海外における日本語教育の課題が浮き彫りに

◎海外における日本語教育の課題が浮き彫りに
――日本語議連第8回総会で

超党派の日本語教育推進議員連盟(河村健夫会長、通称・日本語議連)は15日、第8回総会(勉強会)を開き、海外で日本語教育を実施している公益財団法人国際交流基金と学校法人赤門会日本語学校からヒアリングを行った。海外での語学教育といえば、中国の孔子学院が有名だ。残念ながらこの分野で日本は中国の足もとにも及ばない。政府は国際交流基金に十分な予算措置をせず、海外で活動している民間の日本語学校へ支援もしていないからだ。議論を通じてそうした現状や官民の連携などの課題が浮き彫りとなった。

 ヒアリングでは、国際交流基金の日本語事業部長の鈴木雅之氏と日本語国際センター専任講師で元ジャカルタ日本文化センター主任日本語講師の八田直美氏、そして赤門会日本語学校常務理事の新井永鎮氏らがその取り組みを報告した。

国際交流基金は外務省の関係団体で、海外での日本語教育全般を取り仕切っている。基金によると、2015年末の海外での日本語学習は計366万人で、その8割近くがアジアの人たち。中国、インドネシア、韓国の上位3か国は教育のカリキュラムの変更などで学習者の数が減っているが、他のアジアの多くの国では日本語へのニーズが増大し、学習者が増えている。

しかし、海外に展開している日中韓の語学講座の数を比較すると、中国語の孔子学院が1586カ所、韓国語の世宗学堂が174カ所なのに対し、国際交流基金の日本語講座は31カ所しかない。これは、国家戦略として自国の言語の普及に力を入れている国と、そうでない国の違いだ。日本にはたくさんの魅力があり、アジアの人たちは日本にアクセスしたがっているのに、その道筋を描けないのだ。インターネットを活用したEラーニングの必要性も指摘されているが、拠点づくりはより重要だ。

それでも国際交流基金は、きめの細かな取り組みを行っている。日本語教師の不足を補うため、現地教師のアシスタントとして活動する「日本語パートナーズ」をアセアン各国に派遣している。2014年から7年間で20歳から69歳までの3000人を超える日本人を送り出す計画だ。

一方、赤門会日本語学校はベトナムのハノイとホーチミン、そしてミャンマーのヤンゴンで日本語教育を行っている。民間の日本語学校が海外展開する珍しいケースだ。日本と為替の格差があるアジア各国では、授業料を徴収しても全く採算が合わないのだ。赤門会日本語学校は、日本語が上達した現地の若者を関係の人材会社を通じて日系企業に紹介するなど関連のビジネスによって赤字の一部を補填しているという。新井氏は「海外では学校経営だけでは黒字にならない。民間が海外で日本語教育を推進するのは政府による支援が必要だ」と述べた。

国際交流基金、赤門会日本語学校とも、口をそろえたのは日本語教師が不足していること。国内の日本語学校でさえ教師の確保に苦労しているのだから当然と言えば当然だ。政府が海外に日本語教育を普及させようというなら、教師の育成が不可欠だ。

海外での日本語教育について、政府内では海外が外務省(国際交流基金)、国内を文化庁国語課が管轄するという、大まかな「住み分け」ができている。しかし、文化庁国語課の日本語教育は在日の日系人などへの「生活言語の教育」の域を出ない。このため、日本語学校をきちんと指導・監督する部署はないのだ。

この日の議論では海外で国際交流基金と赤門会日本語学校の協力、つまり官民連携が行われていない実態も明らかになった。こうした議論を踏まえ、中川正春会長代行は「発展途上国では日本語学校が進出するビジネスモデルはできない。それをどう克服するかが課題だ。国際交流基金としては、民間の事業体と組むとか支援するという発想ができないのか。あるいは進出している日系企業を巻き込むことができないのか」と述べ、今後の検討課題として官民連携を具体的に提起した。

通常国会の閉会により日本語議連の次回の総会は、秋の臨時国会が開かれるとみられる9月以降になる。計画では関係団体などからの総会でのヒアリングはあと1回だけになりそうだ。日本語議連では、総会の活動とは別に中川会長代行や馳浩事務局長らが立法チームを立ち上げている。立法チームは日本語教育推進基本法案の作成に向け、その骨子案を詰めるために議論を進めている。秋の臨時国会の開会中には総会で法案作成の議論を本格的に行い、日本語議連としては、早ければ来年の通常国会に法案を提出し、各党の合意を得て成立を図りたい考えだ。

にほんごぷらっと編集部にほんごぷらっと編集部

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の編集部チームが更新しています。

この著者の最新の記事

関連記事

コメントは利用できません。

イベントカレンダー

4月
20
2:00 PM 凡人社オンライン日本語サロン研修... @ オンライン
凡人社オンライン日本語サロン研修... @ オンライン
4月 20 @ 2:00 PM – 3:30 PM
凡人社オンライン日本語サロン研修会 Can-do を学習目標にした授業や評価のあり方がわかる! 『Can-do で教える 課題遂行型の日本語教育』刊行記念イベント   [日 時] 2024年 4月20日(土)14:00~15:30(オープン 13:40)※日本時間   [定 員] 250名(先着順、定員になり次第締め切ります)   [対 象] 日本語教師、日本語教育をこれから学ぶ方、日本語教育の動向に関心のある全ての方   [参加費] 無料 ※要予約 前日(4/19)17 時までに招待URLを送ります   [講 師] 来嶋 洋美 先生 八田 直美 先生 二瓶 知子 先生   [内 容] 『Can-do で教える 課題遂行型の日本語教育』(三修社発行)の出版記念イベントです。 日本語教育の参照枠ができ、4月からは日本語教育機関の認定等に関するもの、また、登録日本語教員の国家資格など新しい法律も施行される中、参照枠に沿った日本語教育、その授業の具体的な内容や方法については教師に委ねられているのが現状です。 参照枠やJFスタンダードに沿った日本語教育とはどんなものなのか、従来通りのやり方からどう変えていったらいいのか、今知っておきたい情報を本書の内容をご紹介しながらお話ししていきます。   [お問い合わせ・お申込み] 主催:三修社・凡人社 お問い合わせ・申し込み先(担当:凡人社/坂井)   E-mail:ksakai@bonjinsha.co.jp   ※下記お申込みフォームかQRコードかメールにてお申し込みください。 メールでお申し込みの際はタイトルに「オンライン日本語サロン研修会(4/20)」と入れて、本文にご氏名・ご所属・ご連絡先をご記入ください。   お申込みフォーム→https://x.gd/JDs6P
4月
21
10:00 AM 第16回:Diffit(ディフィット):... @ オンライン(ZOOM)
第16回:Diffit(ディフィット):... @ オンライン(ZOOM)
4月 21 @ 10:00 AM – 11:30 AM
Diffitは、指定したトピックやキーワード、またネット上のニュース記事や YouTube、さらにはオリジナルの文章などから、 学習者のレベルに合わせた読解教材や語彙リストなどをAIが“自動”で作成してくれる便利なツール!編集機能を使えば、文章の長さや語彙、質問事項の追加なども可能です。 本ワークショップでは、すでに公開されているこちらの動画(https://youtu.be/6g_8eddWoBM?si=7bSsR0avH2BapzVW)と同じ内容を扱います。 動画を見ながらやろうとしたけどわからなかった、一人でやるより他の先生方と一緒に楽しく学びたい!教材を共有したい!という方のご参加をおすすめします。 ▼体験会のゴール(予定) キーワードやトピックから問題を作成&編集することができる ネット上のニュース記事や動画から問題を作成&編集することができる 作成した問題の整理&共有をすることができる エクスポート機能を使ってハンドアウトやGoogleフォーム(※有料機能)に変換できる
10:00 AM 第16回:Diffit(ディフィット):... @ オンライン
第16回:Diffit(ディフィット):... @ オンライン
4月 21 @ 10:00 AM – 11:30 AM
Diffitは、指定したトピックやキーワード、またネット上のニュース記事や YouTube、さらにはオリジナルの文章などから、 学習者のレベルに合わせた読解教材や語彙リストなどをAIが“自動”で作成してくれる便利なツール!編集機能を使えば、文章の長さや語彙、質問事項の追加なども可能です。 本ワークショップでは、すでに公開されているこちらの動画(https://youtu.be/6g_8eddWoBM?si=7bSsR0avH2BapzVW)と同じ内容を扱います。 動画を見ながらやろうとしたけどわからなかった、一人でやるより他の先生方と一緒に楽しく学びたい!教材を共有したい!という方のご参加をおすすめします。 ▼体験会のゴール(予定) キーワードやトピックから問題を作成&編集することができる ネット上のニュース記事や動画から問題を作成&編集することができる 作成した問題の整理&共有をすることができる エクスポート機能を使ってハンドアウトやGoogleフォーム(※有料機能)に変換できる
4月
27
1:30 PM 凡人社日本語サロン研修会 『でき... @ 東京会場凡人社麹町店
凡人社日本語サロン研修会 『でき... @ 東京会場凡人社麹町店
4月 27 @ 1:30 PM – 4:00 PM
凡人社日本語サロン研修会 『できる日本語』ブラッシュアップ講座 ~課題に向き合い、仲間とともに,より良い実践をめざしませんか~   [日時・会場・定員] 全日:13:30~16:00(受付開始 13:00) ※各会場先着順、定員になり次第締め切ります   【日付】2024/4/27 (土) 【会場】東京会場凡人社麹町店(千代田区平河町1-3-13 平河町フロントビル8階 【定員】30名   【日付】2024/5/19 (日) 【会場】名古屋会場ECC 日本語学院名古屋校(名古屋市中区金山1-16-16 金山ビル) 【定員】60名   【日付】2024/6/29 (土) 【会場】札幌会場札幌青葉鍼灸柔整専門学校(札幌市中央区南3条東4丁目1-24) 【定員】50名   【日付】2024/7/27 (土) 【会場】大阪会場TKP 大阪本町カンファレンスセンター(大阪市中央区久太郎町3-5-19) 【定員】80名   【日付】2024/9/1 (日) 【会場】福岡会場博多バスターミナル(福岡市博多区博多中央街2) 【定員】60名   [対 象] 主に日本語学校の教師・関係者、日本語教育ボランティア、日本語教育に関心のある方   [参加費] 無料 ※要予約   [講 師] 嶋田 和子 先生(『できる日本語』監修) 他『できる日本語』著者の先生方   [内 容] 『できる日本語』の輪が広がり続け、「実践について学べる場がほしい」という声がたくさん寄せられています。 そこで、現在『できる日本語』を使っていらっしゃる方々に向けて、「ブラッシュアップ講座」を開くこととしました。 当日は、具体例を挙げながらより良い実践について考えていきます。 事前にお寄せいただいた質問の中から共通の課題を取り上げ、ご一緒に解決に向けて考えていきます。 また、すでにあちらこちらで【できる日本語ネットワーク】が生まれていますが、今回の対面講座で、さらに新たな輪が生まれることをめざします。   [お問い合わせ・お申込み] 主催:アルク・凡人社 お問い合わせ・申し込み先(担当:凡人社/坂井)   E-mail:ksakai@bonjinsha.co.jp   ※下記お申込みフォームかQRコードかメールにてお申し込みください。 メールでお申し込みの際はタイトルに「日本語サロン研修会(●/●)@●●」と入れて、本文にご氏名・ご所属・ご連絡先をご記入ください。 ※●/●部分は開催日時と場所をご記入ください。   お申込みフォーム→https://x.gd/3kYVu

注目の記事

  1. 国籍法違憲訴訟で最高裁が上告を退ける 外国の国籍を取得すると日本国籍を失い、二重国籍を認められ…
  2. 認定日本語教育の法案を閣議決定、国会に提出 政府は2月21日、「認定日本語教育機関」と「登録日…
  3. 日豪の友好の歴史を見直そう——日豪議員連盟が「穣の一粒」と「藤田サルベージ」で勉強会  …

Facebook

ページ上部へ戻る
多言語 Translate