2018年度日本語教育学会春季大会 「日本語教員養成の新しい役割と可能性」を議論

2018年度日本語教育学会春季大会 「日本語教員養成の新しい役割と可能性」を議論

「日本語教員養成の新しい役割と可能性」をテーマに2018年度日本語教育学会春季大会(日本語教育学会主催)が5月26、27の両日、東京都府中市の東京外国語大学で開かれた。在留外国人が急増する中、文化庁が日本語教師の養成に関する指針を18年ぶりに改訂して初めて開いた学会。多文化共生など新たな時代の要請を踏まえ、パネルセッションや口頭発表、ポスター発表などを通じ、様々な研究成果が披露され、活発な議論が展開された。

初日は開会式に先立ち、大会テーマと同じタイトルで「日本語指導が必要な子どもたちを取り巻く学習環境を手がかりとして」をサブタイトルにした一般公開のパネルディスカッションが開かれた。石井恵理子日本語教育学会会長もパネリストとして参加したが、4人のパネリストのうち2人が外国人の子どもの不就学問題などに取り組む研究者や実践者だった。石井会長はこの中で「言葉の教育は学習者のためだけではない。時代を担う子供の日本語教育は、個々人の力を伸ばし、相互にしっかり関わり合える社会を形成する重要な鍵である」と述べた。

また、パネルセッションは「日本語教育におけるこれからの評価研究を考える」「日本語学校の質的保証」「食べ物を通した日本語教育」など6つのテーマで行われ、この日の参加者は約900人にのぼった。

2日目は計約40件の口頭、ポスターによる研究発表が行われた。この中では「電車の日本語は外国人にとってわかりやすいか――電車アナウンス録音調査から」の口頭発表が目を引いた。車内やホームでのアナウンスが外国人にどのように伝わっているのかを外国人から聞き取りを行い、その結果を分析した。防災の分野での「やさしい日本語」が注目されているが、電鉄会社への貴重な問題提起と言えそうだ。

ポスター発表では、「あん魔マッサージ指圧師国家試験に見られる語彙の分析――用いられる語彙の傾向と学習優先度の検討」という、異色の研究テーマも見られた。多くは視覚障がい者が受験し、日本語教育の観点からの研究はほとんどなかったという。試験に向けた効果的な学習法を過去に出題された語彙調査から考えようというわけだ。最近では外国の視覚障がい者が日本のマッサージを学ぶために来日するケースもあり、障がい者福祉の分野のグローバル化も進んでいるという。

日本語教育に関しては、超党派の日本語教育推進議員連盟が日本語教育推進基本法(仮称)の制定を目指しており、近く法案の政策要綱が公表される。新たな法整備ができれば、日本語教育の分野の研究は、より重要度を増しそうだ。

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