前文科相で超党派の日本語教育推進議員連盟(日本語議連)事務局長の馳浩衆院議員が5日、明大中野キャンパスで開かれた国際日本学部の特別講義で講演し、今年の政府の骨太の方針の中に初めて「日本語教育の拡充」という文言が盛り込まれることを明らかにした。骨太の方針は9日に閣議決定される。馳氏ら日本語議連の働きかけで実現したもので、政府の日本語教育の推進事業は「国策」として大きく一歩踏み出すことになりそうだ。
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骨太の方針2017の素案では、外国人材の受け入れについて「高度外国人材を積極的に受け入れるため、企業における職務等の明確化と公正な評価・処遇の推進、英語等でも活躍できる環境など就労環境の整備、日本語教育の充実など生活面の環境整備、マッチング支援等を進める」とある。
骨太の方針は、正式には政府の「経済財政運営と改革の基本方針」で、経済財政諮問会議の答申を受けて毎年閣議決定している。馳氏は「本当は『立法も視野に』ということも入れたかったが、関係省庁の連携がそこまで煮詰まっていなかった」と述べた。しかし、「日本語教育の拡充」という8文字が書き込まれたことで、日本語教育の関連事業への予算が認められやすい環境ができたことは事実。日本語教育の施策や事業の推進に弾みがつきそうだ。
馳氏の講演は「なぜ日本語教育推進基本法が必要か」と題して行われ、昨年11月に発足した日本語議盟の中に、先に馳氏や中川正春会長代行らによる「立法チーム」が発足したことを報告。その中でまとめた基本法の骨子案を関係省庁や外国人集住都市会議加盟の自治体などに提示し、要望や意見を集めた。
馳氏はその結果を受けて基本法の骨子案と要望や意見を計6枚のペーパーにまとめ、私的な資料として参加者に配布した。骨子案では基本法の定型に沿い、「総則」「基本方針」「基本的政策」「日本語教育推進協議会」の四つの分野で構成。総則には「目的」「定義」「基本理念」「国の責務等」など、「基本的施策」には日本語の①普及推進②質の保証③調査研究が盛り込まれている。
この中で馳氏が特に強調しているのは、「基本的施策」の中の日本語教育の質の保証。具体的には日本語学校の質の担保のための仕組みづくりや日本語教育の人材の確保で、馳氏は「法律の肝になる」と重視している。馳氏は日本語学校の開設許可権限などを法務省入管局が持っていることに疑問を呈し、「日本語の教員免許」の創設を目指す考えも語った。
また、日本語教育に責任を持つ省庁については、国内の留学生などの日本語教育と海外での日本語教育の普及の両輪が必要だとの考えから、文部科学省と外務省の共管が適当だとの考えを述べた。
さらに、外国人の子供や外国出身の親を持つ子供のアイデンティティーにも配慮した教育にも言及した。日系ブラジル人ならポルトガル語、フィリピン人ならタガログ語など母語による教育も必要だと語った。また、障がいを持つ外国人の子供らへの教育支援の必要性も訴えるなど、幅広い観点からキメの細かな日本語教育を目指す考えを示した。
立法チームは、さらに骨子案に肉付けする意見などを民間の団体からも募り、チームとしての正式な原案を作成して議連に提示し、議連内の議論を経て成案とする意向だ。馳氏は各党の合意も取り付け、議員提案の日本語教育推進基本法を早ければ来年の通常国会で成立させたいとしている。