令和の2019年を振り返って 「にほんごぷらっと」のトップニュースは日本語教育推進法の制定だ

令和の2019年を振り返って 「にほんごぷらっと」のトップニュースは日本語教育推進法の制定だ

2019年も残すところあとわずか。振り返ってみれば、今年は「共生社会」の実現に向けて大きく踏み出した1年だった。外国人労働者受け入れ拡大のための改正入管法が4月に施行された。通常国会終盤の6月には、超党派の日本語教育推進議員連盟が提案した日本語教育推進法が成立した。在留外国人受け入れの新たな窓口が設けられ、重要な政策課題である日本語教育を進めるための法的枠組みができたわけだ。しかし、課題は山積している。政府は、共生のための「総合的対応策」に取り組むべき課題をまとめた。その実現に向けて積極的に取り組むよう期待したい。

マスメディアは、師走になると恒例の「今年の10大ニュース」を発表する。「令和の時代」の幕開け。大きな感動を呼んだ日本で初のラグビーワールドカップ開催。台風や集中豪雨で大きな被害にも見舞われた。国際的には隣国・韓国との関係が悪化。英国のEU離脱の動き、難民や移民の増大……。内外の大きなニュースが今年もあった。

それに比べると、日本語教育推進法成立は小さなニュースかも知れない。「10大ニュース」の中に盛り込む大手メディアはないだろう。ただ、外国人労働者の受け入れ拡大などの動きの中で、マスメディアがそれなりに日本語教育の問題を取り上げたのも事実だ。これまでほとんど世間の注目を集めなかった日本語教育が、重要な政策課題であるとの認識が社会に広がりつつある。法案の作成、国会での成立に尽力した日本語教育推進議員連盟の果たした役割は大きい。

私たち「にほんごぷらっと」は、2016年に日本語教育推進議員連盟の発足とともにその活動に注目し、議連の議論を紹介するとともに、関連する動きや話題をサイトに掲載してきた。また、日本語教育推進法の意義や社会的な位置づけを報じてきた。サイト見てもらえばわかると思うが、私たちには日本語教育推進法の成立を、堂々の今年のトップニュースとして位置付けたい。

しかし、推進法は日本語教育を進めるためのプログラムや枠組みを作成するための法律である。日本語教育を推進するための施策や事業を進めるのはこれからだ。政府は推進法に基づき政府内に日本語教育推進会議を設置し、同会議は来年6月に日本語教育推進のための基本方針を策定する意向だ。実際の「推進策」は来年から動き出す。基本方針ができれば、それに則った日本語教育推進の施策や事業が始まることなる。「にほんごぷらっと」はそうした動きも細かくフォローしていきたい。

推進法の付則に検討事項として盛り込まれた日本語教育機関の位置づけなどの議論もこれからだ。留学生の増加とともに日本語学校の開校が相次いでいるが、悪質エージェントによる留学生のあっせんの防止など、解決すべき課題は少なくない。設置形態の在り方の検討なども必要だ。今後、日本語学校の果たすべき役割がより大きくなるのは間違いない。日本語学校の法的な位置づけ、日本語教師の公的な資格の付与なども重要な検討課題だ。外国人児童生徒の日本語教育や、海外に移住した邦人や日系人の日本語教育にも政府が力を入れなければならない。

政府は、入管法を改正して外国人労働者を受け入れるために「特定技能」の在留資格を設けたが、その資格を取得した外国人はまだ2000人に満たない。昨年の臨時国会で政府は特定技能により初年度は4万7000人、5年間で約35万人を受け入れる考えを示していた。準備作業が遅れているとはいえ、そもそも特定技能という制度が、外国人にとって魅力的なものなのかどうか。

2020年は東京オリンピック・パラリンピックの年だ。様々な国から多くのアスリートや外国人観光客がやって来る。国際交流の輪が飛躍的に広がる。推進法の「目的」には「共生社会」の実現や日本語の海外への普及が盛り込まれている。日本語教育の進展とともに、「共生社会」に向けた取り組みも大きく前進するに違にない。

石原 進

石原 進(いしはら・すすむ)日本語教育情報プラットフォーム代表世話人

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の運営団体である日本語教育情報プラットフォーム代表世話人。元毎日新聞論説副委員長、現和歌山放送顧問、株式会社移民情報機構代表取締役。2016年12月より当団体を立ち上げ、2017年9月より言葉が結ぶ人と社会「にほんごぷらっと」を開設。

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12
12:00 AM 留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
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日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
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29
12:00 AM 留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
6月 29 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
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教室内談話: 学習者間相互交流とL... @ オンライン(ZOOM)
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※この講座の内容は2022年実施分に準じます。 教室内談話: 学習者間相互交流とL2学習を考える 学習者同士が互いに話し合う活動は、近年の外国語(L2) 教室には不可欠です。また、学習者同士 が学習言語で対話する活動の意義やL2 習得における効果は、外国語教育において興味深いトピッ クの1 つです。本講義では第二言語習得理論を適宜参照しながら、外国語教室で行われる学習者同 士の対話の意義や先行研究で明らかになっている効能、より効果的な実践法や課題と展望について 考察を深めます。 【全4回】 日程: 第1回:2024年11月22日(金)19:00-20:30 第2回:2024年11月29日(金)19:00-20:30 第3回:2024年12月6日(金)19:00-20:30 第4回:2024年12月13日(金)19:00-20:30 内容: 第1回:「学習者同士のL2 対話」と第二言語習得理論 第2回:「学習者同士のL2 対話」と第二言語学習 第3回:「学習者同士のL2 対話」と教師 第4回:「学習者同士のL2 対話」とこれからのL2 指導 【受講料】9,000円(税込)※1講座のみお申込み:2,500 円(税込)

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