「骨太の方針」に日本語学校の振興を図るため「法制化の検討」の文言が公明党による政府への働きかけで実現

「骨太の方針」に日本語学校の振興を図るため「法制化の検討」の文言が公明党による政府への働きかけで実現

政府は先の臨時閣議で今年の「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)を決定した。菅内閣としての初の「骨太」で、新型コロナウイルスを踏まえた感染症対策が中心だが、原案になかった日本語教育機関に関する記述が最終文書に盛り込まれた。これは公明党の政府に対する働きかけで実現したもので、今後の政府の対応が注目される。

今年の「骨太の方針」は当面する重要課題である感染症対策のほか、デジタル庁や脱炭素に向けたエネルギー対策、少子化対策などで「菅カラー」を打ち出している。しかし、原案には日本語教育に関する施策はなく、その「日本語教育」の文言すらなかった。

公明党は与党として「骨太」への提言を独自にまとめており、この中では「日本語教育・外国人児童生徒等への教育の充実」などを掲げた。同党でこの問題を主導したのは、党文部科学部会長で元文科副大臣の浮島智子衆院議員だ。浮島氏は日本語教育推進議員連盟のメンバーとして活動するとともに、文科副大臣時代には「外国人の受入れ・共生のための教育推進検討チーム」の座長として報告書をとりまとめるなど強いリーダーシップを発揮した。日本語教育に極めて理解の深い政治家の一人だ。国会の場で与党の立場から政府に厳しい注文を付けている。

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今回、閣議決定された「骨太」にはどのような文言が盛り込まれたのか。第2章の「外国人材受け入れ・共生」の項目には「外国人材の受け入れ・共生のための総合的対応策の施策を着実に実施する」と書かれ、その【注】として「日本語教師の資格・能力を証明する新たな資格と日本語教育機関における教育水準の維持向上、日本語教育機関の振興と活用推進を図るための仕組みについての法制化の検討等日本語教育の強化、外国人の子供の就学支援等に取り組む」との文言が盛り込まれた。

これは「総合的対応策」の令和3年度改訂版の「施策番号28」からの引用だ。総合的対応策も関係閣僚会議で決定された政府の公式の文書だが、「骨太の方針」にはより重要度の高い政府の公式見解だ。ただ、盛り込まれた政策が必ずしも実行されるとは限らない。政府はその検証を十分に行なっていない。「法制化の検討等」との表現は、様々な解釈ができる役所用語である。「検討はしたものの、実現は困難」という結論にならないとも限らない。

政府に政策を実際に実現させるには、日本語教育機関(日本語学校)の側からの様々なアプローチが重要になる。政治的な対応をするには日本語学校の6団体の結束がカギとなる。

「骨太の方針」に日本語学校に関する「法制化の検討」の文言が載ったことは、日本語教育推進法の成立に続く、日本語学校にとって大きな成果だ。日本語学校の側の「振興と活用推進のための仕組み」についてのより具体的な議論が必要になる。

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12:00 AM 留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
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日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
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12:00 AM 留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
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本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
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凡人社日本語サロン研修会 『でき... @ 大阪会場TKP 大阪本町カンファレンスセンター
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令和6年度日本語学校教育研究大会 @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
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一般財団法人日本語教育振興協会では、日本語教育機関に勤務する教職員等のための「日本語学校教育研究大会」を実施しております。 今年度は2024年8月5日(月)・6日(火)に、5年ぶりの対面開催で行います。 大会では、各日本語教育機関における実践・事例の報告の機会として、発表の場を設けています。 意見・アイディア交換の場としてぜひご活用ください。 皆様からのご応募お待ちしております。 発表応募締切:2024年5月15日(水) 発表応募要項・申込方法: https://www.nisshinkyo.org/news/detail.php?id=3076&f=news ※プログラム内容・参加お申込み方法など、大会の詳細については、 随時 https://www.nisshinkyo.org にてご案内してまいりますので、ぜひご覧下さい。

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