——ネイティブ並みの日本語を披露

中国全土の3万3000人の中から予選を勝ち抜いた16人が競う「第17回全中国選抜日本語スピーチコンテスト本選」が3月12日に東京都千代田区で開催された。コロナ禍で中断などがあり、東京でコンテストが開かれたのは5年ぶり。最終決戦に臨んだ16人は、いずれも日本人並みの流暢な日本語を駆使し、それぞれに思いを語り、独自の主張を披露した。

スピーチコンテストを主催したのは、日本経済新聞社と中国教育国際交流協会、日本華人教授会議。2006年から始まったコンテストには、これまで25万人が参加している。国際交流基金の2021年度の日本語教育機関調査によると、日本語を学んでいる中国人は世界で最も多い105万人。これは大学の日本語学科などで学習している人数で、ネットなどで独学している人を含めると「日本語人口」は500万人にのぼるという。

この日のコンテスト本選で参加者は、「日中平和友好条約締結45周年―私のメッセージ」と「DX(デジタル・トランスフォーメーション)で私の暮らしはどう変わる?」のどちらか一つのテーマを選択して5分間スピーチ。この後、事前には伏せられていた①「孤独は快適ですか?ストレスですか?」②「自転車にも運転免許が必要ですか?」2つの課題から一つを選んで2分間、自分の考えを述べた。

審査に予断を与えないようスピーチ時には参加者の名前と所属の大学名は伏せられ、抽選で決まった番号の順に壇上に上がった。選んだテーマは「日中平和友好」の2人を除く14人は「DXで私の暮らしは」。その場で選択する2分間スピーチでは「孤独は快適ですか」について大半の人が語った。

いずれも日本語力は日本人並みに流暢で、話に盛り込まれた論理構成や発想、表現力などでスピーチ力を競った。「DXで私の暮らし」では、宮沢賢治や夏目漱石などの作家を引用した例があったほか、自身の祖母ら親族のエピソードを交えて話を展開。DXを肯定的にとらえる意見が多かった。「日中平和友好」が目的は同じでも、2人は独自のアプローチで話を組み立て、友好ムードを演出した。

林佳世子・東京外語大学長を審査委員長に日中の有識者7人が審査した。その結果、浙江省の浙江工商大の肖瑩瑩さんが優勝者に選ばれた。林審査委員長は審査後の講評で「日本語の語彙や文法、表現力はほとんどの方がパーフェクト。甲乙つけがたいどころか、本当にネイティブ並みの表現力だったと思う」と称賛。さらに「それぞれ深く考えて、自分のメッセージとして伝えていただき、心に残りました」と述べた

優勝した肖さんは浙江工商大に入学した時は生物学科の学生だった。ただ、語学が好きで日本語のアクセントがとても美しいと思い、日本語学科に移ったという。このため日本語を勉強したのは4年足らず。優勝が決まった時には「パニックに陥ってしまった」と言いながら、「指導教官の先生や中国にいる両親に感謝の気持ちを伝えたい」と話していた。

その他の準優勝者などは主催者が公式ホームページで公表する。

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6月
12
12:00 AM 留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
6月 12 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
6月
29
12:00 AM 留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
6月 29 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
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10:00 AM 令和6年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
令和6年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
8月 5 @ 10:00 AM – 8月 6 @ 4:30 PM
令和6年度日本語学校教育研究大会 1 開催日時 本大会 2024年8月5日(月)10:00~16:45 8月6日(火)10:00~16:15 ポストセッション 2024年8月23日(金)19:30~21:00 2 会場 国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区) 3 参加方法 会場参加:8/5、6は会場参加。後日一部プログラムのアーカイブ配信視聴可。8/23ポストセッションに参加可。 オンライン参加:一部プログラムのライブ配信・後日アーカイブ配信を視聴可。8/23ポストセッションに参加可。 3 応募締切:2024年7月24日(水) 4 詳細、申込方法 https://www.nisshinkyo.org/news/detail.php?id=3163&f=news 「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」施行に伴い、各校においては教育理念や到達目標、評価方法、および教育・学習内容等の見直しを進められていることと存じますが、認定されることがゴールではなく、その先を見据えて、自分たちの教育、および学校全体を見直し、リニューアルすることが大事なのではないでしょうか。 今回は、大会のテーマを「これからの新しい日本語学校の話をしよう」とし、プログラムを企画しました。 日本語学校教育に興味・関心をお持ちの方ならどなたでもご参加いただけます。 皆様のご参加お待ちしております。 【8/5】 講演「日本語教育機関の認定と登録日本語教員について」 (文部科学省総合教育政策局日本語教育課) 講演「技能実習制度及び特定技能制度をめぐる状況と育成就労制度の創設について」 新井靖久(出入国在留管理庁政策課 課長補佐) 講演「『逆向き設計』論に基づくカリキュラム設計-より良い教育評価を目指して」 奥村好美(京都大学 教育学研究科 教育学環専攻教育・人間科学講座准教授) パネルディスカッション 加藤早苗(インターカルト日本語学校 校長)亀田美保(大阪YMCA日本語教育センター センター長) 山本弘子(カイ日本語スクール 代表) 【8/6】 分科会Ⅰ「大学との教育連携を考える~送り出し側と受け入れ側の視点~」 分科会Ⅱ「自ら学び続けるために~学習者と教師のオートノミー~」 義永美央子(大阪大学 国際教育交流センター 教授) 分科会Ⅲ「モジュールボックスを使って学習活動と評価を考えよう!」 自由研究発表・ポスター発表・デモンストレーション・トーキングショップ 協賛団体紹介ブース 【8/23】 ポストセッション(オンライン交流イベント) 〔問い合わせ先〕一般財団法人日本語教育振興協会 事業部 小野寺陽子 TEL:03-6380-6557 FAX:03-6380-6587 E-mail: nisshinkyo2@gmail.com
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10:00 AM 母語・継承語・バイリンガル教育(... @ オンライン(ZOOM)
母語・継承語・バイリンガル教育(... @ オンライン(ZOOM)
8月 6 @ 10:00 AM – 8月 9 @ 9:00 PM
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)学会は、国内外の幼児・児童・生徒・成人が読み書きも含むマルチリンガル能力を身につけられる言語教育の方法、理論、研究方法を探ることを目的としており、学会誌の発行や研究大会の開催などの活動をしています。 2024年度は「母語・継承語・バイリンガル教育研究の未来を描く〜次の10年を見据えて〜」をテーマにした研究大会を、来る8月6日から9日までの4日間に渡り、オンラインで開催いたします。関心をお持ちの多くの方のご参加をお待ちしております。

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