新年を迎えて 2024年は日本語教育の大変革の年 日本語教師は新たな自己改革を


新年を迎えて 2024年は日本語教育の大変革の年 日本語教師は新たな自己改革を

2024年の新しい年が幕を開けました。「にほんごぷらっと」を開設して8回目の正月です。本年もよろしくお願いします。

昨年を振り返れば、ロシアのウクライナ侵略に加えてパレスチナのハマスの攻撃からイスラエルの報復が続いています。ミャンマーの軍事クーデターは昨年秋から民主派勢力・少数民族の反転攻勢が展開されています。

海の向こうで罪のない多くの人が血を流しています。その一方で、国内では自民党の政治資金パーティーをめぐる裏金問題に捜査のメスが入りました。何ともうっとうしい問題を抱えて年を越しました。

日本語教育に関しては、昨年の通常国会で日本語教育機関認定法が成立しました。今年4月に施行されます。今後の政府の取り組みは文部科学省が中心となります。日本語教育は新たな時代を迎えます。

日本語教育機関認定法は、日本語学校を法的にきちんと位置づける画期的な法律です。日本語学校は、学校教育法にある「学校」ではありません。このため文科省は日本語学校を「日本語教育機関」と呼びます。学習塾や英会話学校と同様に、文科行政の分野においては、学校とは一線を画する存在との認識でした。

だとしたら、日本語教育機関は今後、どのような役割を担うことになるのでしょうか。ひと言でいえば、「日本語の総合教育機関」になるはずです。従来の外国人留学生を対象にした日本語教育だけでなく、外国人労働者や生活者としての外国人の日本語教育なども担うことになります。必要に応じて学校現場でも日本語教育に関与するかもしれません。「日本語学校」が新たな「日本語教育機関」の脱皮することになります。

留学生政策を支えるだけでなく、すべての外国人を対象にした日本語教育機関となります。言ってみれば、多文化共生社会の礎(いしずえ)をつくるという大役を担うことになるのです。それには新たなビジネ・チャンスが到来することでもあります。「留学生のための日本語教育」から「多様な分野の日本語教育」に取り組むことになります。2024年は日本語教育の大転換の年になるのです。

思い起こせば2016年春、私は当時の日本語学校の4つの業界団体の代表を個別に中川正春元文科相に引き合わせました。日本語教育推進議員連盟の立ち上げと「日本語教育推進基本法」の制定を想定し、業界側に事前に理解を得るのが目的でした。中川氏のヒアリングに対し、4団体の代表は議員連盟の発足に賛意を示し、中川氏はこれを受けて自民党の河村健夫氏(議連会長)や馳浩氏(同事務局長)らに働きかけ、超党派の日本語教育推進議員連盟(日本語議連)を立ち上げたのです。

日本語議連は2019年に議員立法で「日本語教育推進法」を成立させ、日本語教育の法的な基盤をつくったのはご案内の通りです。私たちは日本語議連の発足に合わせてインターネットサイト「にほんごぷらっと」を立ち上げました。サイトでは日本語議連の活動のほか、多文化共生社会に関する動きを紹介してきました。

日本語教育機関認定法は、日本語教育推進法に趣旨に沿った形で制定された法律です。日本語教育機関に特化して、その「在るべき姿」を法制化しました。日本語学校を日本語教育機関として国が認定し、その教師に国家資格を付与します。国がお墨付きを与えることで、日本語教育機関の教育水準を高める狙いがあります。人口減少に伴い急増する外国人の受け入れ態勢の強化に向けた重要な取り組みです。

日本語教育認定法は今年4月に施行されますが、日本語教師の国家資格化などについては経過措置を設けています。このため、すぐに国家資格を取得しないと教師を継続できないというわけではありません。しかし、経営者も含め従来の制度から大きく変わるわけですから、関係者には意識改革が必要です。今年はその第一歩を踏み出すことなります。それぞれに新たな時代に向けた自己改革が求められます。

2024年元旦

にほんごぷらっと編集長・石原 進

 

 

 

石原 進(いしはら・すすむ)日本語教育情報プラットフォーム代表世話人

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の運営団体である日本語教育情報プラットフォーム代表世話人。元毎日新聞論説副委員長、現和歌山放送顧問、株式会社移民情報機構代表取締役。2016年12月より当団体を立ち上げ、2017年9月より言葉が結ぶ人と社会「にほんごぷらっと」を開設。

この著者の最新の記事

関連記事

コメントは利用できません。

イベントカレンダー

7月
5
終日 日本語ジェンダー学会 第25回年次... @ 実践女子大学(渋谷キャンパス)
日本語ジェンダー学会 第25回年次... @ 実践女子大学(渋谷キャンパス)
7月 5 終日
第25回年次大会 研究発表募集要項 2025年7月5日(土)に実践女子大学(渋谷キャンパス)にて開催される、第25回年次大会での研究発表を募集します。以下の要領でお申込みください。  発表資格: 研究代表者=当日の発表者は、応募および発表時点で当学会の会員である必要があります。会員登録は、当学会事務局で随時受け付けておりますので、応募時までに会員登録をお済ませください。 会員登録はこちら新しいウィンドウで開きますからお願いします。 なお、研究代表者以外の連名者は、会員・非会員は問いませんが、採択された場合、後日の参加申込みは連名者も含み全員にしていただきます。 発表内容: 言語(特に日本語)・言語による作品・言説・発話・言語使用状況・言語使用環境等をジェンダーの観点から論じた内容を含む未発表のもの(発表内容は、大会テーマに関わるもの or 関わらないもの、どちらでもよい) → 大会テーマ「メディア・ことば・ジェンダー」 発表言語と時間: 日本語で30分(口頭発表20分+質疑応答10分)以内  申し込み期間: 2025年3月3日(月)–  5月7日(水)24:00 (JST) 申し込み方法: 当学会のウェブサイト上の「研究発表申込み書新しいウィンドウで開きます」をダウンロードして、研究者名、発表タイトル、発表概要(1000-1500文字)などを記入してアップロードする。 → 3月3日(月)以後に、こちら新しいウィンドウで開きますにアップロードしてください。 可否通知: 審査後5月16日(金)までに研究発表担当の実行委員からご本人に結果を通知します。場合によっては、一定の条件や修正への要求が提示される場合があります。 予稿集原稿: 採択された方は、6月6日(金)24:00までに予稿集に掲載する発表要旨を日本語で執筆してください。場合によっては、修正や加筆をお願いする場合があります。執筆要項は可否通知の際にお知らせします。 ★二重投稿や剽窃などの不適切な原稿に関しては厳しく対処致しますので、研究者としての良識をもってご執筆ください。 以上.
7月
12
終日 言語科学会 第26回年次国際大会(J... @ 愛媛大学 城北キャンパス
言語科学会 第26回年次国際大会(J... @ 愛媛大学 城北キャンパス
7月 12 – 7月 13 終日
言語科学会第 26 回年次国際大会(JSLS2025)開催・研究発表募集のご案内 言語科学会 (JSLS: The Japanese Society for Language Sciences) では以下の要領で、 第 26回年次国際大会 (JSLS2025) を開催いたします。 大会日程: 2025 年 7 月 12 日(土)~ 13 日(日) 開催場所: 愛媛大学 城北キャンパス(愛媛県松山市文京町 3) 大会ウェブサイト: http://www.jslsconference.jpn.org/jsls2025/ 基調講演: Jae DiBello Takeuchi 氏 (Indiana University Bloomington)
7月
20
10:00 AM 【!!追加募集!!】NPO法人日本... @ オンライン (オンライン上での集合研修 および 動画視聴による個人学習) ・「就労者の異文化適応」「教材研究」は対面(東京・大阪)で実施。 オンラインでの参加も選択可能。
【!!追加募集!!】NPO法人日本... @ オンライン (オンライン上での集合研修 および 動画視聴による個人学習) ・「就労者の異文化適応」「教材研究」は対面(東京・大阪)で実施。 オンラインでの参加も選択可能。
7月 20 2025 @ 10:00 AM – 2月 8 2026 @ 2:45 PM
【!!追加募集!!】NPO法人日本語教育研究所 主催文部科学省委託 令和7年度現職日本語教師研修プログラム普及事業 就労者に対する日本語教師【初任】研修 就労者に対する日本語教師養成 –日本語教育研究所の多様な研修実績及び人材を活かしたビジネス日本語教育/指導- ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ この研修は、これから新たに就労者に日本語を教えたいと考えている方を主な対象としています。スキルアップにぜひお役立てください。 再受講をご検討の方へ 本研修はこれまでに弊所の研修をご受講された方も、再度ご参加いただけます。 実際に現場に出て、もう一度確認したいことなども出てきているのではないでしょうか。 さらに実践的な指導力を高める良い機会となりますので、ぜひご検討ください。 ─────────────────── ■期間 2025年7月20日(日) ~ 2026年2月8日(日) *日程等の詳細は、募集要項のリンク先からご覧ください。 ■対象 日本語教育機関認定法に基づく「登録日本語教員」を対象としますが、本法の経過措置期間内(令和10年度まで)は、令和6年度までに下記を修了した方も対象とします。 1)日本語教師として下記のいずれかの要件を満たす方  ①大学/大学院で日本語教育に関する教育課程を修了し、大学/大学院を卒業/修了した方  ②大学/大学院で日本語教育に関する科目の単位を26単位以上修得し、大学/大学院を卒業/修了した方  ③公益財団法人日本国際教育支援協会「日本語教育能力検定試験」に合格した方  ④学士の学位を有し、日本語教師養成講座 420 単位時間以上を修了した方 2)原則として、就労者への日本語教育歴が0~3年未満の方 ■定員 100名 ■受講料 20,000円(税込) ※教材費込み ■申込方法 以下のリンクからお申し込みください。 https://forms.gle/JWtnJ6WzzCNQvQx88 ■申込締切 2025年6月30日(月)【募集期間延長しました!!】 ■募集要項 https://docs.google.com/document/d/1uHn1k6zdRIgcQ2-lK5Uyr1Qa5vlwzXCFvKEUw3UjJVU/edit?usp=sharing ■お問い合わせ NPO法人 日本語教育研究所(研修事務局) nikken.kenshu@gmail.com
8月
7
10:00 AM 令和7年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
令和7年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
8月 7 @ 10:00 AM – 8月 8 @ 4:30 PM
日本語学校教育研究大会では、各日本語教育機関における実践・事例の報告の機会として、発表の場を設けています。 意見・アイディア交換の場としてぜひご活用ください。 皆様からのご応募お待ちしております。

注目の記事

  1. 「『素顔の国際結婚』の今」を読んで 国籍法と国際家族のあり方を考える まず、家族へのひときわ強…
  2. 移民政策の先駆者・故坂中英徳さんを偲んで 第三話 坂中論文 在日コリアンに関心の…
  3. 主権国家である以上、国境管理をおろそかにすることはできない。その重責を担うのが出入国在留管理…

Facebook

ページ上部へ戻る
多言語 Translate