日本留学AWARDS2017年度報告書を刊行 座談会に〝アワーズ効果〟

日本留学AWARDS2017年度報告書を刊行 座談会に〝アワーズ効果〟

日本語学校の教職員が留学生に勧めたい大学、大学院、専門学校を選び、上位校を表彰する日本留学AWARDS(アワーズ)の2017年度の報告書が刊行された。アワーズの狙いは、進学先の「留学環境」をより向上させることにある。今回の報告書には大学、専門学校の受賞校関係者、そして高等教育機関に進学した留学生と留学生OBの2つの座談会を掲載した。座談会から留学生の受け入れ側と留学生側の当事者双方に〝アワーズ効果〟が出てきたようだ。

アワーズは、日本語教育振興協会の会員有志でつくる「アワーズチーム」が実務を担当。昨年度は9人が各日本語学校への投票用紙の作成から集計、表彰式、報告書の作成などに携わった。昨年で6回目を迎え徐々に投票に参加する学校が増え、計175校投票数は445票に。まだ十分な数とはいえないが、日本語学校の「世論」を形成しつつあり、大学や専門学校への影響力を持ち始めている。

昨年度の各部門の大賞受賞校は、東日本は私立大学文系が東洋大学、私立理工系は足利工業大学、大学院が早稲田大学大学院、国公立大学が横浜国立大学、専門学校が東京国際ビジネスカレッジ東京校。西日本は私立文系が四日市大学、私立理工系が福井工業大学、大学院が北陸先端科学大学院大学、国公立大学が名古屋大学、専門学校が辻調理師専門学校。早稲田大学大学院は5年連続で大賞を受賞した。5年連続大賞受賞校は「殿堂入り」し、翌年度から3年間、投票の対象校から外れる。

(アワーズの受賞校は次のサイトでhttp://www.ryugakuawards.org/untitled-c1036

今回刊行された報告書には、受賞校の一覧や受賞校に寄せられた推薦理由、そのランキングや分析、大賞・入賞校の声などのほか、3つの受賞校の担当者と日本語学校卒業生5人の座談会をそれぞれ特集している。

受賞校の座談会には、静岡大学長補佐の白井靖人氏、専門学校東京国際ビジネスカレッジ学校長の高橋有弥氏、福井工業大学教授の尾崎禎彦氏が参加。ヨシダ日本語学院の一条初枝校長の司会で、まずアワーズ受賞の学内での評価などを聞いたところ、「大変嬉しいにことですし、励みになる」(白石氏)「受賞をきっかけに日本語学校にも(担当者が)よく出向くようになった」(尾崎氏)「受賞によって教職員のモチベーションが高まったのはもちろん、学生にとってもこの学校でよかったというプライドを持つことにつながっているよう」(高橋氏)など、それぞれ「アワーズ効果」を口にした。

また、「日本語教師からの大学、専門学校などへの要望」については、各学校から幅広く声を集めているが、座談会の中でも司会から改めて質問した。入学時の保証人制度については「保証人には身元保証と学費保証の2つありますが、基本的には本国の保護者になると思う。本学では現在、国内在住の方に身元保証も学費保証も求めることはしていません。ただ、入学手続きの際には国内の連絡先を提出していただいています」(尾崎氏)「日本語学校入学時に選抜され、2年間勉強してから入ってきているので保証人は一切求めませんが、本国の保護者の連絡先は教えてもらうようにしています」(高橋氏)などの答えがあった。

留学生の就職事情については「理系、文系でかなり違うと思う。修士課程の英語コースも理系だから就職しやすいというところがある。一方、文系の学生はやや苦労するかもしれません。ただ、留学生だから就職できないということは聞いていません」(白井氏)「2020年のオリンピックはかなり影響が大きく、専門学校からすると有難いことではあるのですが、2019年で求人が減るのではと考えています。五輪後、どういう求人が出てくるのか、それに対してどういうキャリ教育が必要なのかを考えなければいけない」(高橋氏)などの見方を示した。

一方、日本語学校卒業生座談会は東放学園音響学科1年(ヒューマンアカデミー日本語学校卒)の金材泫さん(韓国)、多摩美術大芸術学科4年(同)の李煕道さん(同)、早稲田大学大学院遺伝子工学博士課程2年(九段日本語学校卒)のカロリナ・フィアヨスさん(スペイン)、富士通勤務(横浜国立大学国際経営学科、青山国際教育学院卒)のダオ・フェンさん(ベトナム)、早稲田大学大学院教育学修士課程2年(ミツミネキャリアアカデミー卒)の先鶴さん(中国)の5人がカイ日本語スクールの山本弘子代表の司会で意見を述べ合った。

日本留学の動機やきっかけについては、「アニメが好きで美術大学に進みたいと考えていたが、お父さんから『美大だったら日本の方がいい』と勧められた」(李さん)「とりあえず日本語がうまくなりたくて3年前に日本にきた」(カロリナさん)「中国で日本語教師をしていました。留学してちゃんと日本語と教育学を勉強したいと思った」(先さん)「ベトナムの大学で日本語を勉強し、N3レベルになっていました。もっと日本語を磨きたいと」(フェンさん)「人生には何か変化が必要だと感じていました。何をすればいいか……、そうだ外国に行ってみよう、ならば日本で暮らしてみようと思い立った」(金さん)などと述べた。

日本語学校卒業後の進学をどのように決めたのか。「先生が勧めてくれた。それで受験したら、縁があった」(フェンさん)「オープンキャンパスで知った情報が決め手になりました」(カロリナさん)「私もオープンキャンパスに行ってみました。その中で東放がいちばんいい感じがした」(金さん)「日本語学校の先生が『多摩美はいい学校だよ』と薦めてくれた。ものは試しと受けてみました。そしたらなぜか受かった」(李さん)「教育学の修士課程のある大学をピックアップして、順番に受検しようと思ったら早稲田が一番早くて受けたら合格した」(先さん)などいろいろな決め方があったようだが、日本語学校の先生のアドバイスやオープンキャンパスが決断を促すケースが多いようだった。

日本語学校時代の学生生活については、「日本語学校は日本語が共通語でした。でも、大学では授業で使うのはすべて英語になってしまった。博士課程は忙しくてアルバイトをやめたので、日本語の能力がどんどん落ちています」(カロリナさん)「日本語学校では進学のため必死で勉強していました。大学は居心地がいいというのか、アルバイトやサークルに精をだした」(フェンさん)「日本語学校は学生が外国人ばかりで本当の日本語に触れられない。専門学校に進学したらガラッと変わった。周りは日本人ばかりで、やっと日本語だけをつかうようになり、本当に日本にいる感じがした」(金さん)「進学後日本人と話すのは(日本語の勉強の)本番という感じがしました若者言葉もおしえてもらった」(李さん)など、受け止め方は様々だった。

さらに「日本語学校でも大学でも先生方にいろいろサポートしてもらった。感謝の気持ちでいっぱい」(フェンさん)「私は、日本に留学している今が、本当に人生で一番楽しい」(金さん)などの声もあった。

石原 進(いしはら・すすむ)

石原 進(いしはら・すすむ)日本語教育情報プラットフォーム代表世話人

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の運営団体である日本語教育情報プラットフォーム代表世話人。元毎日新聞論説副委員長、現和歌山放送顧問、株式会社移民情報機構代表取締役。2016年12月より当団体を立ち上げ、2017年9月より言葉が結ぶ人と社会「にほんごぷらっと」を開設。

この著者の最新の記事

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


イベントカレンダー

1月
18
4:00 PM 第9回 全養協日本語教師採用合同... @ ワイム貸会議室 高田馬場
第9回 全養協日本語教師採用合同... @ ワイム貸会議室 高田馬場
1月 18 @ 4:00 PM – 8:00 PM
日本語教師採用に前向き日本語教育機関と 日本語教師・日本語教育機関スタッフ志望者が直接面談できる場をご提供します。 金曜日のお仕事帰り、学校帰りにお立ち寄りください。会場は高田馬場駅から徒歩2分! 【入場無料・入退出自由・服装自由】 第9回全養協日本語教師採用合同説明会 (東京・高田馬場) 【2019年1月18日(金)開催】
1月
26
全日 日本を救う「やさしい日本語」 – ... @ 龍谷大学 深草キャンパス 紫光館
日本を救う「やさしい日本語」 – ... @ 龍谷大学 深草キャンパス 紫光館
1月 26 – 2月 23 全日
講座概要  「やさしい日本語」とは、普通の日本語情報に、「人為的な加工」を施して、多くの人にとって理解しやすい情報にする取り組みです。外国人、高齢者、身体障害者といった情報弱者に必要な情報を提供し、また彼らの伝えたい情報をくみとることができるようになります。  大規模災害の際の情報提供はもちろん、平時における自分たちコミュニケーションスタイルの見直し、外国籍住民との交流や、インバウンド観光客へのアプローチなど、様々な面での応用が、大規模なコストをかけることなく実現できる可能性を秘めています。  「やさしい日本語」は「苦行」ではなく、「易行」です。「やさしい日本語」はやさしい日本人の心の中にあります。  この講座で「やさしい日本語」を是非ご体験ください。 講座回数 5 回 日 程2019-01-26(土) ~ 2019-02-23(土) 15:00 ~ 16:30 (1) 1月26日(土) 「やさしい日本語」の歴史と多文化共生社会 担当:三原 龍志 (2) 2月2日(土) 「やさしい日本語」と防災 担当:近藤 正憲 (3) 2月9日(土) 「やさしい日本語」と行政サービス 担当:近藤 正憲 (4) 2月16日(土) 「やさしい日本語」と観光 担当:近藤 正憲 (5) 2月23日(土) 「やさしい日本語」と私 担当:近藤 正憲
2月
2
1:30 PM 地域で活躍する日本語ボランティア... @ 新宿文化センター
地域で活躍する日本語ボランティア... @ 新宿文化センター
2月 2 @ 1:30 PM – 5:25 PM
研修会1「日本語の教え方 7つの勘所」 時 間  :13:30~14:40 講 師  :金子史朗(友ランゲージグループ校 教頭) テーマ書籍:未定 概 要  :どうしたら学習者にわかりやすく教えられるだろうか? どうしたらもっと学習者を授業に引きこめるだろうか?…これらは、日本語を教える人なら誰でも思うことではないでしょうか。その答えにつながるアイデア、工夫、心構えなどについてお話しし、明日の授業に活かせるヒントを探っていきたいと思います。 研修会2「読む!考える!初中級読解」 時 間  :14:50~16:00 講 師  :清水正幸、下郡麻子、沖中晃子 テーマ書籍:『日本語学習者のための 読解厳選テーマ25+10〔初中級〕 概 要  :文法も語彙もまだまだ積み上がっていない初級のレベルで、「読解なんて無理!」と思っていませんか?本書は、学習者の好奇心をくすぐる読み物を通して、読むだけではない「考える授業、話す授業」へ広げることを目標に作りました。学生との協働の中で必ず指導する側にも新たな発見があるはずです。読んで設問に答えるだけの授業から一歩抜け出し、意見を持つ力、伝える力を育ててみませんか? セミナーでは、いくつか実践例をお見せしながら皆さまといっしょに考えたいと思います。 研修会3「学習者と地域をつなげるための日本語学習支援」 時 間  :16:15~17:25 講 師  :宿谷和子(にほんごの会企業組合) テーマ書籍:『いっぽ にほんご さんぽ 暮らしのにほんご教室 初級3』 概 要  :近年、様々な背景を持って来日した在留外国人の増加に伴い、日本語学習の機会を提供する地域日本語教室は日本で生活するうえで欠かすことのできない存在になっています。『いっぽ にほんご さんぽ 暮らしのにほんご教室』は地域の教室で日本語を学習する学習者とその支援者のために作られた教材です。週1~2回の限られた学習機会に無理なく必要な日本語を学習できるように考慮されています。この研修会では最近刊行された『初級3』の内容をご紹介しながら、これからの支援者に何が求められているのか一緒に考えてみたいと思います。
2月
3
全日 「具体的な状況設定」から出発する... @ 早稲田大学早稲田キャンパス
「具体的な状況設定」から出発する... @ 早稲田大学早稲田キャンパス
2月 3 全日
スケジュール: 09:30 受付開始 10:00 開会 10:10-12:00 パネルセッション1 「留学生の就職活動に必要な日本語スキルとは」 12:30-14:30 ポスター発表 14:40-16:30 パネルセッション2 「『打つ』言語行動におけるSNSの使⽤実態と教材化の可能性」 *「「具体的な状況設定」から出発する日本語ライティング教材の開発」プロジェクトとは? 朝起きて「由美ちゃんに会ったら,この間のお土産のお礼を言おう」と思うことはあっても,「由美ちゃんに会ったら,イ形容詞/過去形を使って話そう」などと思うことはありません。私たちは,常に具体的な状況において,具体的な実践を伴いながら,ことばを選び,使っています。しかし,日本語教育の教材や教室では,まだ「イ形容詞を導入する」「過去形が使えるようになる」といったように,語彙や文型から出発するアプローチが主流です。このプロジェクトでは,このような問題意識に基づき,具体的な状況から出発したら,日本語はどのように見えるか,日本語教育の教材や教室はどのように変わるかを考えます。 <募集するポスター発表の内容> 上のような問題意識やプロジェクトの趣旨に関連する言語研究,言語教育研究,コミュニケーション研究,教育実践に関する考察を広く募集します。また,このプロジェクト自体は「ライティング」「書く」「打つ」に焦点をあてたものですが,それ以外の技能(「聞く」「話す」「読む」など)に関するものも大歓迎です。(未発表のものに限ります。他研究会,学会との重複応募はご遠慮ください。)
ページ上部へ戻る