「基本法」制定に向け骨子案の肉付け作業が焦点に――日本語議連の里見事務局次長が日振協で講演
- 2018/1/30
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- 日本語教育振興協会, 日本語教育推進基本法, 日本語教育推進議員連盟, 里見隆治
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「基本法」制定に向け骨子案の肉付け作業が焦点に――日本語議連の里見事務局次長が日振協で講演
日本語教育推進議員連盟(日本語議連)の事務局次長で公明党参議院議員の里見隆治氏が29日、日本語教育振興協会(日振協)の日本語教育機関トップセミナーで講演した。日本語議連の幹部が日本語学校関係者の前で講演するのは年明け後初めて。里見氏は日本語議連内に設置された法制化(立法)チームが取り組んでいる日本語教育推進基本法の骨子案の肉付け作業の進展状況を説明。基本法のイメージがより鮮明になってきた。
里見氏は厚生労働省出身。外国人雇用対策課など在籍し、外国人問題に精通した政策通の議員として知られる。昨年6月に全国各種学校日本語教育協会の研究セミナーで講演。その際は基本法の輪郭や骨子案の論点をわかりやすく報告した。今回は、非公開で行っている少人数の立法チームの議論の進展を踏まえ、骨子案の肉付け作業について詳細に説明した。
講演で里見氏は前段で、一昨年11月の日本語議連の発足から昨年11月までに計9回の総会を開くなど議論の流れを説明。里見氏によると、様々な関係者のヒアリングを行う一方、昨年夏から立法チームが作業に着手、たたき台となる骨子案を作成して議論を重ねている。立法チームも関係機関などからヒアリングや意見聴取を行っており、骨子案に具体的な事項を盛り込む肉付け作業が進んでいるという。
骨子案は、目的、定義、基本理念、国の責務等、関係者相互間の連携強化、財政上の措置等を盛り込んだ「総則」から始まり、「基本方針」「基本的施策」「日本語教育推進協議会」の四つの章で構成。基本法の大きな目的は、日本語教育に関する所管官庁を決め、日本語教育の推進事業に法的な根拠を与えることだが、「基本的施策」の中に盛り込む具体策の中身によって、法案の色合いが変わってくる。
この日の講演のポイントもそこにあり、里見氏は会議録から関係団体から立法チームに寄せられた意見や要望などを引用しながら「基本的施策」に盛り込まれる可能性のある施策や事業を説明した。日本語学校に関連する事項については「日本語教育の専門機関としての位置づけ」や日本語学校の「所管官庁の明確化」「質の向上のための第三者評価機関の設置」などを挙げた。また、日本語教師の育成や確保、日本語教材の開発などにも言及した。
ただし、日本語議連としての法制化に向けた議論はこれからだ。立法チームとしては骨子案を固めたあと議連のメンバーに提示し、様々な角度から意見を得たうえで必要があれば改めて関係者からヒアリングを行うなどして法案を詰める考えだ。里見氏は「(議連のメンバーも)まだ肉付けされたものをご覧になっていない状況であり、いま紹介したような意見を、まさに法制化できるものをしっかり肉付けしていく中で、今後法案を準備していきたい」と述べた。
基本法制定に向けての今後のスケジュールについて里見氏は、通常国会では来年度予算の成立後、内閣提出の法案審議が行われ、5月か6月に議員立法による法案の審議が行われると見通しを示した。しかし、議員立法による他の法案も数多く提出される可能性があり、どのように優先順位をつけるかは、各党の国会対策委員会の場で議論されるとし、里見氏は基本法の成立時期については明言しなかった。
議員立法による法案成立までの手続きについては、日本語議連が法案をまとめても各党、各会派の「了解」が必要になる。そこで合意形成ができれば、国会提出後にただちに成立の運びとなる。今回、その道筋に関して懸念材料となるのが民進党の分裂だ。民進党から分かれた希望、立憲民主、無所属の会の3会派が日本語教育基本法にどのように対応するのかは、現段階では不透明な状況だ。日本語議連としても今後の政治状況を慎重に見極めながら対応することなりそうだ。