在留外国人の「国保利用問題」 外国人へのネガティブ感情の増幅を懸念する

在留外国人の「国保利用問題」 外国人へのネガティブ感情の増幅を懸念する

在留外国人の国民健康保険(国保)の活用の仕方について一部から疑問の声が出ているのを受け、自民党外国人労働者等特別委員会(木村義雄委員長)の「在留外国人に係る医療ワーキンググループ」(WG)が8月29日、地方自治体の国保担当者を招いてヒアリングを行った。ヒアリングを報じた産経新聞は「医療窓口の自治体が不正を見破るのは困難で、なかなか全体像がつかめないのが実情だ」と指摘している。

政府は来年4月から外国人労働者受け入れの大幅拡大を決めている。2025年までに20に近い業種で新たに外国人労働者を受け入れる意向といわれ、7年後にはすでに在住する中長期滞在者256万人(2017年末)と合わせると300万人を大きく超える外国人が日本で暮らすようになるはずだ。

このため外国人との「共生」が、政府が向き合う重要な政策課題となるが、それに水を差しかねないのが外国人の国保の利用に関する扱いだ。厚生労働省によると、2017年度の被保険者は3013万人で、このうち99万人が(3.3%)が外国人だ。被保険者全体が減る中で外国人の被保険者が大幅に増えている。3カ月以上日本に滞在する外国人には加入が義務づけられているからだ。

問題とされたのは、「留学」など在留資格で日本に入国し国保に加入して、少額負担で高額治療を受けるケース。医療目的で入国した場合は、国保には加入できず、医療費の全額が自己負担となる。しかし、留学やビジネス関係などの在留資格を取得して入国すれば、その意図はともかく、医療保険の利用を排除する法的な仕組みは存在しない。

ヒアリングで自治体側は「入国後すぐに高額な治療を受けた場合でも、保険資格が適法で保険料を納入する以上、一概に不正利用と断定できない」という。そもそも目的を偽って在留資格を取得したら入管法違反だが、国保の不正利用に関しては入管法で規制できない。

海外での治療費を還付する海外療養費や出産育児一時金(42万円)も検討課題として議論の対象になったという。海外療養費は、日本人が海外に行って受けるために創設された制度だが、東京都荒川区の資料では区が2017年度に支給した海外療養費71件のうち30件が外国人だった。同年度の出産育児一時金262件のうち海外で出産した外国人の国保加入者への支給が35件あった。

政府は先の「外国人材の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議」に提出した「総合的対策」(案)の中で、我が国の医療保険が不適切に使用されることのないよう、「市町村と地方入管局が連携し」、「適正化に向けた取り組みを進める」としている。WGは今後、医療保険の外国人に対する扱いなどを調査し対策づくりを進める方針だという。

こうした動きを批判するのが、外国人の人権擁護の活動などに取り組むNPO法人・移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)だ。移住連は、「外国人が医療保険制度への『ただ乗り』しているとの見方は事実誤認」だとし、差別や偏見を助長する報道や政府の調査に抗議する声明を出している

移住連によると、厚生労働省が2016年11月から1年間の外国人レセプト1489万7134件を調査したところ、国保資格取得日から6カ月以内に80万円以上の高額な治療を受けたのは1597件(総数の0.01%)で、「不正な在留資格である可能性が残る」とされたのは2件だけだった。厚労省は自治体への通知で「在留外国人不適正事案お実態把握を行ったところ、その蓋然性があると考えられる事例は、ほぼ確認できなかった」と述べている一方で、地方自治体に対し疑わしいケースについて外国人への聞き取り調査や法務省入国管理局への通報を求めている。

これに対し移住連は、入管法や在留資格に関する知識のない自治体職員が独自に「疑わしい」と判断して外国人に聞き取りを行うことは差別や偏見を助長し、外国人の保険利用を委縮させる恐れがある、としている。また、移住連はNHKの「クローズアップ現代+」(2018年7月23日)で放映された「日本の保険証が狙われる~外国人急増の陰で~」に対し事実に基づかず、恣意的な情報操作のもとに制作されたと批判している。

そもそも外国人に関するマスコミ報道は、固定観念に基づくものが少なくない。「外国人犯罪が多い」というのもその一つだろう。そうした固定観念があれば、「医療保険のただ乗り」は、外国人急増時代の「ありそうな話」として受け止めてしまうのではないか。

国保の扱いは、「共生社会」を目指す安倍政権にとって、極めてデリケートかつ重要なテーマだ。政府から見て外国人の「不適切」な国保利用は、おおむね法律に違反する事例ではないだろう。しかし、適法であっても外国人の利用が増えれば、国民感情を刺激する「好ましからざる話」として伝えられることもあるはずだ。外国人とのコミュニケーションを十分にとることで相互理解を深めたい。併せて政治の場でより深い議論を重ねて欲しい。

石原 進

 

 

石原 進(いしはら・すすむ)日本語教育情報プラットフォーム代表世話人

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の運営団体である日本語教育情報プラットフォーム代表世話人。元毎日新聞論説副委員長、現和歌山放送顧問、株式会社移民情報機構代表取締役。2016年12月より当団体を立ち上げ、2017年9月より言葉が結ぶ人と社会「にほんごぷらっと」を開設。

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12:00 AM 留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
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日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
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留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
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本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
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日本語教師が知っておきたい著作権... @ オンライン(ZOOM)
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