セサルの挑戦 第10回 国際紅白歌合戦をプロデュースする宮崎計実さん

 

セサルの挑戦 第10回 国際紅白歌合戦をプロデュースする宮崎計実さん

~日系ペルー人カブレホス・セサルの挑戦~

大晦日恒例のNHKの紅白歌合戦。一時ほどの人気はなくなったとはいえ、国民的な行事あることは今も変わらない。その有名な歌合戦に「国際」という言葉を付加したイベントをプロデュースし、発展させているのが宮崎計実さんだ。宮崎さんは「グローバルコミュニティー」というウエブマガジンを編集・発行する。その情報発信の活動の中から「国際紅白歌合戦」は生まれた。

東日本大震災があった2011年秋、東京を会場に外国人留学生と日本人の若者が紅白に分かれての歌合戦からスタートした。当初は私(石原)も歌合戦の審査委員を務めるなど協力をさせてもらった。その歌合戦は海を越え、インドネシアやブラジルでの予選会も開かれるようになった。宮崎さんが出身地の大阪に住居を移したこともあり、歌合戦もメーン会場は大阪になった。11月7日には大阪府箕面市の箕面メイプルホールで「第12回国際紅白歌合戦」が開催される。

https://iko-yo.net/events/440643#google_vignette

この国際色豊かなこのイベントを前に、セサルさんが宮崎さんにその歩みなどを聞いた。

【石原 進】

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セサル: 宮崎さんは「国際紅白歌合戦」_創始者であり、プロデューサーと聞いています。

宮崎さん: はい、今回で12回目です。2011年東日本大震災の年の9月に始まりました。実は『にほんごぷらっと』の石原様のご紹介で観光庁を訪問し、そのご縁で、第1回の国際紅白歌合戦には当時の観光庁の溝畑長官(現大阪観光局理事長)にも留学生や日本人の学生とも肩を組んで、一緒に歌って参加いただいたことがあります。また、観光庁の記者発表でも紹介され、NHKや時事通信、毎日新聞などの大手メディアと9言語でのエスニックメディアなどがその様子を取材してくれました。お陰様で初回から大きな反響があり、大勢の方が参加していただけるようになりました。

 

セサル: 国際紅白歌合戦開催のきっかけを教えてください。

宮崎さん: 東日本大震災の影響で、私は日本にいる外国人の方々が不安であるのを感じました。東京に住んでいる人は放射能騒ぎで、関西へ逃げたり、帰国したりしている人もいましたが、日本人も含めすごく不安な期間を半年くらい過ごしていましたよね。

セサル: はい、よくわかります。

宮崎さん: 私は、国際紅白歌合戦を通して「安心してください、地震後も帰国せず、日本に残って元気に暮らしている人もこんなにいますよ」というメッセージも海外に発信出来るのではないかと思いました。一番嬉しかったのは、お願いしたわけではないのに、参加者自らみんなを励まそうと、一人一人が「震災に負けずに頑張りましょう」と声をかけて歌ってくれたことです。

セサル:初回が行われた2011年の9月当時は日本国内にいる外国人たちだけだったということですか?

宮崎さん:もちろんそうです。私たちにとって初めてのことで、お金もないし、イベント運営の知識もありません。しかし、外国人の人たちの就職支援や国際交流メディアの運営を通じて、多くの外国人の人たちと交流していたので、少しずつ、理解者も集まり、何とか開催することが出来ました。ただ、大きな会社の支援があって始めたものではないので、出来ることから一生懸命イベントの成功に向けて取り組んでいると、徐々に大きくなっていきました。

セサル:今スポンサーはいますか。

宮崎さん: はい、始めた当初は不動産会社がメインでした。私は2010年から2019年まで、日本賃貸住宅管理協会という大きな不動産管理会社の業界団体の依頼で、留学生インターンシップの企画運営を担当していました。最初は大変でしたが、留学生のインターンシッメイン受け入れる会社も少しづつ増え、その社会的な重要性を感じた不動産会社も増えて行きました。つまり、外国人に住居を提供する会社が最初のスポンサーでした。仕事の関係でそのような理解のある不動産会社とご縁がありとっても幸運でした。それがなければこんな長くは続かなかったと思います。

セサル: イベントを開催するために資金力が重要ですね。国際紅白歌合戦はどのように開催されていますか?

宮崎さん:最初は東京のみでしたが、2013年、2014年は大阪でも同年に開催しました。きっかけは大阪観光局の設立です。うまくお互いの意見が合い、大阪でも行うこととなりました。

セサル: それからずっと大阪で実施されていますか。

宮崎さん:資金や人材面の問題もあり同年開催は2年で終わりました。ただ、2011年から2019年まで東京では連続して行いながら、現地パートナーと連携して2017年と2018年にフィリピンのセブ島、2018年はインドネシアのバリ島で開催しました。2020年はコロナ禍で中止になりましたが、2021年には、本拠を大阪に移して無観客で再開しました。

また、海外パートナーも新たに見つかり、2023年はインドネシアで開催し、今年も8月に開催されました。今後は海外での予選会を増やして大阪に受け入れるように変えていこうと思っています。

セサル: 「国際紅白歌合戦」は世界的に行われるようになるのでしょうか。

宮崎さん: 海外にいいパートナーが見つかれは可能ですね。来日したい人がいて、日本と縁の深い国であれば、広げていけると思います。当面の間は、アジアの国と日系人が多く住んでいる国を中心に開催する予定です。

例えば、ブラジルのサンパウロでは、日本とブラジルを繋ぐNPOのご縁で、日系人カラオケ協会の代表とZOOMで何度も意見交換をして、2021年、2022年はオンラインではありますが、代表者の方に出演してもらいました。

今年は、念願が叶って、日系人カラオケ協会のサポートでサンパウロで選考会を行うことが出来ました。大阪市とサンパウロ市の姉妹都市の助成も利用して、大阪に招待することも出来るようになりました。

セサル: ペルーにも日系人協会がありますので、いろんな国の日系人協会とつながるといいですね。「国際紅白歌合戦」はどのように運営されていますか。

宮崎さん: 現在は、GC(Global Community)学生通訳ボランティアガイドのメンバーと大阪公立大学のボランテイアセンターの大学生メンバーが中心になって、運営しています。もちろん、国際交流に関心のある社会人も大勢ボランテイアとして参加いただいています。

東京開催時代は、大学時代から社会人になっても継続して参加してくれる人も多く、国際交流への想いを大事にしているメンバーが世代間を超えて集まり、とってもいい形の運営が出来ていました。

大阪でも時間をかけてこのような組織を作っていきたいと思います。継続的な開催には、ボランティアの人たちとの『心の結びつき』が本当の財産です。

セサル:本日は宮崎さんが国際紅白歌合戦に対する思いが充分伝わってきました。宮崎さんの話を聞いて、11月17日に行われるイベントに参加したくなりました。運営的には大変だと思いますが、良いイベントになることを心から願っております。本日はありがとうございました。

宮崎さん: こちらこそ、ありがとうございました。

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セサルのひと言:

宮崎さんのように、震災という困難な時期に多文化共生への意識を高め、国際紅白歌合戦を通じて外国人と日本人が互いに支え合える場を作り上げたことに深く感銘を受けました。私は日系ペルー人として1990年に来日しましたが、当時は文化や言葉の壁に直面し、孤独を感じることもありました。そうした経験からも、このイベントがもたらす『安心して暮らせる』というメッセージの重要性を強く実感します。国際紅白歌合戦が各国の出身者にとって母国を感じさせる一方で、日本人の方々に外国文化への理解を広げる場となり、多文化共生社会の実現に貢献していることを嬉しく思います。また、このイベントを支えるボランティアやスポンサーの方々の姿勢にも、共生社会への強い意志が表れていると感じます。これからも音楽を通じて、お互いの文化を尊重し合い、多様な価値観を認め合う場が広がり続けることを心から願っております。

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7月
20
10:00 AM 【!!追加募集!!】NPO法人日本... @ オンライン (オンライン上での集合研修 および 動画視聴による個人学習) ・「就労者の異文化適応」「教材研究」は対面(東京・大阪)で実施。 オンラインでの参加も選択可能。
【!!追加募集!!】NPO法人日本... @ オンライン (オンライン上での集合研修 および 動画視聴による個人学習) ・「就労者の異文化適応」「教材研究」は対面(東京・大阪)で実施。 オンラインでの参加も選択可能。
7月 20 2025 @ 10:00 AM – 2月 8 2026 @ 2:45 PM
【!!追加募集!!】NPO法人日本語教育研究所 主催文部科学省委託 令和7年度現職日本語教師研修プログラム普及事業 就労者に対する日本語教師【初任】研修 就労者に対する日本語教師養成 –日本語教育研究所の多様な研修実績及び人材を活かしたビジネス日本語教育/指導- ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ この研修は、これから新たに就労者に日本語を教えたいと考えている方を主な対象としています。スキルアップにぜひお役立てください。 再受講をご検討の方へ 本研修はこれまでに弊所の研修をご受講された方も、再度ご参加いただけます。 実際に現場に出て、もう一度確認したいことなども出てきているのではないでしょうか。 さらに実践的な指導力を高める良い機会となりますので、ぜひご検討ください。 ─────────────────── ■期間 2025年7月20日(日) ~ 2026年2月8日(日) *日程等の詳細は、募集要項のリンク先からご覧ください。 ■対象 日本語教育機関認定法に基づく「登録日本語教員」を対象としますが、本法の経過措置期間内(令和10年度まで)は、令和6年度までに下記を修了した方も対象とします。 1)日本語教師として下記のいずれかの要件を満たす方  ①大学/大学院で日本語教育に関する教育課程を修了し、大学/大学院を卒業/修了した方  ②大学/大学院で日本語教育に関する科目の単位を26単位以上修得し、大学/大学院を卒業/修了した方  ③公益財団法人日本国際教育支援協会「日本語教育能力検定試験」に合格した方  ④学士の学位を有し、日本語教師養成講座 420 単位時間以上を修了した方 2)原則として、就労者への日本語教育歴が0~3年未満の方 ■定員 100名 ■受講料 20,000円(税込) ※教材費込み ■申込方法 以下のリンクからお申し込みください。 https://forms.gle/JWtnJ6WzzCNQvQx88 ■申込締切 2025年6月30日(月)【募集期間延長しました!!】 ■募集要項 https://docs.google.com/document/d/1uHn1k6zdRIgcQ2-lK5Uyr1Qa5vlwzXCFvKEUw3UjJVU/edit?usp=sharing ■お問い合わせ NPO法人 日本語教育研究所(研修事務局) nikken.kenshu@gmail.com
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令和7年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
8月 7 @ 10:00 AM – 8月 8 @ 4:30 PM
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10:06 AM 第11回日本語教育支援システム研究... @ 英キール大学(Keele University)
第11回日本語教育支援システム研究... @ 英キール大学(Keele University)
8月 26 @ 10:06 AM
第11回日本語教育支援システム研究会(CASTEL/J)国際大会 第11回日本語教育支援システム研究会(Computer Assisted Systems for Teaching and Learning Japanese – CASTEL/J)国際大会を英国中部スタッフォードシャー州にあるキール大学(Keele University)にて英国日本語教育学会(BATJ)・キール大学ランゲージ・センターとの共催で開催することとなりました。 日本語教育支援システム研究会国際大会は、日本語教育関係者、日本語教育のリーダーに日本語教育におけるテクノロジー使用の最先端の動き、将来の方向性を共有する機会を作ってきました。2020年のパンデミックにより授業のオンライン化・ハイブリッド化が進み、それに加えて、この数年の人工知能(AI)技術の急速な発展と普及により、日本語教育は元より私たちを取り巻くテクノロジー環境が大きく変化しています。これらの技術的発展を効果的に教育・学習に取り入れ促進していくことは今まで以上に重要となっています。世界中からこの分野の優れた研究者、実践者が集まるこの国際大会に是非ご参加ください。 日時:2025年8月26日(火)〜27日(水) 会場:英スタッフォードシャー州キール大学チャンセラーズ・ビルディング 共催:英国日本語教育学会(BATJ)、キール大学ランゲージ・センター
8月
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令和7年度 文部科学省委託 主任教... @ オンライン+いずれかの対面研修会場(東京会場:国立オリンピック記念青少年総合センター/大阪会場:関西研修センター(KKC)/福岡会場:リファレンス駅東ビル貸会議室)
8月 29 2025 @ 12:00 AM – 1月 8 2026 @ 12:00 AM
令和7年度 文部科学省委託 主任教員研修 @ オンライン+いずれかの対面研修会場(東京会場:国立オリンピック記念青少年総合センター/大阪会場:関西研修センター(KKC)/福岡会場:リファレンス駅東ビル貸会議室) | 東京都 | 日本
一般財団法人日本語教育振興協会は標記研修を開催いたします。 昨年度に引き続き、より質の高い研修成果を求めて、研修の核となる2日間の集合研修を東京会場、大阪会場、福岡会場で全て対面にて実施することにいたしました。特に、東京会場は国立オリンピック記念青少年総合センターに宿泊して研修を行うので、研修に参加した仲間や講師との絆がより一層深まることを期待しております。もちろん、どちらの会場での研修も日本全国からご参加いただけます。 加えて、オンデマンドによる事前学習を多く取り入れるなど、集合研修での成果をより高めるための工夫がされております。さらに、各参加者が自校の教育の質向上のための取り組みを発表する機会を作り、より質の高いフィードバックが得られるように集合研修後のフォローアップも強化するなど、より密度の濃い研修プログラムとなっております。 受講希望者におかれましては、7月28日(月)までに,所定の応募方法にて,ご応募くださるようお 願いいたします。 また、当協会の主任教員研修は告示校を対象としているため、たとえ常勤3年以上の経歴を有していても認定校・告示校の教員(認定日本語教育機関の審査申請済みの教育機関(新規開校含む)に所属する主任教員を含む)でない限り研修の対象とはなりません。 《令和7年度 主任教員研修の特徴》 ︎「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」の成立により、ますます注目が集まる「日本語教育の参照枠」や「日本語教師の人材育成」について理解を深める事ができる ︎ 現場の“今”を意識した研修プログラムにより、過去の研修受講者が再度受講しても満足できる研修である ︎ グループワークでは経験別や所属学校の属性別のグループを構成することにより、多様な受講者の満足度を保証する 《令和7年度 主任教員研修のねらい》 ◆「日本語教育の参照枠」に基づく学習成果の評価と手法を理解し、実践に活かす力を養う ◆ 人材育成の目的や考え方を知り、自校が求める教員像に近づけるための育成方法を考え実践する ◆ 今の悩みを共有できる仲間や、相談できる先輩とのネットワークを獲得する 《研修について》 ◆研修期間  2025年8月29日(金)~2026年1月8日(木)まで       ※7月29日~8月25日まで事前課題への取り組みがあります       ※研修の詳細な日程については当協会のホームページよりご確認ください ◆開催場所 オンライン(Zoom)+下記いずれかの会場       【東京会場】国立オリンピック記念青少年総合センター       【大阪会場】関西研修センター(KKC)       【福岡会場】リファレンス駅東ビル貸会議室 ◆定員 108名(会場定員:東京会場54名/大阪会場36名/福岡会場18名) ◆参加資格 以下の(1)〜(3)のいずれかの条件を満たす方  (1) 認定校・告示校の主任教員  (2) 認定校・告示校で 3 年以上の常勤教員経験を有する主任教員予定者  (3) 認定申請済機関の主任教員 ◆参加要件 ・研修の全日程に参加できる方 ※参加決定後の会場変更は不可 ・オンライン集合研修において、静かで研修に集中できる環境から参加できる方 ・インターネット環境が整っており、PC で研修に参加できる方  ※スマホやタブレットからの参加は不可 ・自校にて実際に課題改善を行い、その取り組みを発表し、研修レポートとして提出できる方 ◆受講料 30,000円(消費税込)      ※東京会場参加者については、別途宿泊費及び食費等(20,000 円程度)が発生します。       詳細な費用については、参加決定者に対して別途お知らせいたします。      ※大阪・福岡会場参加者については、交流会参加費が発生します。       詳細な費用については、参加決定者に別途お知らせいたします。 ◆詳細・申込方法 https://www.nisshinkyo.org/news/detail.php?id=3370&f=news          ★上記サイトに掲載されている開催案内をよくお読みいただきますようお願いいたします ◆応募締切 2025年7月28日(月) 〔問い合わせ先〕 一般財団法人日本語教育振興協会 主任教員研修担当 Eメール:shuninken@gmail.com TEL:03-6380-6557

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