関係閣僚会議と日本語議連はどんな関係か
日本語教育はどのように進められるのか

関係閣僚会議と日本語議連はどんな関係か 日本語教育はどのように進められるのか

政府は7月24日に「外国人材受入・共生に関する関係閣僚会議」を発足させ、来年4月から外国人労働者を大幅に受け入れるための準備を本格的に進めている。この中で重要な事業とされているのは日本語教育だ。一方、超党派の日本語教育推進議員連盟は、先に日本語教育推進基本法の原案を作成し、秋の臨時国会に法案を提出する構えだ。その大きな2つの流れの中で今後の日本語教育推進の取り組はどうなるのか。

関係閣僚会議は行政府、日本語議連は立法府の取り組みだ。三権分立の建前からいえば、それぞれ独立した動きだ。ただし、日本語議連が日本語教育推進基本法(仮称)を成立させれば、政府が基本法に則って日本語教育の事業を進めることになる。政府が基本法の成立が遅れても、関係閣僚会議で事業方針を決定する見通しだ。

政府は来年4月から農業、介護、建設など5分野の新たな在留資格を設けるほか、業界団体の求めに応じてさらに新たな在留資格を十数種の業種にも拡大すると見られている。そのために法務省の外局として「入国在留管理庁」(仮称)を新設する方針だ。その取り組みも含めた「総合的対応策案」が先の関係閣僚会議に提出された。まだ検討の方向性を示す「中間まとめ」の段階で、来年度の予算編成が行われる12月までに最終報告書として整理される見通しだ。

それによると、外国人労働者の在留管理の充実のほか、「多文化共生社会の実現に向けた意見聴取・啓発活動」「生活者としての外国人支援」が明記された。外国人との円滑なコミュニケーションを図るために日本語教育の取り組みを大幅に拡充するとしている。

具体的には、地方自治体の日本語教育の環境整備や日本語教室の拡大、ICT教材の開発、日本語教師の人材育成や研修、資格の整備、さらには日本語教育機関の評価の仕組みの検討などを挙げている。また、海外での取り組みとして、就業目的の日本語教育の充実、就業に必要なテスト、現地の日本語教師の確保、給与助成など、日本への渡航前の外国人労働者の日本語教育を重視しているよう。

これらの内容は、日本語教育推進基本法の原案と重複する部分が少なくない。というのは基本法の原案の作成に携わった関係省庁の担当者の多くが「中間まとめ」に関与しているとみられるからだ。そもそも日本語教育の充実という目的が一つなら、同じような事業が提案されても不思議ではない。

政府は12月の来年度の予算編成をにらんで総合的対応策の最終案をまとめるとみられ、それに沿って事業や施策が予算案に盛り込まれるだろう。来年の4月の新たな在留資格の創設に合わせて日本語教育など「共生」に関する施策はどの程度の整備ができるか。担当者は相当厳しい事務作業を強いられるはずだ。

一方、基本法は日本語議連幹部と衆院法制局で原案をもとに条文化作業に入っている。法案は日本語議連の総会と各党の了承を得たうえで、自民党総裁選後に招集される臨時国会に提案される。臨時国会で成立すれば、条文に盛り込まれた日本語教育の基本理念や「国の責務」の規定に基づき責任官庁が決まるほか、事業実施のための関係省庁担当者による「日本語教育推進協議会」と有識者による「日本語教育推進専門家会議」が設置される。

基本法は今後の日本語教育推進のための枠組みを作るのが大きな目的であり、そうした体制整備には一定程度時間がかかりそうだ。しかし、外国人がこれから大きく増加することを考えた場合、不可欠の法律となり、政府が施策を中長期的に推進するうえで重要な法的根拠になるはずだ。

石原 進

石原 進(いしはら・すすむ)

石原 進(いしはら・すすむ)日本語教育情報プラットフォーム代表世話人

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の運営団体である日本語教育情報プラットフォーム代表世話人。元毎日新聞論説副委員長、現和歌山放送顧問、株式会社移民情報機構代表取締役。2016年12月より当団体を立ち上げ、2017年9月より言葉が結ぶ人と社会「にほんごぷらっと」を開設。

この著者の最新の記事

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


イベントカレンダー

3月
23
12:30 PM 「ことばの意味」をあらためて考え...
「ことばの意味」をあらためて考え...
3月 23 @ 12:30 PM – 4:00 PM
公開シンポジウム 「ことばの意味」をあらためて考える-真理条件的意味論を越えて– コリン・イテン著『認知語用論の意味論』の刊行を発端に「真理条件的意味論」を越えるとはどういうことか、あらためてことばの意味をどう考えるべきか、文の意味と真理の関係は何か、そもそも意味論と人間の認知能力との関係は何かを考える。これらの問題は、言語学、認知科学、言語哲学にまたがる重要なトピックである。天地春色に満ちたころ、東京都の名所、清澄庭園にて、この現代的トピックを4名の論者が、あらためて深く掘り下げて自由に語りあう饗宴に、皆様、ぜひご参加ください。 認知語用論(関連性理論)の意味論 武内 道子(神奈川大学名誉教授) 真理条件・表意・コミュニケーション 峯島 宏次(お茶の水女子大学特任准教授) Mind(心/脳)の内と外?生成文法・関連性理論・認知言語学 今井 邦彦(東京都立大学名誉教授) 意味と指示?内在主義的意味論の観点から 西山 佑司(慶應義塾大学名誉教授・明海大学名誉教授) 司会 黒川 尚彦(大阪工業大学専任講師) 会場:清澄庭園 大正記念館(〒135-0024 東京都江東区清澄3丁目3-9) 都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線「清澄白河」駅下車 A3口 徒歩5分 日時:2019年3月23日(土) (開場12時)12時30分~16時 参加:無料(事前申し込みwebページhituzi.co.jp/symposium_20190323/経由でお申し込み下さい。問い合わせはtoiawase@hituzi.co.jp、 03-5319-4916まで、当日参加可) なお、庭園は150円の入場料で見ることができます。大正記念館は庭園の外にあり、無料です。 主催:ひつじ書房
4月
7
1:30 PM OPIワークショップ日本開催30周年... @ TKP市ヶ谷カンファレンスセンター
OPIワークショップ日本開催30周年... @ TKP市ヶ谷カンファレンスセンター
4月 7 @ 1:30 PM – 5:00 PM
日本国内でACTFL-OPI試験官養成ワークショップが開催されて30年になります。 これまでに1000名ものOPIテスターを輩出してきました。 OPIワークショップ日本開催30周年を記念して、シンポジウムを開催します。 講演、パネルディスカッションを通して、社会と繋がり、社会を切り拓く、 日本語教育と日本語OPIを考え提案します。 ぜひご参加ください。 【協力】日本語OPI研究会・日本語プロフィシェンシー研究学会・九州OPI研究会・浜松OPI研究会・凡人社 【内容】 開催挨拶:新城 宏冶(株式会社アルク取締役) 講  演:鎌田 修(南山大学元教授) OPI活用事例事業の紹介:株式会社アルク 【パネルディスカッション】 司   会:奥野由紀子(首都大学東京 准教授) パネリスト:山下 渉(楽陽食品株式会社管理部 部長) 伊東 祐郎(東京外国語大学 教授) 嶋田 和子(アクラス日本語教育研究所 代表理事) 講   演:牧野成一(プリンストン大学 名誉教授) 【協力】 日本語OPI研究会・日本語プロフィシェンシー研究学会・九州OPI研究会・浜松OPI研究会・凡人社
5:10 PM OPIシンポジウム懇親会 @ TKP市ヶ谷カンファレンスセンター
OPIシンポジウム懇親会 @ TKP市ヶ谷カンファレンスセンター
4月 7 @ 5:10 PM – 7:00 PM
OPIワークショップ日本開催30周年記念シンポジウムの懇親会です。
5月
11
全日 プリンストン日本語教育フォーラム @ Princeton University
プリンストン日本語教育フォーラム @ Princeton University
5月 11 – 5月 12 全日
インクルーシブなことばの教育をめざして:現代社会における多様性について考える インクルーシブ教育は、多様で異なる人々が共に学ぶことを通して、共生社会の実現に貢献しようという考え方であると言われています。そして、このインクルーシブ教育は多様で異質な人たちが、どうすれば互いに了解・承認しあえるのかというより大きな問題をも含んでいます。本フォーラムでは、このような視点で、ことばの教育と多様性(学習スタイル、「障害」をはじめ、社会を構成するさまざまな人々(性別、人種、社会経済的格差、性的指向、世代格差、テクノロジーに関するリテラシー、母語話者・非母語話者の区別など)の関係について考えていきたいと思います。また、それだけでなく、そもそも多様性があるとはどういう状態なのかという問い、例えば、障害者と健常者、多数者と少数者などの境界線はどこで引けるのか、また、日常的に本質的にハイブリッドであるはずのことば(と別のことば)や文化(と別の文化)の境界線はいつどこでだれが引くことができるのかなどといった問いについても見つめ直していきたいと思います。 基調講演は、尾辻恵美先生(シドニー工科大学)、マルチェッラ・マリオッティ先生、(ヴェネチアカフォスカリ大学:ヨーロッパ日本語教師会会長)、牧野成一先生(プリンストン大学)を予定しています。
ページ上部へ戻る