外国人集住都市会議で「日本語教育」を議論

◎外国人集住都市会議で「日本語教育」を議論

日系人など在日外国人が多く住む25の自治体が参加して31日、愛知県豊橋市内のホテルで「外国人集住都市会議とよはし」が開かれた。自治体や国際機関、NPO関係者ら400人が出席。今年の会議のテーマは「日本語教育」で、様々な角度から日本語教育に関する議論が行われた。また、日本語教育推進議員連盟会長代行の中川正春衆院議員が会議を傍聴し、日本語教育推進議連が発足したことも紹介された。

外国人集住都市会議は2001年に浜松市長の呼びかけで発足し、静岡をはじめ三重、愛知、群馬などの23の会員都市とオブザーバーの2市が参加している。外国人と地元住民との共生社会の実現など共通の課題を話し合い、併せて国への要望活動を行っており、2012年7月から市町村窓口で始まった外国人の住民登録は、外国人集住都市会議が政府に働きかけて実現した。同会議は地元の声を自治体から政府の担当者に直接伝える場にもなっており、多文化共生の施策実現の原動力となっている。

この日は冒頭、今回の会議の座長を務める佐原光一豊橋市長が挨拶し、政府への予算要求で外国人児童生徒の日本語教育の充実を求める施策を実現させたことなど成果を示しながら「新しい視点、新しい取り組みを通じて多様な文化を力にして、一歩ずつ前に進めていこう」と呼びかけた。

続いて日本語教育学会の伊東祐郎会長が「これからの日本語教育」と題して基調講演を行った。外国人集住都市会議の加盟市長村の集計では日本語教育が必要な児童生徒は2016年に7957人で、「特別の教育課程」を受けている児童生徒は3774人といずれも前年より増加している。伊東氏はそうした現状を踏まえ、「学力、言語力の個人差への対応や教科指導と日本語教育の連携、教育の指導力向上のための研修機会の創出などが必要だ」と訴えた。

また、長野県飯田市長、浜松市長、静岡県菊川市長、愛知県豊田市長、同豊橋市長らと、政府側の文部科学省国際教育課、文化庁国語課、厚生労働省外国人雇用対策課、総務省国際室、内閣府定住外国人施策推進室の各担当者が「外国人住民の日本語能力の獲得について」と「外国人住民が活躍する社会について」の2つのセッションで意見交換を行った。この中で外国人雇用対策課長がハローワークに多言語コールセンターを設け、10カ国語による言語サービスを近く実施することを明らかし、また、総務省国際室長が2006年にまとめた「多文化共生プラン」の実施自治体の好事例集を作成中であることを報告した。いずれも多文化共生の施策を推進するための有効な事業であり、今後の動きが注目される。

一方、外国人集住都市会議が長年にわたり政府に要求している外国人庁の設置については、なお実現の見通しがたっていない。多くの省庁をまたがる行政組織の改変が必要になるだけに、政治の強力なリーダーシップがないと外国人庁の設置は困難だと思われる。鈴木市長は中川氏から伝え聞いた日本語教育推進議員連盟の活動を語りながら、改めて移民庁設置に期待感を示した。

最後に佐原市長らが「豊橋宣言」を壇上で読み上げたが、その中で「多文化共生に取り組んできた自治体として、地域の実情や取り組みを発信するとともに、その経験やノウハウを基に、外国人住民の多様性を都市の資産として、私たちの地域社会を魅力や活力のあるものとしていく必要がある」と、これまでより一歩踏み込んだ前向きなメッセージを発信している。

石原 進(いしはら・すすむ)日本語教育情報プラットフォーム代表世話人

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の運営団体である日本語教育情報プラットフォーム代表世話人。元毎日新聞論説副委員長、現和歌山放送顧問、株式会社移民情報機構代表取締役。2016年12月より当団体を立ち上げ、2017年9月より言葉が結ぶ人と社会「にほんごぷらっと」を開設。

この著者の最新の記事

関連記事

コメントは利用できません。

イベントカレンダー

6月
12
12:00 AM 留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
留学生対象の日本語教師初任者研修... @ オンライン(ZOOM)
6月 12 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
日振協による文部科学省委託の初任研修が今年も始まります。 告示校で10年程度専任で経験されている方対象です。 OJTで実際の運営に関わりながら研修運営を肌で学んでいただけます。 研修詳細は協会ホームページより、チラシと募集案内をダウンロードしてご確認ください。   「日振協 留学生対象の日本語教師初任者研修」は「オンライン映像講義」「(オンライン)集合研修」「自己研修(自律的学習)」の三位一体の編成により、①自律的・持続的な成長力 ②対話力 ③専門性という3つの資質・能力の育成を目指すもので、忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の教育機関に所属している受講生への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 2020年度から、この初任者研修と並行して、「育成研修」を併せて実施しています。「育成研修」は初任者研修のサポートを行いながら研修の企画や実施方法を学び、将来全国各地で初任者研修の実施担当者として活躍していただく人材を育成する研修です。具体的には以下のことを目指しています。 ①初任者教員の協働的かつ自律的な学びを支援し、21世紀に活躍できる日本語教師としての資質・能力及びICT活用能力の獲得へと導く ②研修委員に必要な経験と能力を身につける 研修は、フルオンライン(zoom使用)で実施いたします。学内で初任者の指導を任されている方、地方在住でなかなか研修機会に恵まれない方など全国各地からご参加いただきたく存じます。修了生は今後実施委員になっていただく可能性もございます。どうぞ奮ってご応募ください。 チラシ(PDF 裏表2頁/1枚)
6月
29
12:00 AM 留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
留学生に対する日本語教師初任研修 @ オンライン
6月 29 2024 @ 12:00 AM – 1月 31 2025 @ 12:00 AM
本研修のカリキュラムは文化審議会国語分科会の「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)」に基づいており、初任者が体系的・計画的に日本語指導を行うための実践的能力として (1)自律的・持続的な成長力 (2)対話力 (3)専門性 の3つの資質・能力の養成を狙いとした90単位時間のプログラムです。忙しい仕事の合間を縫って学べるよう、また地方の日本語教育機関の新任の先生方への負担を減らすため、e-Learningを利用した研修となっています。 研修形態はフルオンラインです。昨年度同様、今後日本語教師にますます求められるであろうICT活用能力(オンライン授業やハイブリッド授業の実践等)に重点を置いた研修を行います。 つきましては、ぜひ多数の日本語教師初任者の方にご参加いただきたく下記のとおりご案内いたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。 チラシ(PDF 表裏2頁/1枚)
10月
25
10:00 AM 令和6年度生活指導担当者(中堅)... @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
令和6年度生活指導担当者(中堅)... @ 国立オリンピック記念青少年総合センター
10月 25 @ 10:00 AM – 5:20 PM
令和6年度生活指導担当者(中堅)研修 当協会では、日本語教育機関における生活指導担当者の能力向上を図るため、標記研修を実施しております。 今年度におきましても下記により実施しますのでご案内申し上げます。 なお、令和7年2月頃に初任の生活指導担当者を対象にした研修を実施予定です。 皆様のご参加お待ちしております。 1 日時 令和6年10月25日(金)10:00~17:20 2 会場 国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区) 3 参加要件 日本語教育機関又は大学・専門学校等教育機関の現場において、 少なくとも3年程度実際に留学生の生活指導に携わっていること。 4 参加費 維持会員機関 8,800円(税込)/1人当たり その他の教育機関  17,600円(税込)/1人当たり 5 応募締切:令和6年9月27日(金) 6 詳細、申込方法 https://www.nisshinkyo.org/news/detail.php?id=3193&f=news 〔問い合わせ先〕一般財団法人日本語教育振興協会 事業部 小野寺陽子 TEL:03-6380-6557 FAX:03-6380-6587 E-mail: nisshinkyo2@gmail.com
11月
16
終日 2024年度 日本語教育学会_秋季大会 @ 姫路市市民会館(兵庫県)
2024年度 日本語教育学会_秋季大会 @ 姫路市市民会館(兵庫県)
11月 16 – 11月 17 終日
日本語教育学会 2024年度秋季大会 開催日 2024年11月16日(土)、17日(日) 会場 姫路市市民会館(兵庫県)

注目の記事

  1. 木原官房副長官の講演を聞いて~日本語教育は共生社会づくりの「一丁目一番地」 木原誠二官…
  2. 日豪の友好の歴史を見直そう——日豪議員連盟が「穣の一粒」と「藤田サルベージ」で勉強会  …
  3. 新年を迎えて 2024年は日本語教育の大変革の年 日本語教師は新たな自己改革を 2024年…

Facebook

ページ上部へ戻る
多言語 Translate