日本語議連の第二回総会で早くも論点が浮上(詳報)

日本語議連の第二回総会で早くも論点が浮上(詳報)

日本語教育推進議員連盟(略称・日本語議連)は1日の第2回総会(勉強会)に国際交流基金日本語国際センター長の西原鈴子、日本語教育学会会長の伊藤祐郎、青年海外協力隊事務局局長の小川登志夫の3氏を招き、それぞれ教育現場からの報告を聴いた。前回の設立総会では文化庁、文部科学省高等教育局、法務省入国管理局など関係府省庁の担当者からそれぞれの日本語教育との関りをヒアリングしたが、今回は初めて「現場の声」をもとに議論を進めた。

最初の報告者となった西原氏は「社会統合政策と言語政策」がテーマ。人口減少時代の外国人材の受け入れ、定着にはより具体的な言語政策の整備が不可欠だと強調した。伊東氏は研究者の立場から日本語教師の状況等を報告した。また小川氏は世界に展開する海外青年協力隊の日本語教育の活動概要を説明した。

 今回注目されたのは、質疑を通じて日本語教育の課題に関する論点がいくつか浮上したこと。日本語教師に関する課題としては「国家資格」と「処遇問題」が取り上げられ、また外国人の受け入れと言語政策については「在留資格と日本語力」や「日本語能力試験の問題点」などが指摘された。

日本語教師の国家資格について問われた伊東氏は「重要だと思う。そのことによってその職を目指す人が出てくるということと同時に(教育の)質の向上が図れるだろう」と述べた。また日本語教師の処遇については「資格制度を作ることによって、処遇面も整備されていくと理解している。それがうまくリンクして(教育の質と処遇のアップの)相乗効果が得られたらいいかな」と国家資格の制度化に期待感を示した。

西原氏は移民受け入れのために語学教育を国として促進しているドイツやオランダの例を挙げ、労働ビザ取得の条件として語学能力を盛り込むとともに学習機会も国が保証することなどを提案。「日本語教育推進基本法の中に例えば住民としての資格を盛り込んでいただければ、教員養成はそれについていく」とも述べた。また西原氏は国際交流基金が行っている日本語能力試験のウイークポイントとして「話す」「書く」の能力検定が入っていないことを指摘し、「(最もレベルの高い)N1に合格すれば読んだり書いたりはできるけどしゃべれない。面接ができませんという人が生まれてしまう」と語った。
このほか立場の弱い在留外国人と日本語教育の関係について聞かれた西原氏は「ヨーロッパでは移民を受け入れてみたものの、エンパワーするシステムがついていかず、不満分子がテロ化する原因の一つになっている。ヨーロッパの轍を踏んではならない」と述べた。

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6月
12
12:00 AM 留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
6月 12 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
6月
29
12:00 AM 留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
6月 29 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
8月
5
10:00 AM 令和6年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
令和6年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
8月 5 @ 10:00 AM – 8月 6 @ 4:30 PM
令和6年度日本語学校教育研究大会 1 開催日時 本大会 2024年8月5日(月)10:00~16:45 8月6日(火)10:00~16:15 ポストセッション 2024年8月23日(金)19:30~21:00 2 会場 国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区) 3 参加方法 会場参加:8/5、6は会場参加。後日一部プログラムのアーカイブ配信視聴可。8/23ポストセッションに参加可。 オンライン参加:一部プログラムのライブ配信・後日アーカイブ配信を視聴可。8/23ポストセッションに参加可。 3 応募締切:2024年7月24日(水) 4 詳細、申込方法 https://www.nisshinkyo.org/news/detail.php?id=3163&f=news 「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」施行に伴い、各校においては教育理念や到達目標、評価方法、および教育・学習内容等の見直しを進められていることと存じますが、認定されることがゴールではなく、その先を見据えて、自分たちの教育、および学校全体を見直し、リニューアルすることが大事なのではないでしょうか。 今回は、大会のテーマを「これからの新しい日本語学校の話をしよう」とし、プログラムを企画しました。 日本語学校教育に興味・関心をお持ちの方ならどなたでもご参加いただけます。 皆様のご参加お待ちしております。 【8/5】 講演「日本語教育機関の認定と登録日本語教員について」 (文部科学省総合教育政策局日本語教育課) 講演「技能実習制度及び特定技能制度をめぐる状況と育成就労制度の創設について」 新井靖久(出入国在留管理庁政策課 課長補佐) 講演「『逆向き設計』論に基づくカリキュラム設計-より良い教育評価を目指して」 奥村好美(京都大学 教育学研究科 教育学環専攻教育・人間科学講座准教授) パネルディスカッション 加藤早苗(インターカルト日本語学校 校長)亀田美保(大阪YMCA日本語教育センター センター長) 山本弘子(カイ日本語スクール 代表) 【8/6】 分科会Ⅰ「大学との教育連携を考える~送り出し側と受け入れ側の視点~」 分科会Ⅱ「自ら学び続けるために~学習者と教師のオートノミー~」 義永美央子(大阪大学 国際教育交流センター 教授) 分科会Ⅲ「モジュールボックスを使って学習活動と評価を考えよう!」 自由研究発表・ポスター発表・デモンストレーション・トーキングショップ 協賛団体紹介ブース 【8/23】 ポストセッション(オンライン交流イベント) 〔問い合わせ先〕一般財団法人日本語教育振興協会 事業部 小野寺陽子 TEL:03-6380-6557 FAX:03-6380-6587 E-mail: nisshinkyo2@gmail.com
8月
6
10:00 AM 母語・継承語・バイリンガル教育(... @ オンライン(ZOOM)
母語・継承語・バイリンガル教育(... @ オンライン(ZOOM)
8月 6 @ 10:00 AM – 8月 9 @ 9:00 PM
母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)学会は、国内外の幼児・児童・生徒・成人が読み書きも含むマルチリンガル能力を身につけられる言語教育の方法、理論、研究方法を探ることを目的としており、学会誌の発行や研究大会の開催などの活動をしています。 2024年度は「母語・継承語・バイリンガル教育研究の未来を描く〜次の10年を見据えて〜」をテーマにした研究大会を、来る8月6日から9日までの4日間に渡り、オンラインで開催いたします。関心をお持ちの多くの方のご参加をお待ちしております。

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