介護の人材育成で日本語学校・専門学校・介護施設のコンソーシアム提案
国際人流振興協会セミナー

介護の人材育成で日本語学校・専門学校・介護施設のコンソーシアム提案 国際人流振興協会セミナー

政府が2025年に向けて新たな在留資格を設けて外国人労働者を50万人受け入れる方針を示す中で7月30日、厚生労働省と法務省の担当官や民間の専門家を講師に招き、介護人材の受け入れの在り方・育成を考えるセミナーが東京都内で開かれた。主催した一般社団法人国際人流振興協会(堀道夫会長)はこの中で、日本語学校・専門学校・介護施設の3者が連携して人材育成にあたる「福祉人材コンソーシアム」を提案し、注目された。

政府は6月15日に閣議決定した「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)で外国人受け入れ拡大の方針を決めている。7月24日には関係閣僚会議を開き、政府が一体となって外国人受け入れの体制を整備する方針を決定。来年4月からこれまで「労働者」としての認めてこなかった介護、建設、造船、宿泊、農業のなどの分野について新たな在留資格や、外国人との「共生」に関する仕組みづくりの検討に着手した。

「外国人材受け入れの諸課題と支援策」をテーマに掲げた今回のセミナーはこうした流れの中で開かれたこともあって、日本語学校、専門学校、福祉施設の経営者など予想を超える約130人が参加。「介護福祉教育におけるグローバル人材の可能性」(小林光俊・前日本介護福祉士養成施設協会長)▽「介護分野における外国人材に関する諸制度や動向について~技能実習制度など」(高相泰忠・厚生労働省社会・援護局福祉人材確保対策室長補佐)▽「留学生の入国・在留の状況及び貸与奨学金の留意事項について」(高竿正人・法務省入国管理局入国在留課補佐官)▽「中国からの介護技能実習制度の活用と中国老齢事業発展基金との連携可能性」(神原章僚・日中介護実習プログラム委員会座長)の4つの講演が行われた。

この中で厚労省の高相室長補佐は、介護人材受け入れに関しては①EPA(経済連携協定)

②技能実習③外国人留学生への在留資格付与――の3つの枠組みを説明。支援策については、介護福祉士を目指す留学生の在留資格の付与に関連して奨学金支給など公的支援が新たに創設されることなどを紹介した。また、法務省の高竿補佐官は奨学金支給の際の留意事項を具体的に挙げた。貸与条件、返済などを詳述し、返済額については「手取りの1割以内であれば、一般には生活に支障のない範囲と考えれる」と基準を示した。

こうした国の政策とは別に国際人流振興協会が提案したコンソーシアムは「外国人福祉医療人材支援環境スキーム」。コンソーシアムとは、複数の団体が共通の目標を掲げ、共同で事業を進める枠組みだ。留学生を介護人材の育成するためには、日本語教育を行う日本語学校、介護福祉士を養成する専門学校、さらに会議福祉施設の3者が奨学金など支援制度を活用しつつ連携して人材育成を進めようというものだ。

留学生を育成し民間企業に就職させる仕組みとしては、過去に経産省と文科省が共管で実施した「アジア人財資金構想」がある。日本語学校、大学・専門学校、企業の3者に自治体が協力して全国でブロックごとにコンソーシアムを構築した。この事業は民主党政権時代に事業仕分けで廃止されたが、その後に文部科学省がこの事業を引き継ぐ形で「留学生交流拠点整備事業」を実施。それぞれの事業は、一定の成果を挙げている。

介護分野でコンソーシアムをどのように構築するのか。誰がリーダーシップをとって枠組みづくりを進めるのか。課題は少なくないが、深刻化する介護の人材不足を解消するためには関係業界、機関がともに汗を流す覚悟が必要だ。今後の動きが注目される。

                                                                                                                                     「にほんごぷらっと」編集部

にほんごぷらっと編集部にほんごぷらっと編集部

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の編集部チームが更新しています。

この著者の最新の記事

関連記事

コメントは利用できません。

イベントカレンダー

6月
3
2:00 PM 凡人社日本語サロン研修会  文法... @ オンライン開催
凡人社日本語サロン研修会  文法... @ オンライン開催
6月 3 @ 2:00 PM – 4:00 PM
[日 時] 2023年6月3日(土)14:00~16:00(受付開始13:30) [会 場] プログレッソイベントルーム/ベース(松山市湊町4-3-9)※対面のみの開催です [定 員] 30 名(先着順、定員になり次第締め切ります) [参加費] 無料 ※要予約(先着順となります) [講 師] 柏谷 涼介 先生(セントラルジャパン日本語学校主任教員) [内 容] 日本語教育、特に初級レベルの学習では長らく文法を中心に考えられた、いわゆる文法積み上げ式の教育が行われてきました。 しかし、現在では課題達成の考え方などを取り入れた、より効果的と思われる教育方法が広まってきており、そのような方法を取り入れている現場も増えてきています。 ここで今一度、学習者のために、より効果的な方法について皆さんで考えてみませんか? 何よりも学習者のために、よりよいものを目指す方のご参加をお待ちしております。   [お問い合わせ・お申込み] お申込みはこちら。 ※メール、または下記URL・QRコードからお申し込みください。 メールでお申し込みの際はタイトルに「凡人社日本語サロン研修会(6/3)」と入れて、本文にご氏名・ご所属・ご連絡先をご記入ください。 E-mail:ksakai@bonjinsha.co.jp(担当:凡人社/坂井)
6月
7
8:00 PM ももの会主催_みんなで読もう!『... @ オンライン開催
ももの会主催_みんなで読もう!『... @ オンライン開催
6月 7 @ 8:00 PM – 9:30 PM
みなさん、こんにちは!ももの会です。 『超基礎 第二言語習得研究』(奥野由紀子編著、くろしお出版)を、全5回で読む読書会を企画しました! もう一度SLAを勉強したい方、この本を買ってそのままになっている方…、みんなで一緒に読んで話しませんか。 ◆こんな人におススメ! ◎これから第二言語習得論を勉強しようと思っている方 ◎もう一度勉強したい、知識をアップデートしたい方 ◎この本を読もうと思っているけど、読むきっかけをさがしている”積ん読”の方 1.スケジュール 全5回、毎回水曜日20:00~21:30実施 ・第1回(5月17日):1章、2章、3章 ・第2回(6月 7日):4章、5章 ・第3回(6月28日):6章、7章 ・第4回(7月19日):10章、11章 ・第5回(8月 9日):12章、15章 2.開催方法 すべてオンライン開催(zoom) ※グループワークがございますので、マイクをご準備いただき、 話せる環境でご参加ください。 3.進め方 ・事前に本を読み、わからなかったところをメモしておく ・わからなかったところを、みんなで考える ・各章にある「課題」を一緒にやる 4.参加費(Zoom代) 一般:1,000円/学生:500円 ※5回分の料金となります。 5.お申込み https://momonokai20230517.peatix.com/ 6.注意事項 ・本は各自でご用意ください。 ・録画はしませんが、記録はすべてGoogleスプレッドシート等に残します。 欠席回については、共有ファイルで内容をご確認いただけます。 7.主催者 ももの会 ももの会についてはこちらをご覧ください。 https://note.com/2021momonokai/n/n71afd95af03b 8.ももの会では、ももの会主催のイベント情報をお届けするためにメーリングリストを作成しています。ご希望の方は、こちらからお申し込みください。 https://note.com/2021momonokai/n/n47141a496dcc
6月
10
終日 異文化間教育学会 第44回大会 @ 東京都立大学 南大沢キャンパス
異文化間教育学会 第44回大会 @ 東京都立大学 南大沢キャンパス
6月 10 – 6月 11 終日
異文化間教育学会 第44回大会 大会実行委員長: 岡村 郁子(東京都立大学) 会 期: 2023年6月10日(土)・11日(日) 会 場: 東京都立大学 南大沢キャンパス Welcome to the 44th Conference of the Intercultural Education Society of Japan Venue: Tokyo Metropolitan University, Minami-Osawa Campus Dates: Saturday 10 June – Sunday 11 June 2023 Conference Organising Committee Chair: Ikuko Okamura (Tokyo Metropolitan University) We welcome presentations in English. For details, please refer to the Call for Papers. Please also use the attached template for submitting your abstract: abstracts template 託児サービスのご利用について 第44回大会では、託児サービス業者に委託し、東京都立大学の大会会場の建物の中で託児サービスを提供いたします。 ご利用を考えておられる方は、以下の説明に沿って期日までにお申し込みください。 託児申し込みついて 託児申込書
1:30 PM 地域日本語どっとねっとシンポジウ... @ オンラインと対面
地域日本語どっとねっとシンポジウ... @ オンラインと対面
6月 10 @ 1:30 PM – 4:30 PM
[日 時] 2023年6月10日(土)13:30~16:30 [会 場] 博多バスターミナル会議室 第7+第8ホール及びオンライン開催 対面と同時配信 ※対面参加の方のみ質疑応答に参加可能、配信は視聴のみ [定 員] 会場40名、配信視聴200名 [参加費] 無料 [内 容] 【基調講演】13:30~14:15 講師:神吉 宇一 先生(武蔵野大学グローバル学部准教授) タイトル:「地域日本語教育の役割は、日本語を教えるだけじゃない」ってどういうこと? 内容:日本は人口減少局面に入り、特に地方都市や特定の職業で人手不足が深刻になっています。 そして、外国人の受け入れによって、それを補おうという動きが活発化しています。 2019年の日本語教育の推進に関する法律以降、日本語教育に関する政策の整備が進んでいます。 2022年11月には、文化審議会国語分科会から、地域における日本語教育が目指す目標としてCEFRのB1レベルが提示されました。 一方、地域における日本語教育では、日本語を教えることだけがその役割ではないという意識が多くの人に共有されつつあり、そのための活動の蓄積も進んでいます。 そして、多くの地域日本語教室が、特定の教科書を教えるという方法から脱し、新たな取り組みを始めています。 そのような中、地域日本語教育に携わる人たちは、政府によるB1レベルという目標設定が「教科書の日本語を教えるだけ」の地域日本語教育に後戻りするのではないかという不安や懸念を抱いています。 本講演では、日本語を教えるだけじゃないという先にある多様な選択肢をどのように考えればいいのかを、教育のあり方と政策のあり方からお話をします。   【トークセッション・質疑応答】14:20~16:30(途中休憩あり) 東京、愛媛、福岡で活動する3名の方々に、日ごろ行っている活動事例をご発表いただいた後、活動の背景にある思い、困難に感じていること、実現したいこれからなど意見を交わし合います。 モデレーター:深江 新太郎 先生 発表者:松尾 慎 先生(東京女子大学教授、VEC代表) 松尾 美恵子 先生(福岡県古賀市/交流型日本語教室運営マネージャー) 宮田 あゆみ 先生(愛媛県松山市/にほんご町内会代表)   [お問い合わせ・お申込み] お申込みはこちら。 ※メール、または下記URL・QRコードからお申し込みください。 メールでお申し込みの際はタイトルに「地域日本語教育どっとねっとシンポジウム(6/10)」と入れて、本文に、ご氏名・ご所属・ご連絡先をご記入ください。 E-mail:ksakai@bonjinsha.co.jp(担当:凡人社/坂井)

注目の記事

  1. 外国人、障害者、お年寄り、子ども、みんなに「やさしい日本語」 普及連絡会を設立・吉開章さん 早期退職…
  2. 第5期「入門・やさしい日本語」認定講師養成講座 5月21日開講 申し込み受け付け中 にほん…
  3. 有識者会議が政府に技能実習制度廃止を提言 政府の有識者会議が4月10日、外国人の技能実…

Facebook

ページ上部へ戻る
多言語 Translate