日本語教育推進議員連盟が日本語教育推進法案を承認、通常国会での早期成立目指す

日本語教育推進議員連盟が日本語教育推進法案を承認、通常国会での早期成立目指す

超党派の日本語教育推進議員連盟(河村建夫会長)は12月3日開いた第11回総会で、立法チームがまとめた「日本語教育の推進に関する法律案」(日本語教育推進法案)を承認した。法案では、日本語教育を「国の責務」と明確にしたほか、政府に「日本語教育基本方針」の策定を義務付け、日本語教師の資格や養成、研修の在り方も定めた。また、関係省庁の担当者による「日本語教育推進会議」、さらに同会議に意見具申するための有識者で構成する「日本語教育関係者会議」の設置も盛り込んだ。日本語議連は会期が10日までしかない臨時国会への提出を見送り、年明けの通常国会での成立をめざす。法案が成立すれば、外国人労働者の受入れ拡大などで外国人の急増が見込まれる中、日本語教育の環境整備が大きく進むことになる。

総会の冒頭、河村会長が挨拶に立ち、移住者としての日系ブラジル人社会を例にとり、世代を超えて日本との懸け橋としての日本語教育が重要だとの認識を示し、「日本本土と海外との問題を含めてこの法律は出来ているが、これからの日本の存立をかけた大事な日本語教育(の法律)になると考えている」と述べた。

日本語議連は2016年11月に第1回の総会を開いた。以後、様々な分野の日本語教育の団体や専門家からヒアリングを行い、今年5月の第10回総会で日本語教育推進基本法(仮称)の政策要綱(原案)を示し、了承された。その後、中川正春会長代行、馳浩事務局長ら立法チームのメンバーが内容を精査。衆院法制局の担当者らを交え原案を条文化し、名称から「基本」の文字を削除するなど修正を加えて正式な法案としてこの日の総会に提示した。

総会では、法案作成の実務に携わった衆院法制局第三部第一課の津田樹見宗課長が法案の骨格を説明した。それによると、法案は「総則」から「日本語教育推進会議等」まで4章、28条で構成。総則の「目的」では、日本語教育の施策を総合的、効果的に推進することによって、「多様な文化を尊重した活力ある共生社会の実現に資するとともに、諸外国との交流の促進並びに友好関係の維持及び発展に寄与する」としている。

「国の責務」については、国内が文部科学省、海外の日本語教育は外務省が所管すると想定。地方公共団体には「地域に応じた施策を策定、実施する」ことを責務とし、外国人を雇用する事業者に対しては日本語教育推進に努力するよう求めた。国、地方公共団体、事業主がそれぞれの責任体制を明確にすることで、日本語教育の施策の有機的に推進したいとしている。

注目されるのが、第二章の「日本語教育基本方針」。基本的な方向や推進する日本語教育の内容などを文部科学省と外務省が基本方針としてまとめ、閣議で決定するとしている。基本方針は5年ごとに見直しが行われるが、日本語教育の基本方針が政府の施策として公式に位置づけられる意味は大きい。

第三章の「基本的施策」では、内外の日本語教育の対象を具体的に示した。この中では、外国人の児童、生徒をはじめ、外国人留学生、外国人就労者、難民、地域の日本語教室、海外の外国人や在留邦人の子供らに対する日本語教育の支援などを挙げた。

さらに第三章では「日本語教育の水準の維持向上」の中で、「標準的な水準の明確化」、日本語教師の研修機会の確保の促進、資格に関する仕組みの整備などうたっている。日本語教師の資格については、柴山昌彦文科相が「スキルを証明するため新たな資格の整備を進めている」の述べており、来年度には具体的な資格の在り方が示される見通しだ。

日本語教育を推進するためには、政府内の関係省庁の相互調整が必要だが、法案では省庁担当者による「日本語教育推進会議を設置する」としている。また、同会議が意見を聴く組織として「日本語教育推進関係者会議」を設置する。推進会議と関係者会議が具体的な施策を事業化する組織となるとみられる。日本語教育に関する団体や有識者による関係者会議がどのようなメンバー構成のなるのか注目される。

法案は今後、各党の政策担当責任者らの同意を得たうえで国会に提出される。審議日程が詰まっているため今臨時国会への提出を見送り、日本語議連は年明けの通常国会で成立を目指すという。

総会では、日本語教育推進法案の扱いを河村会長に一任することを了承し、事実上、承認した。最後に中川会長代行が、法案成立に向けて全力を傾ける決意を述べるとともに、「多文化共生社会を日本語教育からしっかりと作り上げていきましょう」と呼びかけた。

◆「にほんごぷらっと」は、12月3日の日本語議連第11回総会を一両日中に動画で配信する予定。

資料 式次第  日本語教育の推進に関する法律案

にほんごぷらっと編集部

石原 進(いしはら・すすむ)日本語教育情報プラットフォーム代表世話人

投稿者プロフィール

「にほんごぷらっと」の運営団体である日本語教育情報プラットフォーム代表世話人。元毎日新聞論説副委員長、現和歌山放送顧問、株式会社移民情報機構代表取締役。2016年12月より当団体を立ち上げ、2017年9月より言葉が結ぶ人と社会「にほんごぷらっと」を開設。

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一般財団法人日本語教育振興協会は標記研修を開催いたします。 昨年度に引き続き、より質の高い研修成果を求めて、研修の核となる2日間の集合研修を東京会場、大阪会場、福岡会場で全て対面にて実施することにいたしました。特に、東京会場は国立オリンピック記念青少年総合センターに宿泊して研修を行うので、研修に参加した仲間や講師との絆がより一層深まることを期待しております。もちろん、どちらの会場での研修も日本全国からご参加いただけます。 加えて、オンデマンドによる事前学習を多く取り入れるなど、集合研修での成果をより高めるための工夫がされております。さらに、各参加者が自校の教育の質向上のための取り組みを発表する機会を作り、より質の高いフィードバックが得られるように集合研修後のフォローアップも強化するなど、より密度の濃い研修プログラムとなっております。 受講希望者におかれましては、7月28日(月)までに,所定の応募方法にて,ご応募くださるようお 願いいたします。 また、当協会の主任教員研修は告示校を対象としているため、たとえ常勤3年以上の経歴を有していても認定校・告示校の教員(認定日本語教育機関の審査申請済みの教育機関(新規開校含む)に所属する主任教員を含む)でない限り研修の対象とはなりません。 《令和7年度 主任教員研修の特徴》 ︎「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」の成立により、ますます注目が集まる「日本語教育の参照枠」や「日本語教師の人材育成」について理解を深める事ができる ︎ 現場の“今”を意識した研修プログラムにより、過去の研修受講者が再度受講しても満足できる研修である ︎ グループワークでは経験別や所属学校の属性別のグループを構成することにより、多様な受講者の満足度を保証する 《令和7年度 主任教員研修のねらい》 ◆「日本語教育の参照枠」に基づく学習成果の評価と手法を理解し、実践に活かす力を養う ◆ 人材育成の目的や考え方を知り、自校が求める教員像に近づけるための育成方法を考え実践する ◆ 今の悩みを共有できる仲間や、相談できる先輩とのネットワークを獲得する 《研修について》 ◆研修期間  2025年8月29日(金)~2026年1月8日(木)まで       ※7月29日~8月25日まで事前課題への取り組みがあります       ※研修の詳細な日程については当協会のホームページよりご確認ください ◆開催場所 オンライン(Zoom)+下記いずれかの会場       【東京会場】国立オリンピック記念青少年総合センター       【大阪会場】関西研修センター(KKC)       【福岡会場】リファレンス駅東ビル貸会議室 ◆定員 108名(会場定員:東京会場54名/大阪会場36名/福岡会場18名) ◆参加資格 以下の(1)〜(3)のいずれかの条件を満たす方  (1) 認定校・告示校の主任教員  (2) 認定校・告示校で 3 年以上の常勤教員経験を有する主任教員予定者  (3) 認定申請済機関の主任教員 ◆参加要件 ・研修の全日程に参加できる方 ※参加決定後の会場変更は不可 ・オンライン集合研修において、静かで研修に集中できる環境から参加できる方 ・インターネット環境が整っており、PC で研修に参加できる方  ※スマホやタブレットからの参加は不可 ・自校にて実際に課題改善を行い、その取り組みを発表し、研修レポートとして提出できる方 ◆受講料 30,000円(消費税込)      ※東京会場参加者については、別途宿泊費及び食費等(20,000 円程度)が発生します。       詳細な費用については、参加決定者に対して別途お知らせいたします。      ※大阪・福岡会場参加者については、交流会参加費が発生します。       詳細な費用については、参加決定者に別途お知らせいたします。 ◆詳細・申込方法 https://www.nisshinkyo.org/news/detail.php?id=3370&f=news          ★上記サイトに掲載されている開催案内をよくお読みいただきますようお願いいたします ◆応募締切 2025年7月28日(月) 〔問い合わせ先〕 一般財団法人日本語教育振興協会 主任教員研修担当 Eメール:shuninken@gmail.com TEL:03-6380-6557

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