三重県の津市で外国人集住都市会議 日本語教育の一層の推進を国に要望

外国人が多く住む市や町が課題や国への要望などを話し合う外国人集住都市会議が20日、津市で開かれ、自治体と政府関係者などが熱心な議論を展開した。従来から大きな課題となっている日本語教育に関してはこの日も様々な形で取り上げられ、採択された「外国人集住都市会議2017津宣言」では「地域の日本語教育を支えるボランティアへも高齢化の波が押し寄せ、国による制度化及び財政的裏付けなしに地域の多文化共生を実現するのは困難である」と政府に対して一層の支援を求めた。

外国人集住都市会議は2001年に浜松市の呼びかけで発足。現在、東は群馬県、西は岡山県まで22の都市が参加し、毎年持ち回りで「集住都市会議」を開催している。自治体が直面する様々な課題を、会議の議論を通じて省庁幹部に直接働きかけており、外国人の処遇をめぐる制度改革に大きな役割を果たしている。

この日、第一セッションではホスト役の前葉泰幸・津市長をはじめ、三重県の亀山、伊賀、四日市の各市長、第二セッションでは岡山県総社市、三重県鈴鹿市、浜松市、滋賀県甲賀市の各市長が参加。一方、省庁側は法務省入国在留課、文化庁国語課、文部科学省国際教育課、厚生労働省外国人雇用対策課、外務省外国人課、内閣府の幹部クラスがパネリストとして出席した。

今回のテーマは「多様性を活かした、活力ある地域社会を目指して」。コーディネーターを長年、同会議をアドバイスしている関西学院大学経済学部の井口泰教授が務め、自治体側から課題や問題点を指摘し、政府への要望を伝えた。

この中で今年も重要な課題として要望が出たのが日本語教育。昨年11月に日本語教育推進議員連盟(河村建夫会長)が発足し、日本語教育推進基本法(仮称)の制定を目指して議論を進めている。日本語議連のヒアリングでは、外国人集住都市会議の会員都市である豊橋市が意見を述べている。

この日の日本語教育に関する議論では、学校や学校以外での外国人児童の日本語学習の環境整備をはじめ地域の日本語教師の育成や「職業としての教師」の位置づけなどの多様な要望があった。

これに対し西田憲史・文化庁国語課長は、文化審議会の日本語教育小委員会でカリキュラムや様々なモデル事業について議論をしているところで来年3月ごろには報告書がまとまるとの見通しを述べた。桜井康仁・文部科学省国際教育課長補佐は、法改正で学校教育における日本語教師の配置が充実されたほか、来年度も日本語ボランティアなどのとの連携事業について助成を求める声が増えていることから来年度の予算要求を増額する考えを明らかにした。

また、日系ペルー人4世で15歳の時に来日、日本語を学び定時制高校を卒業するなどして奈良学園大学人間教育学部助教として教鞭をとるオチャンテ・村井・ロサ・メルセデスさんが基調講演を行うなど、「ニューカマーの声」も披露された。

津宣言では「アジア諸国からの外国人流入に伴う地域住人の国籍多様化は、教育、雇用、社会保障などの面で問題をより複雑化させ、新たな対応が必要である」と指摘。そのうえで日本語教育を進めるための支援を政府に求めているほか、「外国人材の受け入れが拡大するなか、単に少子・高齢化に伴う労働力不足への短期的な対応でなく、地方創生の観点から、国と地方自治体が連携し,受け入れ後の社会統合政策がより効果的に進められるよう体制の整備を求める」と述べた。

にほんごぷらっと編集部にほんごぷらっと編集部

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の編集部チームが更新しています。

この著者の最新の記事

関連記事

コメントは利用できません。

イベントカレンダー

7月
1
終日 留学生に対する日本語教師初任者研修 @ オンライン開催
留学生に対する日本語教師初任者研修 @ オンライン開催
7月 1 2023 – 1月 3 2024 終日
日振協による文化庁委託の初任者研修が今年も始まります。 告示校で3年程度までの経験者対象です。 映像講義の視聴とテスト、数回のオンライン集合研修、自分の授業を改善する自己研修の3つに分かれており、様々な角度からの学びと教師としてのステップアップを目指せるカリキュラムとなっております。 研修詳細は https://www.nisshinkyo.org/index.php 最新トピックスをご覧ください。
12月
15
9:00 PM 日本語教師のためのじっくり学ぶ講... @ オンライン(ZOOM)
日本語教師のためのじっくり学ぶ講... @ オンライン(ZOOM)
12月 15 2023 @ 9:00 PM – 1月 26 2024 @ 8:30 PM
【講座概要】漢字の知識は、日本の学校教育では国語科で学びます。しかし、その多くは「漢字テスト」の対策であり、文化的な側面や日本語の表記する方法の一つであるという認識が疎かになっているように思います。また漢字文化圏の学生にとっても母語での漢字の位置づけは、日本語のそれと同じものではありません。この講座では、漢字表記を通した日本語の特徴、そして漢字文化圏の日本語学習者を理解することを目的にしたいと考えています。 第1回 2023年12月15日(金) 文字としての漢字 漢字とかな・アルファベットとの違いを理解し、送り仮名・振り仮名の存在などから、漢字とかなの両方を用いる日本語表記の特殊性を考えます。後半では、漢字の構造(なりたちと構成方法)を理解します。 第2回 2024年1月12日(金) 字形 漢字の構造に慣れるために理解したい、部首と偏旁冠脚とのちがい。また、文化庁の「常用漢字表(付)字体についての解説」「常用漢字表の字体・字形に関する指針」や漢字文化圏諸国の「漢字表」を手引きに、「標準字体」とは、どういうものなのかを考えます。 第3回 2024年1月19日(金) 意味と読み 音読み(一字多音の理由)、訓読み(同訓異字のある理由と「使い分け」)、熟語の構成の理解から、日本語と漢語との文法構造の違いについて考えます。 第4回 2024年1月26日(金) 漢字文化圏 中国・台湾・韓国朝鮮およびベトナムでの漢字文化や社会における漢字の位置づけを理解し、漢字文化圏の日本語学習者への理解につなげます。

注目の記事

  1. 小説家を目指す日系ペルー人 山田マックス一郎さんが語る夢とは 山田…
  2. 「差別の教室」を読んで思い出したこと 「差別」と言えば、私の場合、まずは在日コリアンに…
  3. 復興庁は外国人を対象に「福島」をテーマにした作文コンクールの作品を募集している。 日本政府…

Facebook

ページ上部へ戻る
多言語 Translate